OpenAIは、ChatGPTをSlackおよびGoogle Driveと接続する新機能のテストを開始する。これにより、ユーザーはAIを通じて業務ツール内のデータを直接参照し、業務効率を高めることが可能になると期待される。

一方で、Adobe Analyticsの最新調査によれば、生成AI経由のオンライントラフィックが急増している。2024年7月から2025年2月にかけて、小売サイトでは1200%、旅行・レジャー関連サイトでは1700%、銀行サイトでは1200%の増加が報告された。特にGenAIユーザーは、他の訪問者に比べて滞在時間が長く、ページ閲覧数も多いことが確認されている。

しかし、AI経由の訪問者の購買転換率は他のチャネルと比較して依然低く、2024年7月時点で43%あったコンバージョンギャップは、直近では9%まで縮小している。AIが消費者の購買行動に与える影響は進化を続けており、特に小売業界における役割は今後さらに拡大していくと考えられる。

OpenAIが推し進める業務効率化 ChatGPTのSlack・Google Drive連携の狙い

OpenAIは、ChatGPTをSlackやGoogle Driveと連携させる機能のテストを開始する。これにより、ユーザーはAIを活用して業務ツールのデータに容易にアクセスできるようになり、業務効率の向上が期待される。特に、Slack内の会話履歴やGoogle Driveに保存された文書を瞬時に検索・要約できる機能は、情報収集や意思決定の迅速化に寄与するだろう。

この取り組みは、AIの実用性を企業向けに高める戦略の一環と考えられる。MicrosoftはすでにCopilotをOffice製品に組み込み、GoogleもGeminiをWorkspaceに統合している。OpenAIの今回の試みは、こうした競争の中で市場の影響力を強める狙いがあるとみられる。企業における生成AIの導入は急速に進んでおり、今後も各社の動向が注目される。

一方で、セキュリティやプライバシーの観点から慎重な対応が求められる。企業の機密情報がAIの学習データとして不適切に利用されるリスクが指摘されており、導入には十分な管理体制が必要となる。AIと業務ツールの統合が加速する中、各社がどのように安全性を確保しながら活用を進めるかが鍵となる。

生成AI経由のトラフィックが急増 小売・旅行・銀行業界に与える影響

Adobe Analyticsの最新データによれば、生成AIを経由したウェブサイトへのトラフィックが急増している。2024年7月から2025年2月にかけて、小売サイトでは1200%、旅行・レジャー関連サイトでは1700%、銀行サイトでも1200%の増加が報告された。生成AIを活用した検索が消費者のオンライン行動に大きな影響を与えていることが明らかになった。

特に、ChatGPTのようなAIを通じて商品検索を行う消費者は、通常の訪問者よりも8%長くサイトに滞在し、12%多くのページを閲覧する傾向がある。

これは、生成AIがユーザーに適した情報を提示し、より詳細な検討を促しているためと考えられる。一方で、AIを経由した訪問者の購買転換率は他のチャネルと比較すると依然低く、2024年7月時点で43%あったコンバージョンギャップは、直近では9%まで縮小した。

このデータは、生成AIが消費者の購買プロセスに組み込まれつつあることを示唆している。特に小売業界においては、AIによるパーソナライズドな商品推奨が重要な戦略となるだろう。また、旅行業界においても、従来は複数のウェブサイトを比較しながら選択していたフライトや宿泊施設の検索が、AIの活用によって迅速化されている。今後、消費者がAIを利用して購入決定を行う流れが加速する可能性がある。

生成AIは「リサーチツール」から「購買支援ツール」へ進化するのか

PYMNTSの調査では、2023年12月時点で消費者の44%が、購入決定前の情報収集手段としてチャットボットを活用することに前向きであると回答している。現時点では、生成AIは主にリサーチ段階で使用されているが、購買行動への影響力を強めつつある。

Forterのリスク責任者であるDoriel Abrahams氏によると、生成AIは「推奨機能、価格比較、購入支援を提供することで、コマースの基本を変革している」という。特に旅行業界では、消費者がすべてのフライト情報を手動で比較する手間を省き、AIが瞬時に最適な選択肢を提示することで利便性が大幅に向上している。こうした動向は、小売や銀行業界にも波及していく可能性がある。

今後、AIは単なる検索エンジンの代替ではなく、より積極的な購買支援ツールへと進化する可能性がある。例えば、個々の購買履歴や嗜好を分析し、ユーザーに最適な選択肢を提示する機能が強化されれば、消費者はAIを通じてよりスムーズに購入を決定できるだろう。

ただし、そのためには、AIがどこまでパーソナライズされた情報を提供できるか、そして消費者がその精度をどれだけ信頼するかが鍵となる。企業側にとっては、AIの提案が単なる情報提供にとどまらず、購買行動の決定的要因となるような仕組みを構築することが求められる。

Source:PYMNTS