NVIDIAとMicrosoftは、AIをゲームグラフィックスの根幹に組み込む新技術「RTXニューラルシェーダー」をDirectX 12に統合する計画を発表した。これにより、開発者はRTX GPUのTensorコアを活用し、AIによるレンダリング最適化が可能となる。
新技術は2025年4月に提供予定のDirectX 12 Agility SDKで導入され、VRAM削減やシェーダー処理の高速化、パストレーシングの最適化を実現する見込みだ。特に「RTXニューラルテクスチャ圧縮」はVRAMの消費を7分の1に抑え、低容量GPUでも高品質なグラフィックを維持できるとされる。
AIによるフレーム生成やレンダリング技術の向上は、ゲーム体験の飛躍的な進化をもたらす可能性がある。一方、NVIDIA専用の技術となるため、AMDやIntelがどのように対抗するかも今後の焦点となる。
NVIDIAとMicrosoftが推進するAIゲーム技術の核心

NVIDIAとMicrosoftが提携し、ゲームのグラフィックス技術にAIを本格的に導入することを決定した。2025年4月に提供予定のDirectX 12 Agility SDKでは、RTX GPUのTensorコアを活用する「RTXニューラルシェーダー」が実装される。これにより、AIを活用したシェーディング技術が向上し、従来のレンダリング手法では実現できなかった映像美と処理の効率化が可能になる。
特に「RTXニューラルテクスチャ圧縮」は、VRAMの使用量を最大7分の1に削減する画期的な技術だ。従来のテクスチャ圧縮技術では画質の劣化が避けられなかったが、AIを用いることで品質を維持しつつデータサイズを劇的に小さくすることができる。これにより、VRAMの少ないエントリークラスのGPUでも高解像度のゲームを快適に動作させることが期待される。
さらに「RTXニューラルマテリアル」は、シェーダー処理を最大5倍に高速化することで、リアルタイムレンダリングの負荷を軽減する。この技術の導入により、ゲーム内の光の反射や質感表現が向上し、より没入感のある映像体験が可能になる。NVIDIAはこうした技術を「AIによるゲーム革命」と位置づけ、グラフィックスの新時代を切り開く意向を示している。
AI主導のフレーム生成技術がもたらす新たな可能性
NVIDIAが開発を進めるAIベースのフレーム生成技術は、単なるパフォーマンス向上にとどまらず、ゲームの映像表現そのものを変革する可能性を秘めている。DLSS 4の「Multi Frame Generation(MFG)」は、1枚のリアルレンダリングフレームからAIを用いて最大3枚の追加フレームを生成する技術であり、これによりフレームレートが飛躍的に向上する。
従来のレンダリング手法では、高解像度で高フレームレートを実現するには、膨大な計算処理が必要だった。しかし、MFGの導入により、より少ない計算負荷で滑らかな映像が得られる。これにより、RTX 5070のようなミドルクラスのGPUでも、RTX 4090に匹敵するフレームレートを実現できるという主張がなされた。
ただし、この技術は純粋なパフォーマンス向上とは異なる側面も持つ。フレーム生成は本来のレンダリングではなく、AIによる推測によって補完されるため、ゲーマーの間では「本当にリアルな映像なのか」という疑問も生じている。今後、DLSS 4の技術がどのように受け入れられるかは、ゲーム開発者やプレイヤーの評価次第となるだろう。
AI技術の拡大がもたらすゲーム業界への影響
AI技術の進化は、単なるグラフィックスの向上にとどまらず、ゲーム業界全体に大きな影響を及ぼす可能性がある。特にNVIDIAの「RTXニューラルシェーダー」は、DirectX 12の「協調ベクトル(Cooperative Vectors)」との連携により、シェーダーコード内でリアルタイムAI処理を実現する。この技術は、将来的にゲーム開発のあり方そのものを変える要因となるだろう。
現状ではNVIDIAの技術が優勢だが、AMDやIntelがどのように対抗するかも注目される。DirectX 12のアップデートが進む中で、AMDのRDNAアーキテクチャやIntelのXMX(Xe Matrix Extensions)がAIレンダリングに対応するかどうかは未確定である。NVIDIAの技術が独占的に進化する場合、特定のGPUブランドへの依存度が高まり、市場の競争構造に影響を与える可能性もある。
また、AI技術が進化することで、開発者の役割も変化するかもしれない。従来、シェーダープログラミングは高度なスキルを要する分野だったが、AIが自動補完することで、より効率的な開発が可能になると考えられる。技術の発展は歓迎すべきことだが、開発者がAI技術をどのように活用するかが、今後のゲームのクオリティを左右する重要な要素となるだろう。
Source:Windows Central