アマゾンの株価が過去に例を見ない割安な水準に到達している。株価収益率(P/Eレシオ)は35.5倍と、過去20年間で最も低い水準に近づき、投資家にとって大きな買いの機会と捉えられている。
特に利益の大部分を生み出す広告事業とアマゾン・ウェブ・サービス(AWS)は、景気後退の影響を受けにくいとされ、今後も収益成長の牽引役となる見込みだ。スコシアバンクのアナリストは、これらの要因を考慮し、アマゾンの株価が50%以上上昇する可能性があると予測している。
こうした状況を踏まえ、市場ではアマゾン株の将来的な成長性に期待が高まっている。
アマゾン株の割安感が際立つ理由と歴史的背景

アマゾンの株価は現在、過去20年間で最も割安な水準にある。株価収益率(P/Eレシオ)は35.5倍まで低下し、これは2000年代半ば以来の数値だ。当時のアマゾンは主にオンライン小売業に依存しており、クラウド事業(AWS)や広告事業の存在感は今ほど大きくなかった。そのため、現在の事業構造を考慮すれば、当時と同じ評価を受けること自体が市場の過小評価といえる。
現在のアマゾンの主力収益源は、低利益率のオンラインストアではなく、高収益のAWSと広告事業である。特に、広告事業の売上は2024年第4四半期に173億ドルに達し、前年同期比で18%増という成長を記録した。この分野の利益率は一般的に30%以上とされ、企業全体の収益性を押し上げている。また、AWSの営業利益率は37%と極めて高く、アマゾンの全営業利益の約58%を占める。こうしたデータを踏まえると、現在のP/Eレシオの低下は一時的な市場の調整によるものであり、長期的には見直される可能性が高い。
歴史的に見ても、アマゾンの株価は短期的な調整局面を経て、大きな成長を遂げてきた。2008年の金融危機後には、P/Eレシオが急低下したが、その後の10年間で株価は大幅に上昇した。今回の状況が当時と異なる点は、アマゾンがクラウドサービスと広告収益を柱に安定した利益を確保していることだ。このため、投資家は現在の割安な評価を中長期の視点で捉え、慎重に判断する必要がある。
AWSと広告事業が利益成長の柱に
アマゾンの収益構造は、かつてのオンライン小売中心のモデルから大きく変化している。現在、利益の大部分はクラウド事業であるAWSと、急成長を続ける広告事業が生み出している。AWSは2024年第4四半期に営業利益率37%を記録し、アマゾン全体の営業利益の過半数を占めた。一方、広告事業は四半期売上173億ドルを達成し、前年同期比18%増という力強い成長を見せた。
この2つの事業は、景気後退時にも比較的安定した収益を確保できる点で共通している。AWSは企業向けのクラウドサービスであり、景気後退時にも必要不可欠なインフラとしての役割を果たす。また、広告事業はアマゾンの広範なユーザーデータを活用し、高いターゲティング精度を実現しており、企業の広告予算が削減されたとしても一定の需要は維持される可能性が高い。
一方で、アマゾンのオンラインストア部門は、利益率が低い上に景気変動の影響を受けやすい。そのため、同社の成長戦略としては、小売事業の規模を維持しつつ、より利益率の高いAWSと広告事業の拡大に注力することが鍵となる。特に、AIを活用した広告最適化技術の進化や、クラウドサービスのさらなる市場拡大が期待されており、今後の成長を支える重要な要素となるだろう。
50%以上の株価上昇予測の根拠と今後の展望
スコシアバンクのアナリスト、ナット・シンドラー氏は、アマゾンの今後12カ月の目標株価を306ドルと設定し、現在の株価から50%以上の上昇が期待できると述べている。その根拠の一つが、AWSと広告事業の成長による利益率の改善である。
現在、アマゾンのP/Eレシオは過去20年で最も低い水準にあるが、これは市場の一時的な調整の影響が大きい。もしAWSの成長が継続し、広告事業の収益性が向上すれば、企業全体の営業利益率はさらに改善し、株価もそれに応じて上昇する可能性が高い。また、2024年の米国経済が景気後退に陥った場合でも、クラウド事業や広告収益が下支えとなり、他の消費関連銘柄と比べて株価の下落リスクは限定的と考えられる。
しかし、成長の見通しにはリスクも伴う。競争環境が激化する中、AWSの市場シェアが維持できるか、広告事業がグーグルやメタといった競合に対抗できるかが鍵となる。特に、クラウド分野ではマイクロソフトやグーグルが積極的に投資を拡大しており、価格競争が利益率に影響を与える可能性もある。
長期的に見れば、アマゾンの事業基盤は極めて強固であり、成長のポテンシャルは依然として高い。現在の株価水準は、将来的な収益成長を考慮すると割安といえるが、市場環境の変化に注意を払いながら慎重に判断することが求められる。
Source:The Motley Fool