仮想通貨投資商品の資金流出が過去最悪の規模に達した。CoinSharesの最新報告によると、2月7日以降、ビットコインやイーサリアムを含む上場投資商品(ETP)から64億ドル(約9,800億円)が流出。このうち、先週だけでビットコインファンドは9億7,800万ドル(約1,500億円)の資金を失い、価格は一時4カ月ぶりの安値となる77,000ドルまで下落した。

背景には、ドナルド・トランプ前大統領の関税政策が引き起こした貿易摩擦とインフレ懸念がある。米国の消費者心理は2022年11月以来の最低水準に落ち込み、リスク資産への影響が拡大。市場の不安定化により、仮想通貨市場の資金流出が加速している。

ただし、FRBの利下げ観測が強まれば、仮想通貨市場の反発材料となる可能性も指摘されている。CoinSharesのリサーチ責任者は、資金流出が減速し始める兆しがあると分析し、底打ちが近い可能性を示唆した。今後のFRBの金融政策が、仮想通貨市場の動向を左右することになりそうだ。

仮想通貨ファンドの歴史的資金流出 5週連続で加速

仮想通貨市場における投資商品の資金流出が、過去に例を見ない規模に達している。CoinSharesの最新の報告によれば、2月7日以降の5週間で、ビットコインやイーサリアムを含む上場投資商品(ETP)からの総流出額は64億ドル(約9,800億円)に上った。特にビットコインファンドは厳しい状況に直面しており、直近1週間だけで9億7,800万ドル(約1,500億円)の資金が市場から引き揚げられた。

資金流出の影響は価格にも現れている。ビットコインは一時77,000ドルまで下落し、4カ月ぶりの安値を記録した。その後83,000ドルまで回復したものの、市場の不安定な動きは続いている。CoinSharesのリサーチ責任者ジェームズ・バターフィル氏は、「資金流出のペースは鈍化しつつある可能性があるが、確実とは言えない」と指摘。市場の心理が依然として慎重な状況が続いていることを示唆した。

この異例の資金流出は、投資家心理の冷え込みとリスク回避の傾向を浮き彫りにしている。Fear and Greed Index(恐怖と貪欲指数)は、先週「極度の恐怖」ゾーン(指数値20)まで低下していたが、週明けには「恐怖」ゾーン(指数値32)まで回復。しかし、不安定な市場環境の中で投資家の動向がどのように変化するかは依然として不透明である。

トランプ前大統領の関税政策が与えた影響

仮想通貨市場の急激な資金流出には、ドナルド・トランプ前大統領の関税政策が大きく関与している可能性がある。トランプ前政権時代に導入された貿易関税政策が再び注目を集め、これがインフレ圧力を高める要因となっている。最近発表されたミシガン大学の消費者心理調査によると、米国の消費者心理は2022年11月以来の最低水準に落ち込み、経済の先行きに対する懸念が強まっている。

貿易摩擦が長期化することで、インフレ懸念が再燃し、金融市場はリスク回避姿勢を強めている。特にリスク資産である仮想通貨は、投資家が慎重になる局面では大きく売られる傾向にある。これにより、機関投資家を中心に仮想通貨ファンドからの資金流出が加速している状況だ。

一方で、フランス銀行の総裁であり欧州中央銀行(ECB)の政策理事会メンバーであるフランソワ・ヴィルロワ・ド・ガロー氏は、「トランプ政権の暗号資産推進政策は、金融危機の種をまいている」と警告している。彼は特に、ノンバンク金融と暗号資産の急速な発展が金融市場の安定性を損なうリスクを指摘。規制の強化が求められる可能性がある。

米国の金融政策において、FRBは今後の利上げ・利下げの方針を慎重に見極める必要がある。特に、仮想通貨市場が金融市場とより密接に連動する中で、政策の変更がどのような影響を及ぼすか注視する必要があるだろう。

FRBの金融政策と今後の仮想通貨市場の展望

市場の不安定さが続く中、FRBの金融政策は仮想通貨市場にとって重要な要素となる。先週発表された消費者物価指数(CPI)は、インフレ圧力の低下を示唆する内容だったが、FRBが重視する個人消費支出(PCE)指数の最新データは、今週木曜日の金融政策会合後まで発表されない予定だ。

現在、FRBが利上げ・利下げの判断を保留し、現状維持の姿勢を取る可能性が高いと見られている。しかし、米国の消費者心理の低迷が続けば、FRBは金融緩和へとシフトすることも考えられる。借入コストの低下は、株式市場やリスク資産への投資を促し、結果的に仮想通貨市場にも好影響を与える可能性がある。

一方、金融市場の不透明感が続く限り、仮想通貨のボラティリティは高止まりする可能性がある。市場の動向は、FRBの金融政策や国際的な経済状況に強く依存するため、慎重な投資判断が求められる。

仮想通貨市場は、過去にも急激な下落と回復を繰り返してきたが、今回は世界経済全体の動向がより複雑に絡み合っている。短期的な市場の動きに一喜一憂するのではなく、長期的な視点での分析と戦略が今後ますます重要となるだろう。

Source:Decrypt