AMDの最新GPU「RX 9070 XT」の需要が想定を大幅に上回り、市場で瞬く間に完売した。AMDのRadeon副社長であるデビッド・マカフィー氏は、同GPUの販売動向を「前例のないもの」と評し、RDNA 4のローンチがAMDのグラフィックス事業における重要な転換点になったと強調した。
3月6日に599ドルで発売されたRX 9070 XTは、1週間も経たないうちに流通市場から姿を消し、正規販売店では希望小売価格を大幅に超える価格で取引される事態となった。この背景には、AMDの供給体制の複雑さが影響しているとされ、ボードパートナー経由の生産プロセスが供給不足を引き起こしている。
一方で、AMDは価格の安定化に向けた供給強化を進めており、今後の市場動向に注目が集まる。競争が激化するGPU市場で、AMDは持続的な成長を実現できるのか。その行方が問われている。
RX 9070 XTの需要急増と供給の課題

AMDの新世代GPU「RX 9070 XT」が市場で瞬く間に完売し、供給が追いつかない状況が続いている。3月6日の発売時点で599ドルに設定されていた価格は、販売開始からわずか数日で市場価格が上昇し、一部の販売店ではMSRPを22%超える価格で取引されている。
これは、AMDのボードパートナーを経由した販売形態が影響しており、需要の高まりに対し迅速な供給が難しい構造的な問題が背景にある。AMDの副社長デビッド・マカフィー氏は、GPU供給の複雑さについて言及した。
AMDは自社のCPUを直接市場に供給できるが、GPUの場合、AIB(アドインボード)パートナーが介在し、それぞれのメーカーが独自モデルを展開するため、供給の最適化が困難になる。特に、RDNA 4世代では当初の予測を大幅に超える需要が発生し、供給網の調整が後手に回ったと考えられる。
今後、AMDはボードパートナーへの供給補充を優先課題とし、RX 9070 XTの市場価格を安定させる方針を示している。しかし、過去のGPU市場の動向を踏まえると、需給バランスが回復するまでには時間を要する可能性が高い。現時点では、消費者が希望小売価格で購入できる機会は限定的であり、今後の供給改善の進捗が注視される。
RDNA 4の市場影響とAMDの戦略
AMDはRDNA 4アーキテクチャの投入により、ミドルレンジGPU市場の支配力を強化しようとしている。RX 9070 XTとRX 9070の成功は、その戦略の正しさを示しており、AMDはこの勢いを維持するために今後も供給を増強する構えだ。
実際、マカフィー氏は「RDNA 4のローンチは我々のグラフィックス事業にとって重要なマイルストーンである」と述べており、競争激化する市場でのシェア拡大に自信を見せている。一方で、ハイエンドGPU市場ではNVIDIAが依然として圧倒的なシェアを持っており、AMDはまずミドルレンジ市場の拡充を優先すると考えられる。
近年、700ドル未満の価格帯のGPUが消費者に最も支持されていることを踏まえ、AMDはこのセグメントでの競争力を高めることに注力している。RDNA 4世代では、高性能とコストパフォーマンスの両立を図る戦略が功を奏し、消費者の期待に応える形となった。
しかし、GPU市場全体の動向を見れば、供給が需要に追いつかない状況はAMDだけの問題ではない。NVIDIAのRTX 4090が発売以来、MSRPを下回ることなく価格が上昇し続けていることからもわかるように、高性能GPUの市場では品薄状態が常態化している。
AMDがこの流れを変え、消費者に安定した価格で最新GPUを提供できるかどうかが、今後の成長を左右する重要な要素となる。
Source:Tom’s Hardware