NVIDIAのH20 AIアクセラレータが中国市場で深刻な供給不足に陥っている。報道によると、テンセントやバイトダンスをはじめとする中国の大手テクノロジー企業が、大量のH20を購入しており、価格も高騰している。
この背景には、AI開発の加速とそれに伴う計算能力の需要急増がある。特にDeepSeekの新AIモデル発表が大きな影響を与えており、中国企業は自社の大規模言語モデル(LLM)を最適化するため、NVIDIAのGPUに依存する形となっている。
H20 AIアクセラレータが中国で急速に普及する理由

NVIDIAのH20 AIアクセラレータは、H100の後継として登場し、中国市場に特化した仕様となっている。これにより、AI開発を進める中国企業にとって最適な選択肢の一つとなっている。特にDeepSeekの新たな大規模言語モデル(LLM)の登場が需要を押し上げ、各社が高性能GPUを大量に確保しようと動いている。
報道によれば、テンセントはH20 AIアクセラレータの大量購入に踏み切り、その取引額は数百億元に達するとされる。これは、同社が「Tencent Docs」や「Tencent Maps」といったアプリにAI機能を統合する計画と密接に関連している。また、バイトダンスも同様の動きを見せており、動画プラットフォームやAI駆動型サービスへの投資を強化している。
H20の価格は1台あたり約10万元(約200万円)で、競合するHuaweiのAscend 910Bよりも安価とされる。さらに、NVIDIAのCUDAを中心としたソフトウェアエコシステムが強みとなり、中国企業にとってより扱いやすい選択肢となっている。こうした要素が重なり、H20は中国市場で急速に普及しつつある。
H20の供給不足と価格上昇がもたらす影響
H20 AIアクセラレータの需要が急増する一方で、供給不足が深刻化している。中国企業の大量購入により、市場では十分な在庫が確保できず、価格も高騰している。H20は元々、H100に比べて性能が抑えられているが、それでも計算能力の需要を満たす存在として注目されている。
NVIDIAにとって中国市場は極めて重要な存在だ。調査会社Omdiaによると、2024年にテンセントとバイトダンスが購入したNVIDIA製AIチップは合計23万個に達し、Microsoftに次ぐ規模となっている。このような状況下では、中国国内のAI開発企業がNVIDIAの製品を求め続ける限り、H20の供給不足は今後も続く可能性がある。
一方で、H20の価格上昇はAI開発コストの増加を招き、中小規模の企業にとっては負担が大きくなる。高性能なGPUを確保できる企業とできない企業の間で格差が生まれ、AI技術の発展に影響を与える可能性も指摘されている。今後、中国市場におけるAI開発の勢力図がどのように変化するかが注目される。
NVIDIAのソフトウェアエコシステムがH20を後押し
H20の成功を支えているのは、単なるハードウェア性能だけではない。NVIDIAの強力なソフトウェアエコシステムが、中国市場での優位性を確保する重要な要素となっている。特にCUDAをはじめとする開発環境が広く普及しており、既存のNVIDIA製品と互換性が高いため、企業側も移行しやすい。
中国国内にはHuaweiのAscendシリーズをはじめとする競合製品が存在するが、NVIDIAのソフトウェアスタックを活用できるH20が選ばれる傾向にある。開発者にとっては、既存のAIモデルをそのまま流用しやすく、トレーニング環境の変更を最小限に抑えられることが大きなメリットとなる。
こうした状況を踏まえると、今後もNVIDIAのGPUは中国市場で高い需要を維持し続ける可能性がある。ただし、供給不足が続けば、企業側は代替ソリューションを模索する動きも出てくるだろう。技術的な進化だけでなく、供給体制の変化が市場に与える影響にも注目が集まっている。
Source:Wccftech