現在のGPU市場は未曾有の混乱に陥っている。Nvidiaの「Blackwell RTX 5000シリーズ」やAMDの「Radeon RX 9000シリーズ」といった最新GPUが登場したものの、メーカー希望小売価格(MSRP)で入手するのは極めて難しい。転売屋の介入や在庫不足が影響し、ハイエンドモデルだけでなくミドルレンジモデルですら適正価格での購入が困難になっている。
加えて、ハードウェアの価格上昇も深刻だ。RTX 5090は前世代比で400ドルの値上げとなり、ミドルクラスのRX 9070 XTも価格の高騰が続いている。この状況が改善されない限り、コンソールからPCへ移行するゲーマーは減少する可能性が高い。
新世代GPUの登場と市場価格の異常な高騰

GPU市場ではNvidiaの「Blackwell RTX 5000シリーズ」やAMDの「Radeon RX 9000シリーズ」が登場し、さらなる性能向上が実現された。特にRTX 5090は前世代より大幅に強化されており、最新のゲームでも最高のパフォーマンスを発揮する。しかし、問題はその価格だ。RTX 5090の公式価格は1,999ドル、RTX 5080でも999ドルと高額で、前世代のRTX 4090(1,599ドル)と比較しても著しい値上げが行われている。
さらに、定価で購入することすら困難な状況が続いている。転売屋の存在により、発売直後から市場価格は跳ね上がり、適正価格での入手がほぼ不可能になっている。加えて、小売店側も需要の高さを理由に定価以上の価格設定を行うケースが増え、市場全体の価格がさらに高騰している。これにより、新たにPCを組もうとするゲーマーや既存のPCユーザーが大きな影響を受けている。
価格の問題に加え、ミドルレンジ帯の選択肢も減少している。AMDの「Radeon RX 9070 XT」などは本来手頃な価格帯のはずだったが、需要の高まりと供給不足により価格が上昇。結果として、かつて「コストパフォーマンスの良い選択肢」だったモデルが手に入れにくくなっている。こうした状況が続く限り、PCを新調すること自体がハードルの高い選択肢になりつつある。
PCゲーム移行を妨げるGPU市場の歪み
ゲーミングPCの魅力は、カスタマイズの自由度やハードウェアの性能向上による快適なプレイ体験にある。しかし、現在のGPU市場の混乱がその利点を損なっている。特に価格の高騰と供給不足は、コンソールプレイヤーがPC移行をためらう大きな要因となっている。
PS5 Proが699.99ドルで販売されることを考えると、PCゲームへ移行するためにRTX 5090のような超高額GPUを購入するのは現実的ではない。ミドルレンジGPUも高騰しているため、コスト面でのメリットは薄れつつある。これにより、コンソールの方が手軽で安定した選択肢として魅力を増している。
また、仮に高価なGPUを入手できたとしても、ゲームの最適化の問題が新たな壁となる。近年のPCゲームでは、リリース時点でのパフォーマンス不安定やバグが頻発し、高性能GPUを搭載しても快適にプレイできないケースが増えている。これに対し、コンソールではハードウェアが統一されているため、開発段階で最適化が進み、安定したフレームレートでプレイできるという利点がある。このような状況では、PCを選ぶメリットが以前ほど明確ではなくなりつつある。
ゲーミングPC市場は今後どうなるのか
現状のGPU市場の混乱が続けば、PCゲーム市場そのものの停滞につながる可能性がある。高額なGPUの価格設定、供給不足、転売屋の影響により、ゲーミングPCの新規参入ハードルが高くなりすぎている。このままでは、新たにPCを組もうとするゲーマーが減少し、PC市場全体が縮小する危険性もある。
一方で、Steam DeckのようなハンドヘルドPCの人気が高まっている点は注目すべきだ。これらのデバイスは、コンソールに近いシンプルな運用が可能でありながら、PCゲームの豊富なライブラリを楽しめるという強みがある。特に「Deck Verified」に対応したゲームなら安定した動作が保証されるため、最適化不足の問題も軽減される。
GPU市場の混乱が解消されない限り、従来型のゲーミングPCの優位性は薄れていく可能性がある。今後、ハードウェアメーカーが価格戦略を見直し、より手の届きやすい価格帯のGPUを提供できるかどうかが、PCゲーム市場の未来を左右する重要なポイントとなるだろう。
Source:TechRadar