NVIDIAのRTX 50シリーズの価格が想定よりも高騰している。その背景には、GPUとVRAMのコストが製造原価の約80%を占め、メーカーがMSRP(メーカー希望小売価格)で販売するのが困難であるという現実がある。
さらに、多くのAIB(アドインボード)メーカーは、MSRPでの販売では利益を確保できず、オーバークロックモデルを高価格帯で販売する戦略を採用。流通段階でも価格が上乗せされ、消費者が支払う最終価格は大幅に上昇している。
市場の価格安定には供給量の増加が鍵となるが、販売業者によるとRTX 50シリーズの供給が安定するのは3月以降になる見込みだ。
RTX 50シリーズの価格高騰 GPUとVRAMが占めるコストの実態

RTX 50シリーズの価格が想定以上に高騰している背景には、製造コストの大部分をGPUとVRAMが占めているという事実がある。NVIDIAのボードパートナーによると、RTX 50シリーズではGPUとVRAMのコストがBOM(部品表)コストの約80%を占めており、冷却システムやその他のパーツに割り当てられるコストはわずか20%に過ぎないという。
特にVRAMのコストは世代ごとに上昇傾向にあり、高速なGDDR7メモリを搭載するRTX 50シリーズでは、この影響がより顕著になっている。RTX 5080の製造コストは最大900ドルに達する可能性があり、MSRPでの販売では十分な利益を確保できない状況だ。これにより、AIBメーカーはコストを回収するために価格を引き上げるしかないという構造になっている。
市場での価格高騰は単なる需要と供給の問題だけではなく、基盤となる製造コストの問題が根底にある。特に、GPUとVRAMの価格が全体のコストの大半を占める以上、価格を抑える余地がほとんどないことが、RTX 50シリーズの価格が高止まりする要因となっている。
MSRPでの販売が難しい理由 AIBメーカーが選ぶ価格戦略
RTX 50シリーズのAIBメーカーは、MSRPでの販売が難しい理由として、工場レベルでのコスト負担の大きさを挙げている。販売業者によると、「工場がMSRPを実現するのは非常に難しく、GPUとVRAMのBOMコストが80%を占めている」という。このため、通常のベースモデルをMSRPで販売するよりも、オーバークロック(OC)モデルを高価格帯で販売する方が、メーカーにとっては合理的な選択肢となっている。
また、OCモデルは仕様上の差別化がしやすく、通常モデルと比較して価格を上乗せしやすいという特性がある。販売業者のコメントによれば、GPUのオーバークロックはそれほど難しくなく、高クロック版として販売することでプレミアム価格を設定できるという。結果的に、AIBメーカーはMSRPモデルの販売よりも、利益を確保しやすいOCモデルを中心に市場へ投入している。
このような戦略が取られることで、消費者が入手できるGPUの大半がMSRPを超えた価格で流通することになる。特にRTX 5090やRTX 5080といった上位モデルは、その影響を大きく受けており、本来のMSRPよりも大幅に高い価格での販売が一般化している。
価格安定のカギは供給量の増加 3月に向けた市場の動向
RTX 50シリーズの価格が高騰している中で、販売業者は「3月には供給が改善する見込み」と述べている。これは、NVIDIAやAIBメーカーの生産体制が徐々に安定し、供給量が増加することで市場価格が落ち着く可能性があることを示している。
しかし、これまでのGPU市場の動向を考えると、単に供給量が増えたからといってすぐに価格が下がるとは限らない。特に、流通業者や小売業者が在庫を調整しながら価格を維持する動きもあり、供給が改善されても価格が急激に下がる可能性は低い。実際、過去の世代でも新型GPUの供給が安定するまでに数カ月を要し、市場価格が本来の水準に戻るには時間がかかる傾向があった。
今後の価格動向は、NVIDIAの供給戦略だけでなく、AIBメーカーや小売業者の動きにも左右されることになる。供給が増えても高価格帯のOCモデルが市場の中心となれば、一般ユーザーが求める適正価格での入手は依然として難しい状況が続く可能性がある。
Source:Wccftech