Metaは、元幹部サラ・ウィン=ウィリアムズ氏の回顧録『Careless People』に対し、法的措置を講じた。仲裁人は、同氏がMeta在職中に結んだ非中傷契約に違反した可能性があるとのMetaの主張を認め、同氏は仲裁完了まで書籍の宣伝を制限されることとなった。
一方、出版元Macmillanは、この決定が自社に影響を与えるものではないと強調し、販売を継続すると表明した。書籍はFacebookの中国政府との関係や企業内部の動向を暴露しており、Metaは「虚偽の主張を含む」と反論。だが、法的措置が逆に注目を集め、Amazonランキングで急上昇している。
Metaの法的措置とウィン=ウィリアムズ氏の契約違反問題

Metaは、元幹部サラ・ウィン=ウィリアムズ氏の回顧録『Careless People』が、同社の非中傷契約に違反する可能性があるとして、仲裁手続きを通じて規制を求めた。ウィン=ウィリアムズ氏は2011年から2017年にかけてFacebookに勤務し、グローバル公共政策ディレクターを務めていた。この間に彼女が署名した契約には、企業に不利益をもたらす発言を制限する条項が含まれていた。
仲裁人はMetaの主張を認め、同氏が法的手続きを経ずに本の宣伝を行うことを制限する決定を下した。これにより、ウィン=ウィリアムズ氏は仲裁が完了するまで、本の広報活動を制限されることになった。ただし、書籍自体の流通が停止されたわけではなく、現在も一般販売は継続している。
Metaは、本書の内容について「虚偽の情報を含む」と強く反論し、ウィン=ウィリアムズ氏が「8年前に業績不振により解雇された元社員」であることを強調している。これに対し、彼女はMetaの対応を「本質的な議論の回避」と批判しており、書籍の内容については明確な訂正要求が出されていない点を指摘している。
出版社Macmillanの反発と「ストライサンド効果」による売上急増
ウィン=ウィリアムズ氏の回顧録を出版したMacmillanのインプリント、Flatiron Booksは、仲裁の決定について強く反発した。同社は「本書の販売およびプロモーションに影響を与えるものではない」との立場を示し、Metaの対応を「言論の自由に対する圧力」と批判した。また、声明の中で、「本書の編集プロセスは厳格に行われており、内容に関して法的問題はない」とも述べている。
Metaの法的措置にもかかわらず、『Careless People』の売上はむしろ急増している。これは、企業や政府がある情報を隠そうとした結果、逆に注目を集める「ストライサンド効果」によるものと考えられる。実際、TechCrunchの記事によると、本書はAmazonの売上ランキングで第3位にランクインしており、消費者の関心の高さがうかがえる。
この状況は、企業がネガティブな書籍に対し訴訟などの手段で対応した際にしばしば発生する問題を示している。法的措置が講じられることで「何か不都合な真実があるのではないか」という疑念を生み、結果的に書籍の販売促進につながる可能性がある。Metaにとって今回の措置が逆効果だったのか、それとも長期的にブランドイメージを守るための戦略だったのか、その評価は今後の展開次第となる。
『Careless People』が暴露したMetaの中国戦略と内部の権力構造
『Careless People』は、Metaの内部で何が起きていたのかを詳細に記述しており、特に中国政府との関係についての暴露が注目されている。
ウィン=ウィリアムズ氏は、本書の中でFacebookが2015年に「チーフ・エディター」というポジションを設け、中国政府の要求に応じて特定のコンテンツを検閲・削除する仕組みを検討していたと述べている。この事実が明るみに出たことは、Metaの過去の方針と現在の立場を巡る議論を呼んでいる。
Meta側は「我々は現在、中国でサービスを提供していない」としており、同社が最終的に中国市場への進出を断念したことを強調している。しかし、書籍が明らかにしたのは「過去にどのような計画があったか」という点であり、Facebookが一時的にでも中国政府の意向に沿った方針を検討していた可能性は否定できない。
さらに、ウィン=ウィリアムズ氏はMetaの組織運営についても批判を展開している。彼女は、「マキャヴェッリ的な権力闘争ではなく、超能力と莫大な資金を持つ14歳の少年たちが世界を動かそうとしているようだった」と述べ、意思決定の混乱や未熟さを皮肉っている。このような描写は、Metaの経営体制やリーダーシップに対する疑念を呼び起こしており、読者に同社の内情を再考させる要因となっている。
Source:TechCrunch