Nvidiaの年次カンファレンス「GTC 2025」がサンノゼで開幕する。火曜日にはCEOジェンスン・ファンが基調講演を行い、AIやコンピューティング技術の進化に関する発表が期待されている。特に注目されるのは「Blackwell B300」シリーズの詳細で、288GBの大容量メモリを搭載し、AIモデルの処理能力を大幅に強化するとみられる。

また、2026年登場予定の次世代GPU「Rubin」に関する言及や、量子コンピューティングへの取り組みも焦点となる。Nvidiaは「量子の日」を設け、業界リーダーと共に実用化に向けた議論を行う予定だ。一方で、Blackwellチップの過熱問題や米国の輸出規制、競争環境の変化など、同社が直面する課題にも関心が集まる。

Blackwell B300シリーズの進化と次世代GPU「Rubin」の可能性

NvidiaがGTC 2025で発表予定の「Blackwell B300」シリーズは、これまでのGPUと比較して飛躍的な進化を遂げるとみられる。特に288GBの大容量メモリを搭載することで、AIの学習と推論のパフォーマンスが向上し、大規模言語モデルなどの開発がよりスムーズになることが期待されている。この新GPUは、クラウドデータセンターや企業向けAI開発の分野で大きな影響を与える可能性がある。

さらに、2026年に登場予定の次世代GPU「Rubin」にも関心が集まる。ファンCEOはこれについて「大幅な計算能力の向上」が見込まれると発言しており、新しいアーキテクチャの採用が予想される。加えて、「Rubin Ultra」やその先の技術についてもGTCで触れられる可能性がある。過去の傾向から考えると、BlackwellからRubinへの移行では、電力効率の向上や処理能力の大幅な進化が焦点となると考えられる。

NvidiaのGPUは現在市場の82%を占めるが、競合であるAMDやインテルもAI向けGPUの開発を加速している。Rubinシリーズの仕様次第では、AI技術の発展だけでなく、GPU市場の競争構造にも変化が生じるかもしれない。

Nvidiaが挑む量子コンピューティングと「量子の日」の意義

GTC 2025では、GPU技術だけでなく、Nvidiaの量子コンピューティング分野への取り組みも明らかになるとみられる。特に「量子の日(Quantum Day)」では、業界の主要なリーダーが集まり、量子技術の実用化に向けた議論が行われる予定だ。Nvidiaは過去にも量子シミュレーション向けのソフトウェア開発を進めており、GTCではその最新成果が発表される可能性が高い。

量子コンピュータは、従来のGPUやCPUとは異なるアプローチで問題を解決する技術であり、特に材料科学や金融モデリング、暗号技術などの分野で期待されている。Nvidiaがこの分野でどのような戦略を取るかは、今後の計算技術の進化に大きな影響を与えるだろう。

ただし、量子コンピュータは依然として発展途上の技術であり、実用化には多くの課題が残されている。GTC 2025での発表内容によっては、Nvidiaがどの程度この分野に本腰を入れるのかが見えてくるかもしれない。量子技術と従来のGPUの融合がどのように進むのか、その動向には注目が集まる。

AI市場の競争激化とNvidiaの課題

Nvidiaは過去最高の四半期売上高を記録し、GPU市場を支配しているが、同時にいくつかの課題にも直面している。その一つが、Blackwellチップにおける過熱問題だ。初期モデルでは発熱によるパフォーマンス低下が報告され、一部の企業が注文を削減したとの情報もある。この問題が解決されなければ、次世代のBlackwellシリーズやRubinシリーズにも影響を及ぼす可能性がある。

また、AI市場の競争環境も変化しつつある。特に中国のAIラボ「DeepSeek」が開発した高効率AIモデルが、既存の大手AI企業と肩を並べる水準に達しており、高性能GPUへの需要の変化が予想される。Nvidiaにとっては、自社のGPUが必要不可欠な存在であり続けるための戦略が求められる。

加えて、米国の輸出規制や関税の影響もNvidiaにとってリスクとなる。特に中国市場での販売に制限がかかることで、成長の鈍化が懸念される。これに対し、ファンCEOは「AI技術の進化が市場をさらに拡大させる」として楽観的な姿勢を示しているが、競争環境の変化を踏まえた柔軟な対応が求められる局面にある。

Source:TechCrunch