中国のGMKTecが、新型ミニPC「EVO-X2」を発表した。本機は世界初のRyzen AI Max+ 395プロセッサー搭載モデルとされ、AMD中国チャネルサミットにて披露された。イベントにはAMDのCEOリサ・スー氏やシニア・バイス・プレジデントのジャック・フイン氏も出席し、AMDの次世代APU「Strix Halo」を市場に投入する戦略の一端が示された。
EVO-X2の詳細スペックは依然不明だが、搭載プロセッサーの性能はDeepSeek R1ベンチマークでデスクトップ向けRTX 5080 GPUの3倍を超えるとされており、その実力に関心が集まっている。ポート構成も豊富で、ThunderboltやHDMI、DisplayPortを備えた拡張性の高さが特徴だ。
また、GMKTecはリサ・スー氏の直筆サイン入りEVO-X2を入手したとみられ、限定モデル「サイン入り特別版」の存在が示唆されている。競争が激化するミニPC市場でEVO-X2が先行者利益を得られるか、市場投入の時期と価格が鍵となる。
AMD Ryzen AI Max+ 395を搭載するEVO-X2 その性能と市場への影響

GMKTecのEVO-X2は、AMDの最新APUであるRyzen AI Max+ 395を搭載する世界初のAIミニPCとして発表された。このプロセッサーは、16コア32スレッドのZen 5アーキテクチャを採用し、最大5.1GHzで動作する高性能CPUを備える。加えて、RDNA 3.5アーキテクチャを基盤としたRadeon 8060S iGPUを内蔵し、40基のコンピュートユニット(CU)を搭載している。
注目すべきは、AMDの最新NPUであるXDNA2を統合している点であり、50 TOPS(兆回/秒)の処理能力を誇る。この性能により、AI推論や映像処理、クリエイティブ用途において、従来の統合型GPUとは一線を画す処理能力を発揮する可能性がある。特にDeepSeek R1ベンチマークにおいて、EVO-X2の処理性能がデスクトップ向けRTX 5080 GPUの3倍以上とされている点は驚異的である。
一方で、EVO-X2の詳細なハードウェア仕様は依然として公表されておらず、メモリ容量やストレージ構成については不明な点が多い。しかし、最大128GBのLPDDR5X-8533メモリ(256ビットバス幅)に対応する可能性があることから、エッジAIやデータ処理などの高度な用途にも十分耐えうる設計と考えられる。市場においては、ASUS ROG Flow Z13やHP Z2 Mini G1aといった製品と競合することが予想され、発売時期と価格設定が重要な要素となるだろう。
AMDリサ・スーのサイン入り特別版が示唆するGMKTecの戦略
GMKTecは、EVO-X2にAMDのCEOリサ・スー氏の直筆サインが入った特別版を用意している可能性を示唆している。サミットの場でリサ・スー氏のサイン入りモデルを確保したとされることから、GMKTecがAMDとの密接な協力関係を構築していることがうかがえる。このような特別モデルの存在は、GMKTecのブランド価値向上に寄与すると同時に、熱心なAMDファンやテクノロジー愛好家に対して強い訴求力を持つ可能性がある。
AMDはこれまで、大手PCメーカー向けにチップ供給を行うことが中心であり、小規模メーカーとの連携は比較的限定的だった。しかし、GMKTecのEVO-X2が「世界初のRyzen AI Max+ 395搭載ミニPC」として発表され、AMD幹部が直接関与したことは、この関係性が変化しつつあることを示唆している。特に、Strix Halo APUは次世代の統合型プロセッサーとしての重要性が高く、AMDとしてもその普及を加速させたい狙いがあるのかもしれない。
また、サイン入り特別版の存在は、数量限定のコレクターズアイテムとしての価値を持つ可能性がある。これがプロモーション戦略の一環であるならば、GMKTecはEVO-X2の販売促進において、AMDブランドの権威性を最大限に活用していると考えられる。ただし、特別版が一般販売されるか、またはAMD関係者やイベント参加者向けの非売品であるかは明らかではない。これらの点は、今後GMKTecからの正式な発表を待つ必要があるだろう。
EVO-X2の競争優位性とミニPC市場における今後の展望
EVO-X2が競争優位性を確立するには、他のミニPCとの比較において明確な差別化要素が必要となる。まず、Ryzen AI Max+ 395の圧倒的な計算能力は、特にAI処理やクリエイティブ用途での活用に適しており、競合製品が追随するまでの間、市場での先行者利益を得られる可能性がある。しかし、性能の高さだけではなく、価格設定が大きな鍵となる。AMDの最新プロセッサーを搭載することから、コストが上昇する可能性は高く、ミニPC市場における価格競争をどのようにクリアするかが問われるだろう。
競合製品としては、ASUS ROG Flow Z13やHP Z2 Mini G1a、Framework Desktopなどが挙げられる。これらはすでに市場投入が予定されており、特にHP Z2 Mini G1aは2024年春の発売が控えている。EVO-X2が先行して市場投入されれば、新世代APUをいち早く体験できる製品として注目を集めるだろうが、その実力が期待通りであるかどうかは、実際のパフォーマンスや消費電力のバランスによって評価が分かれる可能性もある。
また、EVO-X2はポートの豊富さでも他のミニPCと異なる特徴を持つ。前面にはSDカードリーダー、Thunderbolt(USB Type-C)、USB Type-A×2、ヘッドセットジャックが備えられ、背面にはHDMI、DisplayPort、LANポートなどが搭載される。これにより、ゲーミングやクリエイティブワーク、エンタープライズ用途まで幅広いニーズに応えることが可能となる。今後、GMKTecがどの市場をターゲットにするのか、価格と供給体制がどのように展開されるのかが、製品の成功を左右する要因となるだろう。
Source:Tom’s Hardware