量子コンピューティング市場が揺れる中、投資銀行ニーダムはD-Wave Quantum(QBTS)への強気姿勢を維持し、目標株価を8.50ドルに設定した。競合他社が年初来で最大50%下落する中、D-Waveの株価は38%上昇しており、量子アニーリング技術を強みとする同社の競争力が注目されている。
2024年第4四半期決算では、売上高2.3億ドル、受注額前年比502%増を記録し、赤字幅も縮小した。また、現金残高は前年の4,130万ドルから1.78億ドルへと大幅増加。さらに、2025年第1四半期の売上予想は市場予想の4倍近い1,000万ドル超とされている。
D-Waveは既に商業レベルの量子コンピュータを提供し、MastercardやLockheed Martinといった大手企業が顧客として名を連ねる。市場全体の成長率はCAGR35.6%と予測されており、同社の今後の成長余地は依然として大きい。
D-Wave Quantumの業績と市場評価 ニーダムが「買い」推奨を維持する理由

D-Wave Quantum(QBTS)は2024年第4四半期決算で売上高2.3億ドルを記録し、前年同期比で20.5%減少したが、赤字は縮小した。調整後純損失は1株あたり0.08ドルとなり、前年同期の0.10ドルから改善したものの、市場予想の0.06ドルを下回った。一方で、受注額は1,830万ドルと前年比502%増加し、事業の成長基調を示した。
財務面では、現金残高が1.78億ドルに達し、前年の4,130万ドルから大幅に増加した。さらに、2025年第1四半期の売上見通しは1,000万ドル超とされ、市場予想の2.55百万ドルを大きく上回る見込みとなっている。このような業績の動向を受け、ニーダムはD-Wave Quantumの「買い」評価を継続し、目標株価を8.50ドルに設定した。この水準は既に突破されているが、同社の成長余地は依然として大きいと見られている。
D-Wave Quantumの強みは、競合他社とは異なり、既に商業利用可能な量子コンピュータを提供している点にある。市場全体が成長局面にある中で、実用化の進んでいる企業は限られており、この点が投資家の関心を集める要因となっている。競合するRigetti Computing(RGTI)やQuantum Computing(QUBT)が年初来で最大50%下落する中、D-Waveは38%の上昇を記録しており、相対的な強さを示している。
量子コンピューティング市場の成長とD-Waveの戦略的優位性
量子コンピューティング市場は今後10年間で急成長が見込まれており、2033年には市場規模が483億ドルに達すると予測されている。これは年平均成長率(CAGR)35.6%という高い水準であり、D-Wave Quantumはこの成長の恩恵を受ける立場にある。同社は、量子アニーリングを活用した技術により、物流、人工知能、材料科学、製薬、金融モデリングなどの分野で活用が進んでいる。
D-Waveの技術の商業利用が進んでいる点も、同社の競争優位性を高める要素となっている。2023年にはドイツの研究機関Forschungszentrum Jülichに対し、オンプレミスの量子コンピュータを販売し、この発表以降、株価は75%以上上昇した。さらに、クラウドベースの量子コンピューティングサービス(QCaaS)を提供しており、この分野も成長が見込まれる。
競争環境を見ると、量子コンピュータ市場ではゲート型量子コンピュータを開発する企業も多いが、D-Waveは量子アニーリングという独自の技術に特化している。これは特定の最適化問題を高速に解くのに適しており、すでに実用化が進んでいる。一方、IonQ(IONQ)などのゲート型量子コンピュータ企業は、長期的な成長ポテンシャルを持つものの、実用化には時間を要すると考えられている。
投資家が注視すべきポイント D-Waveの今後の展望
D-Wave Quantumの株価は年初来で38%上昇し、目標株価8.50ドルを突破したものの、依然として52週間の高値から7%低い水準にある。アナリストの平均目標株価は7.67ドルであり、一部の市場関係者は既に買いが進み過ぎたと見る向きもある。ただし、6人のアナリストのうち5人が「強い買い」、1人が「中程度の買い」と評価しており、依然として強気の見方が優勢である。
D-Waveの財務状況は改善しており、特に営業キャッシュフローの流出額が前年の6,060万ドルから4,260万ドルへと減少した点は重要なポイントである。これは事業の安定化を示す指標の一つであり、投資家にとって好材料となる。また、顧客数も133社から135社へと増加し、ビジネスの拡大が続いている。
今後のリスク要因としては、市場全体の景気後退リスクや、量子コンピューティング技術の発展が期待通りに進まない可能性が挙げられる。特に、他の量子コンピューティング企業が新たな技術的ブレークスルーを達成した場合、D-Waveの競争力が相対的に低下する可能性もある。しかし、既に商業利用が進んでいる点や、着実な財務改善が進んでいることから、D-Waveは引き続き成長が見込まれる銘柄の一つであると言える。
Source:Barchart.com