GoogleやOpenAIの元従業員らが設立したスタートアップ「Town」が1800万ドルの資金調達を実施し、新たな税制最適化プラットフォームの提供を開始する。

大企業が税務部門を駆使し優遇措置を活用する一方で、中小企業は税務処理の負担が大きく、適切な控除を受ける機会を逃している。米国下院中小企業委員会のデータによれば、中小企業のコンプライアンスコストは従業員1人当たりで30%も高く、何十億ドルもの税制優遇を享受できていないという。

「Town」は、専属の税務アドバイザーと自動化ツールを提供することでこの課題を解決し、中小企業の競争力を向上させる狙いだ。

市場環境が厳しい中でも、中小企業の経営者は成長に自信を持っており、PYMNTSの調査では2024年に収益減少を報告する企業の割合が低下し、存続懸念を抱える企業の割合も縮小した。ただし、企業規模による影響は顕著で、小規模事業ほど経営の不安が高いことが明らかになっている。

「Town」の税制最適化プラットフォームが目指すもの

GoogleやOpenAIの元従業員が設立した「Town」は、中小企業向けの税制最適化プラットフォームを立ち上げた。このプラットフォームの目的は、大企業が享受している税制上のメリットを中小企業にも提供し、財務負担を軽減することにある。事実、大企業は税務専門部門を活用し、あらゆる法の抜け道を駆使することで税負担を抑えている。

一方で、中小企業は適切なサポートを受けることが難しく、コンプライアンスコストが従業員1人当たり30%も高いという現実がある。

「Town」の提供するプラットフォームでは、専属の税務アドバイザーを配置し、税務処理を自動化するツールを導入することで、企業ごとに最適な控除を見つける仕組みを整える。この仕組みは、米国下院中小企業委員会のデータに基づいたものであり、現在見逃されている何十億ドル規模の税制優遇を取り戻すことを目指している。

中小企業は限られたリソースで税務処理を行う必要があり、専門家の不足も大きな課題となっている。

この新たなプラットフォームが機能すれば、中小企業の財務基盤は強化され、市場での競争力が高まる可能性がある。財務負担の軽減は、事業拡大や人材確保の余地を生み出し、企業の成長につながる。しかし、税制の抜本的な変革には規制当局の動向も影響を与えるため、「Town」のサービスがどこまで中小企業の支えとなるかは今後の展開次第といえる。

2024年の中小企業の経営動向とその背景

PYMNTSの調査によると、2024年に中小企業の楽観的な見方が強まり、収益減少を報告する企業の割合が低下したことが明らかになった。2023年10月時点では17%の企業が収益減少を報告していたが、11月には15%へと減少。さらに、2024年1月には存続を懸念する企業の割合が7.3%だったが、年間を通じて5%にまで低下した。この傾向は、企業の財務状況が改善されたことを示唆している。

ただし、企業規模による違いは顕著であり、年間収益が100万ドルを超える企業では存続に不安を感じる割合が1.8%にとどまる一方、年間収益が15万ドル未満の企業では約10%が事業継続に不安を抱いている。また、従業員5人未満の企業では11.3%が存続に不安を感じており、小規模企業ほど厳しい状況にあることが浮き彫りになった。

背景として、中小企業の多くは資金調達や経営の安定化に苦慮しており、特に金融機関からの融資条件が厳しくなっていることが影響している。さらに、米国の政治状況も経済環境に影響を与えており、2024年の大統領選挙シーズンには存続を懸念する企業の割合が6.8%へと若干上昇した。

経営環境の変動が企業の将来に与える影響は大きく、税制優遇を活用する「Town」のような新たな取り組みがどの程度効果を発揮するかが、今後の焦点となるだろう。

Source:PYMNTS