米国の金上場投資信託(ETF)が、運用資産額でビットコインETFを再び上回った。金価格が史上最高値の1オンス3014ドルに到達し、安全資産としての需要が急増したことが背景にある。一方、ビットコインは過去最高値の10万9000ドルから下落し、現在は約8万4000ドルで推移している。
VettaFiのデータによると、金ETFの総資産額は約1500億ドルに達し、昨年SEC承認を受けたビットコインETFの930億ドルを大きく上回る状況となった。2023年末にはビットコインETFが一時的に金ETFを凌駕したが、トランプ新政権の政策に対する市場の懸念が資金の流れを変えた。
ブルームバーグのETFアナリスト、エリック・バルチュナス氏は「金の優勢は一時的であり、長期的にはビットコインが市場をリードする可能性がある」と指摘する。今後の市場動向が、リスク資産と安全資産の力関係を左右することになるだろう。
金ETFの資産額が急伸 市場は安全資産を選好

金ETFが再びビットコインETFを上回った背景には、安全資産への資金シフトがある。金価格は1オンスあたり3014ドルという史上最高値を記録し、投資家の需要が拡大した。VettaFiのデータによれば、米国の金ETFの運用資産額は約1500億ドルに達し、一方でビットコインETFの総額は930億ドルにとどまっている。
この動きの要因の一つとして、トランプ政権の政策に対する市場の警戒感が挙げられる。特に貿易摩擦の激化が懸念され、投資家がより安定した資産に資金を移している。金は歴史的にインフレや市場の不確実性に対するヘッジとして機能してきた。特に、金融市場が混乱すると金の需要が高まる傾向がある。
ビットコインは「デジタルゴールド」とも称されるが、直近の市場では金とは異なる値動きを示している。過去一年間、ビットコインはハイテク株と同様のボラティリティを持ち、リスク資産としての性格を強めている。安全資産としての評価は市場の状況に左右されるため、金ETFの資金流入が続くかどうかは今後の市場動向次第といえる。
ビットコインETFの失速と価格下落 背景に市場の変化
2023年末には、ビットコインETFが一時的に金ETFの運用資産額を超える局面があった。この急成長の要因として、米国証券取引委員会(SEC)の承認と、それに伴う機関投資家の参入が挙げられる。また、トランプ氏の当選が仮想通貨に追い風となり、一時は強気相場を形成した。
しかし、2024年に入りビットコインは最高値の10万9000ドルから下落し、現在は約8万4000ドルで取引されている。米国の関税政策や金融市場の変動が影響し、仮想通貨市場からの資金流出が加速した。etf.comのケント・スーン氏も「ビットコインはリスク資産としての側面が強まり、投資家の選好が変化した」と指摘している。
それでも、ビットコインETFの誕生からの成長速度は金ETFを上回っており、市場の期待は依然として高い。今後の価格動向は、経済政策や市場環境の変化に左右される可能性がある。特に、金融政策の転換があれば、ビットコイン市場に再び資金が流入する展開も考えられる。
金とビットコイン それぞれの立ち位置と今後の展望
金とビットコインは、どちらも価値の保存手段と見なされるが、その市場環境は異なる。金は歴史的に経済危機時に強さを発揮する資産であり、現在の高騰もその特性を示している。特にインフレが続く局面では、金の実物資産としての価値が再評価されることが多い。
一方、ビットコインは短期間で大きな値動きを見せ、機関投資家の注目を集めながらもボラティリティの高さが課題とされている。ブルームバーグのETFアナリスト、エリック・バルチュナス氏は「金は安定資産であり、スパイス的な投資対象ではない。一方で、ビットコインは投資家にとって刺激的な資産である」と評している。
短期的には金ETFが優勢であるものの、ビットコインETFの市場成長は続いている。特に、経済状況の変化や政策の影響次第で、資金の流れが再びビットコインに向かう可能性もある。今後も投資家の判断は、市場のリスク許容度や経済政策の動向によって左右されるだろう。
Source: Decrypt