2025年、NVIDIAの株価は年初来で9%下落し、成長の勢いが鈍化している。マクロ経済の不透明感や新興企業DeepSeekの市場参入、中国向け輸出規制の影響などが重荷となる中、GTC(GPU技術カンファレンス)の開催が転換点となる可能性がある。
バンク・オブ・アメリカのアナリスト、ヴィヴェク・アリヤ氏は、GTCでの発表内容に注目し、特に粗利益率の回復が焦点になると指摘する。新アーキテクチャ「Blackwell」への移行によるコスト上昇が課題となる一方、市場では下半期に粗利益率75%台への回復を期待する声がある。
また、中国市場への規制強化による影響や、カスタムチップとの競争の行方も投資家の関心を集める。アナリストの多くは依然としてNVIDIAを「買い」と評価し、バンク・オブ・アメリカは目標株価を200ドルと設定。今後の発表次第で市場の見方が変わる可能性がある。
GTCがNVIDIAの転換点となるか 市場が注視する成長戦略

NVIDIAにとってGTC(GPU技術カンファレンス)は、単なる技術発表の場ではなく、株価回復のきっかけとなる重要なイベントとなる。2025年初頭、同社の株価は9%下落し、市場の期待感が後退する中、ジェンスン・フアンCEOがどのような成長戦略を示すかが焦点だ。
バンク・オブ・アメリカのヴィヴェク・アリヤ氏は、GTCでは粗利益率の回復が主要テーマになると指摘する。NVIDIAの粗利益率は一時79%に達したが、新アーキテクチャ「Blackwell」への移行によるコスト増で71%に低下している。しかし、下半期には75%台まで回復すると予想されており、このシナリオが市場に確信を与えられるかが鍵となる。
また、生成AIの成長やデータセンター向け需要の継続など、長期的な市場拡大の見通しをどのように説明するかも重要だ。特に、ASIC(特定用途向け集積回路)との競争において、NVIDIAが依然として市場の80~85%のシェアを維持できるかが問われる。GTCでの発表が投資家の信頼を回復する転換点となるか、注目が集まる。
Blackwellアーキテクチャの影響と利益率回復の課題
NVIDIAの次世代アーキテクチャ「Blackwell」は、AI向けの高度な機能を備えた革新的な設計とされるが、その導入に伴うコスト上昇が利益率を圧迫している。特に、製造の複雑化に伴うサプライチェーンの調整や、新技術の導入による原材料コストの増加が負担となっている。
バンク・オブ・アメリカのアリヤ氏によれば、Blackwellの移行に伴う課題として、ラックスケールシステムの最適化、液冷技術の導入、マスク変更、高度なCoWoS-Lパッケージング、12層HBM(高帯域幅メモリ)などが挙げられる。これらの技術的課題はNVIDIAにとって過去最大規模の負担となるが、アリヤ氏は「ここからの変更はより管理しやすくなる」と指摘する。
NVIDIAの競争力の源泉は、高性能なGPUとソフトウェアエコシステムの統合にある。Blackwell世代の製品が市場で十分な需要を確保できれば、利益率の回復は十分に可能だと考えられる。一方で、新技術への適応が遅れれば、短期的にはさらなる利益率の低下も否定できない。市場は、NVIDIAがこれらの課題をどう克服するかを注視している。
中国市場とカスタムチップ競争が与える影響
NVIDIAにとって、中国市場の動向は依然として大きなリスク要因となる。米政府による輸出規制が強化される中、H20チップへの影響や、中国市場以外での需要拡大がどこまで規制の影響を相殺できるかが問われる。現在の試算では、規制強化によりNVIDIAの売上高が約100億ドル(全体の5%)減少し、1株当たり利益(EPS)も30~40セント(約10%)下がると見込まれている。
加えて、AI市場ではカスタムチップ(ASIC)の開発が進み、特定用途向けの処理能力を強化した製品が増えている。特に、大手クラウド企業やAIスタートアップが独自のチップ開発を加速させる中、NVIDIAのGPUプラットフォームがどの程度の競争力を維持できるかが重要となる。
アリヤ氏は、「NVIDIAの広範な製品ポートフォリオを考慮すれば、ASIC競争が激化しても同社は引き続き市場の80~85%のシェアを維持できる」と分析する。しかし、カスタムチップの台頭が続けば、長期的には市場の変化に柔軟に対応する必要がある。中国市場のリスクとASIC競争の行方が、NVIDIAの成長戦略に与える影響は小さくない。
Source:TipRanks