NvidiaのRTX 50シリーズが発売されてから2か月が経過したが、依然として市場の供給不足が続いている。転売業者が流通を圧迫し、個人ユーザーだけでなく、システムインテグレーター(SI)も高額な価格での調達を余儀なくされている。
特にRTX 5090はメーカー希望小売価格(MSRP)を大幅に超え、システムビルダーの仕入れ価格は3,000ドル超に達している。Nvidiaは供給量の増加を主張しているが、実際にはMSRPで購入できるケースはほとんどなく、消費者の不満が高まっている。
RTX 50シリーズの供給不足がシステムビルダーにも波及

RTX 50シリーズの供給不足は個人ユーザーだけでなく、システムビルダーにも大きな影響を及ぼしている。特にカスタムPCを販売するPowerGPUやiBuyPowerなどの企業は、RTX 5090の入手が困難な状況に直面し、価格を大幅に引き上げざるを得ない事態に陥っている。PowerGPUのCEOであるJese Martinez氏は、仕入れ価格がメーカー希望小売価格(MSRP)を大幅に超えていることを明かし、「利益率の問題ではなく、市場そのものが高騰している」と説明している。
具体的には、RTX 5090のMSRPは1,999ドルと設定されているものの、システムビルダーが仕入れる価格は3,050〜3,100ドルにまで高騰しており、この価格差がカスタムPCの販売価格にも影響を与えている。さらに、他のビルダーでは、2,900ドルから3,300ドルの価格で調達せざるを得ないケースも報告されており、GPU単体の販売価格だけでなく、PC全体の価格が上昇する要因となっている。
システムビルダーが高価格でGPUを仕入れざるを得ない背景には、転売業者の存在がある。市場に流通するRTX 50シリーズの多くが転売目的で確保され、需要に対して供給が追いつかない状態が続いている。結果として、正規の販売ルートで購入できるユーザーは限られ、高額な転売品を購入するか、供給が安定するのを待つしかない状況となっている。
Nvidiaの供給主張と市場の現実
Nvidiaは、Blackwell GPUの出荷数が前世代のAda Lovelace GPUに比べて2倍に増えていると主張している。しかし、実際の市場ではMSRPでRTX 50シリーズを購入できるケースはほとんどなく、ユーザーからの不満が高まっている。公式の供給量が増えているのであれば、ここまでの品薄状態が続くのは不自然であり、転売業者による影響やAI市場での需要が大きく関係している可能性がある。
特にAI向けのGPU需要が急増していることが、一般ユーザーの購入をさらに困難にしている要因と考えられる。NvidiaのハイエンドGPUは、ゲーミング用途だけでなく、AI開発やデータセンター向けとしても高い人気があり、多くの企業が大量に確保している。そのため、個人向けの販売分が極端に少なくなり、市場全体の流通量が制限されていると見られる。
一方、AMDのRadeon RX 9070シリーズは、比較的安定した供給を確保している。完全に問題がないわけではないが、複数のボードメーカーと連携し、価格の急騰を抑える努力を行っているため、RTX 50シリーズと比べて入手しやすい状況が続いている。しかし、一部の小売業者では、RX 9070シリーズの価格をMSRPよりも最大130ドル上乗せする動きが見られ、GPU市場全体の価格高騰が続いていることは否めない。
旧世代GPUの不足が中古市場を活性化
RTX 50シリーズの供給不足により、多くのユーザーが代替手段として旧世代のGPUを探す動きを見せている。しかし、RTX 4090をはじめとする前世代のハイエンドモデルも市場から消えつつあり、特に昨年10月頃から在庫が急減したことで、GPU全体の価格が「パンデミック時代のような高騰」に戻りつつある。
その結果、一部のユーザーは中古市場に目を向け、GeForce 30シリーズ(Ampere)やRDNA 2/3シリーズの購入にシフトしている。中古市場では、性能と価格のバランスを考慮しながら比較的手頃な価格でGPUを確保できるケースもあるが、状態や保証の面でのリスクもあるため、慎重な選択が求められる。
供給不足が解消するまでの期間は不透明であり、短期間での価格安定化は期待しにくい状況だ。現在の市場では、RTX 50シリーズの入手は困難を極め、転売価格での購入を避けるためには、AMDのGPUや旧世代のモデルを選択肢に入れる必要がある。
Source:TechSpot