中国株式市場が2024年の低迷を経て急回復している。かつて投資家の信頼を失い、多くの資本が流出したが、政府の政策転換が市場に新たな活気をもたらした。特に、北京がテクノロジー産業を支援する姿勢を鮮明にしたことが市場の追い風となり、大型株が年初来で5%上昇するなど好調な動きを見せている。

かつて厳しい規制の対象となったテクノロジー業界は、習近平国家主席の発言や政策会議を通じて支援策が打ち出され、投資家の期待感を高めた。米国市場が調整局面に入る中、中国市場の相対的な魅力が再評価されつつあり、大手金融機関も強気の見方を示し始めている。

もっとも、依然として経済全体の課題は残る。国内消費の低迷、不動産業界の負債問題などが根本的に解決されたわけではなく、政府の施策が本格的な成長につながるかは未知数だ。しかし、株価の回復は投資家心理の転換を示唆し、今後の政策の行方が一層注目される展開となっている。

中国株急回復の背景 政策転換と市場の再評価

2024年、中国株式市場は深刻な低迷に見舞われた。CSI 300指数は2021年のピークから45%下落し、外国直接投資も1992年以来の最低水準に落ち込んだ。これは、不動産市場の低迷、デフレ懸念、高い失業率などの要因が重なった結果である。

しかし、2025年に入り市場の雰囲気は一変した。北京政府がテクノロジー産業の支援を打ち出したことで、投資家の見方が変わった。2月には習近平国家主席がテクノロジー分野の成長を国家戦略として位置付ける方針を示し、さらに「両会」と呼ばれる全国人民代表大会などの政策会議でも、民間企業支援が強調された。これにより、市場は政策の安定性を再評価し、特にテクノロジー関連株が上昇に転じた。

また、米国市場の不安定さも中国市場の相対的な魅力を高めた。S&P 500が2月の史上最高値から10%下落したのに対し、CSI 300は年初から5%上昇。これを受け、シティグループは中国株の格付けを「オーバーウェイト」に引き上げ、バンク・オブ・アメリカも中国市場のパフォーマンスが米国を上回ると予測している。市場の見方が急速に変化する中、中国株の動向が世界の投資家にとって再び重要な焦点となっている。

テクノロジー産業の復権 政府の支援と投資家の期待

かつて中国のテクノロジー産業は政府の規制強化により打撃を受けていた。2020年以降、アリババやテンセントなどの大手企業が厳しい監督下に置かれ、多くの投資家が市場から撤退した。しかし、2025年に入り政府の姿勢が変化したことで、この分野に再び光が差し込んでいる。

2月に開催されたテクノロジー関連のシンポジウムでは、習近平国家主席が「国家の成長はテクノロジーによって推進される」と明言。これを受け、投資家は中国政府が今後、テクノロジー企業に対する支援を強化するとの期待を抱いた。さらに、最新の「両会」では、テクノロジー分野への資金援助、規制緩和、補助金支給などの具体策が示唆された。

この政策転換により、特にAI分野での競争が加速している。中国ではすでにDeepSeekなどの革新的なAIツールが発表されており、米国のAI市場を脅かす存在となりつつある。米国のAI株が伸び悩む中、中国のAI関連企業は大きな成長を遂げており、今後の展開が注目されている。

経済回復の鍵は国内需要 政府の戦略転換

株式市場の回復が進む一方で、中国経済全体の課題は依然として残る。特に、国内消費の低迷と不動産市場の停滞が大きなリスクとなっている。2024年の中国経済は、外需に依存する形で成長を維持していたが、輸出に頼る経済構造は持続不可能である。

政府もこの問題を認識し、経済成長の鍵を「国内需要の拡大」にシフトし始めた。3月の「両会」では、個人消費を促進するための金融緩和策が打ち出され、銀行に対して消費者向けローンの条件緩和を求める動きが見られた。また、2025年のGDP成長率5%という目標を達成するためには、企業や消費者の信頼回復が不可欠であり、政府のさらなる対応が求められる。

市場の回復は心理的な影響が大きく、投資家のセンチメントが変わることで株価は上昇する。しかし、実体経済の成長が伴わなければ、回復基調は一時的なものに終わる可能性がある。政策の実効性が問われる中、政府がどのように民間消費を刺激し、安定的な成長を実現するのかが今後の焦点となる。

Source:yahoo finance