ASUSは、Ryzen 9000シリーズCPUおよびAMD 800シリーズマザーボード向けに、新機能「AI Cache Boost」を発表した。この技術によりInfinity Fabric Clock(FCLK)が2.0GHzから2.1GHzにオーバークロックされ、AI処理における性能向上が期待される。

同社のテストによると、RTX 5090を用いたGeekbench AIテストで4~8%、RTX 4090では最大7.57%のパフォーマンス向上を確認。特にUL Procyon AI Computer Vision Benchmarkでは、Ryzen 7 9800X3Dにおいて12.75%の性能向上が記録された。

さらに、AI Cache BoostとTurbo Game Modeを組み合わせることで、最大19.35%のパフォーマンス向上が可能とされる。ASUSは、この機能がAIワークロードや大規模データ処理の最適化に貢献するとしており、今後の活用が注目される。


ASUS AI Cache Boostの技術的詳細と性能向上のメカニズム

ASUSが発表したAI Cache Boostは、Ryzen 9000シリーズCPUとAMD 800シリーズマザーボードに特化した新機能である。この技術の要となるのはInfinity Fabric Clock(FCLK)の向上であり、従来の2.0GHzから2.1GHzへオーバークロックすることで、CPUとメモリ間のデータ転送を高速化する。これにより、特にAI処理やデータ負荷の高いタスクにおいて顕著なパフォーマンス向上が期待される。

ASUSによる検証では、AI Cache Boostの適用により、Geekbench AIテストにおいてRTX 5090環境では4~8%、RTX 4090環境では最大7.57%の性能向上を記録した。さらに、UL Procyon AI Computer Vision Benchmarkでは、Ryzen 7 9800X3DとRTX 4090の組み合わせで、12.75%ものパフォーマンス向上が確認された。この結果は、特にシングルCCD構成のCPUにおいて、FCLKの向上が大きな効果をもたらすことを示唆している。

この技術は、GPU、CPU、I/Oダイ、DRAM間のボトルネックを解消することを目的としており、ASUSは大規模言語モデル(LLM)を活用するユーザー層にも着目している。GPU中心のAI処理においても、CPUのデータ転送効率がボトルネックとなる場合があり、AI Cache Boostの導入により、より最適化された環境を提供する狙いがある。

ゲームパフォーマンスへの影響とTurbo Game Modeとの併用

ASUSは、AI Cache Boostがゲームのフレームレートや安定性に悪影響を及ぼさないと説明している。むしろ、ゲーム用に特化した「Turbo Game Mode」との併用が可能であり、特定の環境下ではさらなるパフォーマンス向上を実現するとしている。Turbo Game Modeは、Ryzen 9000シリーズのデュアルCCD構成CPUに対し、SMT(同時マルチスレッディング)と1つのCCDを無効化することで、ゲーミング時のレイテンシを最適化する技術である。

ASUSのテストによれば、AI Cache BoostとTurbo Game Modeを併用することで、UL Procyon AI Computer Vision Benchmarkにおいて最大19.35%のパフォーマンス向上が記録された。例えば、Ryzen 9 9950X3DとRTX 4090の組み合わせでは、AI Cache Boost適用前のスコア14,261が14,485に向上し、さらにTurbo Game Modeの有効化により17,020まで引き上げられた。

ただし、ゲーム用途においてはFCLKの設定を手動で調整することが推奨されている。特に安定性を重視するユーザーは、FCLKの変更による影響を慎重に見極める必要がある。また、AI Cache Boostが恩恵をもたらすのはAI処理やデータ転送の最適化が求められるケースであり、すべてのゲームタイトルで一律に有利になるとは限らない。

AI Cache Boostの導入が示唆する今後のCPU設計の方向性

ASUSのAI Cache Boostは、単なるオーバークロック機能ではなく、CPUとメモリ間のデータ転送最適化にフォーカスした技術である。この点は、今後のCPU設計においても重要な指針となる可能性がある。特にAIワークロードやデータ解析向けの最適化技術が進化する中で、CPUとメモリ間の帯域幅拡張が一層求められると考えられる。

近年、AI処理はGPUに依存する傾向が強まっているが、CPUのメモリアクセス性能も依然として重要な要素である。大規模データの処理や複雑なAIモデルの実行においては、CPUがボトルネックになることがあり、その最適化が求められる。ASUSが今回の技術で着目したのは、こうした課題へのアプローチであり、今後のプロセッサ設計にも影響を及ぼす可能性がある。

また、AI Cache Boostのような機能がハードウェアレベルで標準化されれば、AI処理だけでなく、リアルタイムレンダリングやクラウドコンピューティングの分野でも新たな最適化が期待できる。現時点ではRyzen 9000シリーズとAMD 800シリーズマザーボードに限定されているが、将来的にはより広範なシステムへの適用が検討される可能性もある。

Source:VideoCardz.com