企業家であり長寿科学の熱心な支持者であるBryan Johnsonは、アメリカの食事における80%を占める20%の食品に対し、「フードーム解析」を行う計画を発表した。この解析は、食品に含まれる毒素を科学的に検証し、消費者がリスクを回避できるように公共データベースを作成することを目的としている。

Johnsonは、食品の品質と健康リスクに関する問題を解決するため、極端な手段を取ることもいとわず、現代の食品業界の改善を目指す。彼の提案は、SXSWフェスティバルで注目を集め、AIの利用による人類の進化を重視する哲学も議論を呼んでいる。

Bryan Johnsonの「フードーム解析」とは何か—食品の透明性を追求する新たな試み

Bryan Johnsonは、遺伝子解析の手法を応用し、アメリカの食環境を可視化する「フードーム解析」に着手する。彼は、アメリカ人の食生活に大きな影響を与える主要な食品を分析し、その安全性や含有成分を明らかにすることを目的としている。特に重金属やマイクロプラスチックといった有害物質の影響を調査し、それらが健康に及ぼす影響を科学的に検証する構えだ。

このプロジェクトでは、食品の成分を詳細に調べ、結果を公開データベースとして一般に提供することが計画されている。消費者は特定の食品がどのような毒素を含む可能性があるのかを把握し、より安全な選択をする手助けを受けることができる。企業側にも影響が及ぶことは必至であり、食品メーカーが品質管理の厳格化を迫られる可能性が高い。

食品業界では「オーガニック」や「ナチュラル」といったラベルが広く用いられているが、その実態は必ずしも消費者の期待通りではない。加工の過程で化学物質が混入するケースも少なくなく、消費者は真に「クリーンな食事」を求めながらも、その判断が困難な状況にある。

フードーム解析の実現によって、食品の安全性に対する新たな基準が確立される可能性があり、食品業界の在り方そのものを変える契機となるかもしれない。

極端な健康法を実践するBryan Johnson—長寿を追求する男の哲学

Bryan Johnsonは、単なる投資家や起業家ではなく、科学的アプローチによって自らの寿命を延ばそうとする人物である。彼は過去に17歳の息子の血液を自身の体に輸血するという実験を行い、夜間の勃起を増やすためのショック療法を受けるなど、常識の範疇を超えた健康法を実践してきた。これらの行動は医学的な裏付けを伴わない場合もあり、批判を招いている。

彼が提唱する「ブループリントプロトコル」は、最適な健康状態を維持するための独自のルーチンで構成されている。良質な睡眠、定期的な運動、バランスの取れた食事といった基本的な要素を含みながらも、その方法論は過激であり、一般的な健康管理とは一線を画している。

彼はまた、自身の食生活に強いこだわりを持ち、オリーブオイルブランド「スネークオイル」を販売するなど、食事の重要性を強調する活動を展開している。

しかし、医学専門家の間では、寿命の長さは遺伝的要因による影響が大きく、極端な健康法が必ずしも長寿に直結するわけではないとの見解が一般的である。

長寿研究者のAndrew Steele博士も、適切な食事と運動は健康維持に貢献するものの、Johnsonの手法が科学的に有効であるとは証明されていないと指摘している。それにもかかわらず、Johnsonは自身の理論を推し進め、食品の安全性にまで議論を広げようとしている。

AIがもたらす「死の克服」—Bryan Johnsonの未来構想

Bryan Johnsonは、人工知能(AI)の進化が人類の死を克服する可能性を秘めていると考えている。SXSWの講演では、「我々はスーパーインテリジェンスを生み出している。これは世界で最も重要な出来事だ」と述べ、AIを活用して老化の問題を解決することの必要性を訴えた。

彼の主張によれば、AIは数百万の「人間レベルの天才」を生み出し、人類の発展を加速させる可能性がある。これにより、医療の進歩が飛躍的に加速し、老化を根本から制御できる未来が訪れるかもしれない。Johnsonは、AIを人間の生存戦略に組み込むべきだと主張し、「金銭的な利益ではなく、死なないことを目的にするべきだ」と語った。

しかし、この考え方には懐疑的な意見も多い。人間の寿命には自然な限界があり、AIがそれを無制限に延ばすことが本当に可能なのか、倫理的な問題を含めて議論が分かれる。長寿の追求が人間の生き方や社会構造にどのような影響を及ぼすのかも未知数であり、Johnsonのビジョンが現実になるには多くの課題が残されている。

彼の考えが未来の常識となるのか、それとも幻想に終わるのか、その行方は今後の技術進化に委ねられている。

Source:TechCrunch