フランス大統領選に向け、UPR(フランス人民連合)の党首フランソワ・アスリノーが、国家準備金の5〜10%をビットコインに割り当てるという異例の政策を打ち出した。彼は、伝統的な通貨制度の不安定性に対し、ビットコインが主権を守る戦略的資産になり得ると主張している。
この提案は、中央銀行の金融政策やデジタルユーロの導入がもたらす監視リスクに対抗するものとされ、欧州の金融環境に波紋を広げる可能性がある。エルサルバドルが先行する国家レベルでのビットコイン活用が、フランスの通貨戦略にどのような影響を与えるのか、今後の展開が注目される。
フランスの金融主権をめぐる大胆な提案 ビットコインの国家準備金化がもたらす影響

フランス人民連合(UPR)のフランソワ・アスリノーが提案した国家準備金のビットコイン転換は、欧州金融政策に一石を投じるものとなる。彼の主張は、法定通貨の脆弱性を補う手段としてビットコインを位置付けるものだ。フランス銀行が保有する外貨準備の一部を暗号資産に移行することで、国際金融市場の影響を受けにくい独自の資産戦略を確立する狙いがある。
ビットコインは発行上限が2100万枚に設定されており、インフレリスクを抱える法定通貨とは異なる価値保存の手段として機能する。現在、各国の中央銀行が金融緩和政策を続ける中、アスリノーは伝統的な通貨制度の限界を指摘し、デジタル資産への分散投資の必要性を訴えている。この考え方は、金(ゴールド)を準備資産とする従来の方式と対比されるが、ビットコインの透明性と追跡可能性がより高い点が強調されている。
エルサルバドルはすでに国家資産の一部をビットコインに変換し、国際通貨基金(IMF)と対立しながらも新たな経済モデルを模索している。フランスが同様の道を進めば、欧州連合(EU)内の金融秩序に波紋を広げる可能性がある。アスリノーの提案は、単なる経済政策ではなく、国家の金融主権をめぐる戦略的な選択として注目されている。
デジタルユーロとビットコイン 金融の未来をめぐる二極化する議論
欧州中央銀行(ECB)が導入を進めるデジタルユーロは、ビットコインとは根本的に異なる性質を持つ。デジタルユーロは中央集権的な管理のもとで発行されるが、ビットコインは分散型ネットワークを基盤としている。アスリノーの提案は、この二つの通貨システムの対立を浮き彫りにするものだ。
デジタルユーロは、金融取引の効率化と透明性の向上を目的としているが、その一方で個人の取引が政府によって完全に監視される可能性があると指摘されている。フランスではすでに1,000ユーロを超える現金取引が規制されており、キャッシュレス化の流れが進む中で、デジタルユーロがプライバシー侵害の懸念を引き起こすとの声もある。
ビットコインは「許可不要な」取引を可能にし、中央集権的な管理から独立した経済活動を維持する手段として支持されている。特に、経済制裁下にある国々や政治的不安定な地域では、ビットコインが自由な資産移動を支える役割を果たしている。アスリノーの提案は、こうした文脈において、国家だけでなく個人の金融の自由を守る手段としてのビットコインの価値を強調するものとなっている。
フランスの通貨政策における大胆な賭け 伝統と革新のはざまで
フランスは2,436トンの金を保有する欧州有数の金準備国であり、伝統的に法定通貨の安定性を重視する政策を取ってきた。しかし、アスリノーの提案は、これまでの通貨政策の枠を超え、新たな価値基準を採用する方向性を示している。
金はその価値が長年にわたって安定しているものの、保管や取引のコストが高く、地政学的なリスクにさらされることがある。ビットコインは、オンライン上で迅速に取引できる利便性を持ち、管理主体の介入を受けにくいという特徴がある。一方で、価格の変動が大きく、国の財政安定性を脅かすリスクも指摘されている。
フランスが準備金の一部をビットコインに移行すれば、国際金融市場におけるプレゼンスの変化が避けられない。これは、EU全体の通貨政策にも影響を及ぼし、他国の追随や反発を招く可能性がある。アスリノーの提案は、単なる経済政策を超え、国家の主権と金融の未来をめぐる大きな議論を巻き起こすものとなるだろう。
Source:Cointribune