スタンダードチャータード銀行は、2025年末のイーサリアム(ETH)の価格予測を従来の10,000ドルから4,000ドルに引き下げた。レポート「Ethereum — Midlife Crisis」において、プルーフ・オブ・ステーク(PoS)移行後の構造的な課題と、レイヤー2(L2)ソリューションの台頭がメインブロックチェーンの価値低下を招いていると指摘した。

特に、主要なL2であるBaseがイーサリアムのエコシステムから5,000億ドルの価値を奪ったと分析。2024年3月のDencunアップグレードによりL2の利用が加速し、トランザクション手数料が分散。結果として、ETH本体の経済的基盤が揺らぎ、ETH-BTC比率も2025年末には0.015まで低下すると予測されている。

L2の拡大がイーサリアムの成長を支える一方、メインチェーンへの還元策が求められており、特別税の導入案も示された。同行は長期的にはETH価格が2026年に6,000ドル、2027年に7,500ドルまで回復すると予測しているが、その実現にはエコシステムの再構築が不可欠となる。

スタンダードチャータードが示すイーサリアムの成長限界とL2の影響

スタンダードチャータード銀行は、2025年のイーサリアム価格予測を大幅に引き下げた。主な要因は、レイヤー2(L2)ソリューションの台頭によるメインネットの価値減少にある。同銀行のデジタル資産調査責任者であるジェフリー・ケンドリック氏は、L2の成長によってイーサリアムの経済基盤が損なわれ、エコシステム全体の市場価値が5,000億ドル規模で失われたと指摘した。

この現象の背景には、2024年3月に実施されたDencunアップグレードがある。この改良によって、L2の活用が促進され、トランザクション手数料が大幅に削減された。しかし、これにより手数料の大部分がL2に流れ、メインネットの収益性が低下した。これがETH-BTC比率の下落を加速させ、2025年末には0.015まで低下するとの見通しを示した。

スケーリング技術の発展はイーサリアムの利便性向上に貢献する一方で、ネットワーク本体の経済モデルを揺るがす結果を招いている。今後、メインネットの価値維持のためには、L2とイーサリアム本体のバランスをどのように取るかが課題となる。

L2の拡大がイーサリアムの成長戦略を再構築させる

L2は、イーサリアムのスケーラビリティ問題を解決するために設計されたが、その成功がメインネットの収益減少という新たな課題を生んでいる。特に、Baseなどの主要L2プラットフォームは、独自のトランザクション手数料を徴収し、イーサリアム本体が受け取る手数料収入を奪う結果となっている。

これにより、イーサリアムネットワーク全体の「GDP」ともいえる経済規模が縮小している。スタンダードチャータードは、L2の拡張によって5,000億ドル規模の市場価値が失われたと試算し、イーサリアム財団がこれに対処しない限り、ネットワークの経済的基盤がさらに脆弱化すると警告している。

一方で、L2の成長を阻害せずにイーサリアム本体へ経済的価値を還元する方法として、「特別税(super tax)」の導入が議論されている。これは、L2が得た収益の一部をメインチェーンに還流させる仕組みであり、鉱業企業の超過利益に課税する政府の政策と類似したコンセプトだ。こうした措置が実現すれば、イーサリアムの経済基盤の維持に貢献する可能性がある。

ETHの長期的回復シナリオとその課題

スタンダードチャータードは短期的には弱気な見通しを示しながらも、長期的にはイーサリアムの成長余地を認めている。2026年には6,000ドル、2027年には7,500ドルへと回復する可能性があると予測しており、スケーリング技術とエコシステムの調整が鍵を握るとみている。

しかし、この回復にはいくつかの条件が伴う。第一に、L2とメインネットの収益分配の見直しである。現状では、トランザクション手数料の多くがL2に流れているが、メインネットへ還元する仕組みがなければ、ネットワーク全体の持続可能性が損なわれる。

第二に、ETH-BTC比率の低迷への対応策が求められる。ETHの相対的価値が低下することで、投資家の信頼が揺らぐ可能性がある。この問題を克服するためには、イーサリアム本体のユースケース拡充や、トークン経済の最適化が必要だ。

長期的な価格上昇を実現するためには、スケーリング技術の発展と経済モデルの調整を両立させることが不可欠である。イーサリアム財団がL2とメインネットのバランスをどのように再構築するかが、今後の価格動向を左右するだろう。

Source:CryptoSlate