テスラ(TSLA)の株価に対する懸念が一段と強まっている。Mizuhoのアナリスト、ビジャイ・ラケシュ氏は、電気自動車(EV)市場の成長鈍化とテスラの販売低迷を理由に、同社の目標株価を515ドルから430ドルへ引き下げた。特にドイツ市場では販売が前年同期比で76%減少し、2月の販売実績は主要3市場すべてで市場平均を下回ったことが明らかとなった。

加えて、トランプ前大統領の関税政策がテスラに及ぼす影響も無視できない。同社は、2025年の業績に悪影響を及ぼす可能性があると認めており、EV市場における競争激化とともに、さらなる株価下落の要因となり得る。一方で、Mizuhoは目標株価を下げつつも「アウトパフォーム」の評価を維持し、中長期的な反発の可能性にも言及している。ウォール街では依然としてテスラに対する期待が残るが、市場環境の変化により今後の展開は不透明な状況が続きそうだ。


テスラ株の下落要因 Mizuhoが指摘する販売不振と市場環境

Mizuhoのアナリスト、ビジャイ・ラケシュ氏は、テスラ(TSLA)の目標株価を引き下げた。主な理由として、2025年に向けたEV市場の成長鈍化と、テスラの販売実績の低迷が挙げられる。2月のデータによると、テスラは米国・欧州連合・中国の3大市場すべてで市場平均を下回る販売実績を記録した。特にドイツ市場での落ち込みが顕著で、販売台数は前年比76%減と急減している。この結果、同社の株価は年初来で41%下落し、投資家の懸念をさらに強めた。

こうした販売不振の背景には、世界的なEV市場の変化がある。中国メーカーの攻勢が続き、価格競争が激化する中、テスラは販売戦略の見直しを迫られている。モデルYのリフレッシュ版の需要も期待を下回り、市場シェアの維持が難しくなっている。EV市場全体の成長が鈍化し始めたことで、需要の先細りを懸念する声もある。これらの要因を踏まえ、Mizuhoはテスラの目標株価を515ドルから430ドルに引き下げる判断を下した。ただし、依然としてアウトパフォームの評価を維持し、中長期的な成長の可能性を示唆している。

トランプ関税の影響とテスラの今後の展望

ドナルド・トランプ前大統領の関税政策が、テスラの事業に与える影響も無視できない。テスラ自身も、2025年に米国製品への報復関税が業績に悪影響を及ぼす可能性があることを認めている。特に中国市場では、すでに販売競争が激化している中で、関税の影響がさらなるハードルとなる可能性が高い。テスラは中国・上海工場での生産を強化しているが、関税の変動によってコスト増が避けられず、価格競争力が低下する懸念がある。

さらに、トランプ氏が大統領に復帰した場合、政策の不透明感がテスラの経営戦略に影響を及ぼす可能性がある。テスラのCEOであるイーロン・マスク氏は、新政権との関係によってはブランドイメージが悪化し、欧州市場での評価にも影響が出ることを懸念している。米国市場では依然として高いシェアを誇るが、競争が激化する中で、政策の影響がどのように作用するかは不透明な状況だ。

一方で、テスラは新たな事業戦略を進めており、CybercabやOptimusプロジェクトなどの新技術が将来的な成長を支える可能性がある。これにより、現在の下落局面が一時的なものであり、中長期的には再び成長軌道に乗る可能性も指摘されている。ただし、今後の市場環境や政策の動向によっては、株価のさらなる変動が避けられない状況が続きそうだ。

ウォール街はテスラに期待を残すが市場の不確実性は拭えず

テスラの株価が下落を続ける中、ウォール街のアナリストの見方は分かれている。Mizuhoは目標株価を引き下げたものの、依然として市場平均を上回るパフォーマンスを予測している。現在、テスラ株のコンセンサス評価は「ホールド(中立)」にとどまっているが、平均目標株価は346ドルとされ、現在の株価水準から約45%の上昇余地があるとの見方もある。

株価の変動要因として、中国市場の競争激化やトランプ関税の影響が挙げられるが、テスラが進める新規事業がこれをどこまで相殺できるかが焦点となる。EV市場の成長鈍化が続けば、企業の評価も厳しくなるが、テスラの技術開発力やブランド価値を考慮すれば、長期的な視点での期待は依然として根強い。

今後の株価動向は、テスラの販売戦略と市場の変化に左右されることになる。短期的には厳しい局面が続く可能性が高いが、新技術の投入や政策の変化によって、長期的な投資価値が再評価される可能性もある。ウォール街はテスラに対して慎重ながらも一定の期待を残しており、今後の市場動向を見極める局面にある。

Source:Barchart