Huaweiは、2025年4月以降、Windowsを搭載しないPCを市場投入する方針を固めた。米国の制裁措置により、MicrosoftのOSを利用するためのライセンス更新が困難になる可能性が高まり、独自のHarmonyOSおよびLinuxへの完全移行を余儀なくされた。

最新の「HarmonyOS NEXT」は、AndroidやWindowsアプリの互換性を排除し、独自の技術フレームワークと最適化されたコンパイラを採用する仕様となる。これに伴い、Huaweiは自社製のKunpeng CPUを搭載した「AI PC」の開発を進めており、Linuxベースの「MateBook D16」も準備中とされる。

Windowsの代替としてのHarmonyOSがどこまで市場に受け入れられるかは不透明だが、中国政府機関も採用を進めており、HuaweiのPC事業は新たな局面を迎えている。

HuaweiがWindowsを排除する背景と今後の戦略

Huaweiは2025年4月以降、Windowsを搭載しないPCを市場投入する方針を固めた。その背景には、米国による制裁措置が影響している。Huaweiは依然として米国商務省の「エンティティリスト」に掲載されており、Windowsを搭載するには特別なライセンスが必要だ。しかし、これを継続的に取得することは難しく、Microsoftとの取引を続けることが困難になっている。

こうした状況を受け、Huaweiは独自OS「HarmonyOS」とLinuxベースのシステムを採用し、PC市場での新たな地位を確立することを目指している。2024年には「HarmonyOS NEXT」を発表し、既存のAndroidベースのアーキテクチャから完全に独立した新しいプラットフォームへ移行する方針を示した。これにより、WindowsやAndroidとの互換性を排除し、自社エコシステムの確立を目指す。

また、Huaweiは新たに「AI PC」の開発を進めており、自社開発のKunpeng CPUを搭載したモデルを準備している。このPCには、中国企業DeepSeekが開発した大規模言語モデル(LLM)が組み込まれる予定で、人工知能を活用した独自のアプリケーション環境を構築するとみられる。

さらに、Linuxベースの「MateBook D16 Linux Edition」も市場投入が予定されており、Windows環境に依存しない選択肢を提供しようとしている。

HarmonyOS NEXTの特徴と市場への影響

Huaweiが発表した「HarmonyOS NEXT」は、従来のHarmonyOSとは異なり、AndroidおよびWindowsアプリとの互換性を完全に排除する設計となっている。これまでのHarmonyOSは、Androidのオープンソースプロジェクト(AOSP)をベースにしていたが、HarmonyOS NEXTは独自のカスタムマイクロカーネルを採用し、Huawei独自の技術フレームワーク上で動作するものとなる。

アプリ開発においては、JavaScriptやTypeScriptなどのモダンなプログラミング言語に最適化されたコンパイラが採用され、より効率的なソフトウェア環境を実現する狙いがある。しかし、このアプローチは既存のWindowsアプリやAndroidアプリが利用できないことを意味し、ユーザーの受け入れが課題となる可能性がある。

一方で、Huaweiは2024年時点でHarmonyOS向けのアプリが1万本以上存在すると発表しており、独自エコシステムの拡充を進めている。特に中国市場では、政府機関や国営企業が独自OSの導入を推進しており、上海市政府もHarmonyOSの採用を進めている。この動きが広がれば、HarmonyOSは国内市場において一定のシェアを確保する可能性がある。

グローバル市場では、Windowsが支配的な地位を占めており、Huaweiが独自OSでどこまで競争力を持つことができるかは不透明だ。しかし、米国との対立が長期化する中で、中国市場を中心に独自のPCエコシステムを構築する戦略は、Huaweiにとって避けられない選択肢となっている。

米国制裁がもたらすHuaweiのPC事業への影響

HuaweiのPC事業は、米国の制裁によって大きな影響を受けている。特に、Windowsの利用が制限されることで、グローバル市場での競争力が低下する可能性がある。Windowsは依然として企業や一般消費者の間で圧倒的なシェアを持ち、これを完全に排除することは、ユーザーの移行ハードルを高める要因となる。

また、米国の制裁はハードウェア面でも影響を及ぼしている。Huaweiは米国企業との取引が制限されているため、IntelやAMDのプロセッサを調達することが難しくなっている。そのため、自社開発のKunpeng CPUや、中国企業と協力したチップセットの開発を進めているが、これがグローバル市場での競争力を維持できるかは不透明だ。

一方で、中国政府は国家レベルで独自技術の育成を進めており、Huaweiの取り組みを後押ししている。すでに多くの中国企業や政府機関がHuaweiの技術を採用しており、国内市場でのシェア拡大は比較的容易であると考えられる。ただし、国際市場においては、WindowsやMac OSとの競争が不可避であり、短期間での成功は難しいとみられる。

HuaweiがWindows依存から脱却することで、新たな技術基盤の構築を進めることは、長期的には中国の独自技術発展に寄与する可能性がある。しかし、短期的にはユーザーの移行を促進するための戦略が不可欠であり、HarmonyOSやLinuxの普及が鍵を握ることになりそうだ。

Source:TechSpot