Samsung Foundryが計画していた1.4nmノードの開発が延期される可能性があると報じられている。これにより、同社はTSMCとの技術競争でさらに後れを取ることになりかねない。
3nm GAAプロセスの歩留まり問題により、Samsungは最新のGalaxy S25シリーズに自社製チップExynos 2500を搭載できず、Qualcomm製Snapdragon 8 Eliteに全面移行を余儀なくされた。さらに、2nmプロセスの試験歩留まりも依然としてTSMCに劣り、技術面・市場面での厳しい現状が浮き彫りになっている。
Samsungファウンドリーの1.4nm開発延期が意味するもの

Samsung Foundryは、これまで2027年までに1.4nmプロセスの実用化を目指していた。しかし、最新の報道によると、同社はこの計画を後回しにする可能性があるという。背景には、3nm GAAプロセスの低歩留まりによるコスト増加や、2nmノードの進捗の遅れがあると考えられている。
現在、Samsungの2nmプロセスの試験歩留まりは約30%とされており、TSMCの60%と比較すると大きな開きがある。これにより、顧客からの受注獲得が難航しており、特に高性能チップの分野ではTSMCに対する競争力を維持することが困難になっている。結果として、Samsungは先端ノードの開発計画を見直し、まずは既存プロセスの改善に注力することを優先する可能性が高い。
この動きは、単なる技術戦略の変更ではなく、Samsungのファウンドリー事業全体に影響を及ぼす可能性がある。特に、3nmや2nmプロセスの安定化が遅れることで、将来的にAppleやNVIDIAといった大手企業からの受注を逃すリスクが高まる。Samsungがどのようにこの課題を克服するかが、今後の業界動向を左右しそうだ。
歩留まり改善が急務 SamsungはTSMCとの差を縮められるのか
Samsung Foundryが直面している最大の課題は、先端ノードの歩留まり向上である。特に、3nm GAAプロセスでは期待されていた性能向上が十分に得られておらず、製造コストがかさんでいる。これが原因で、Galaxy S25シリーズ向けのExynos 2500の供給が間に合わず、SamsungはQualcommのSnapdragon 8 Eliteを採用せざるを得なかった。
一方、TSMCは2nmノードの試験歩留まりをすでに60%にまで引き上げており、AppleやAMDなどの主要顧客に対して安定した供給体制を確立しつつある。これに対し、Samsungの2nmプロセスは試験段階で30%にとどまり、量産に向けた課題が山積している。こうした状況では、新規顧客の獲得はもちろん、既存顧客の維持すら難しくなるだろう。
Samsungがこの状況を打破するには、まず3nmと2nmプロセスの歩留まりを大幅に改善する必要がある。また、Samsungは独自のGAA(Gate-All-Around)技術を採用しており、これがTSMCのFinFET技術と比べてどこまで競争力を持つかが問われる。もし歩留まりが向上し、コスト競争力が確保できれば、Samsungは再び市場での存在感を強めることができるだろう。
ファウンドリー事業の投資削減がもたらす影響
Samsungは、これまで米国や韓国に新たな半導体製造施設を建設する計画を進めてきた。しかし、先端ノードの開発が遅れる中で、同社は設備投資を縮小する可能性があると報じられている。特に、5nmや7nmといったレガシーノードの需要も低下しており、半導体市場全体の状況がSamsungの戦略に影響を与えている。
ファウンドリー事業の投資削減は、Samsungの競争力低下につながる可能性がある。TSMCがすでに次世代ノードの開発に向けて積極的な投資を続けているのに対し、Samsungが設備投資を縮小すれば、技術的な遅れをさらに拡大させることになりかねない。特に、AI向けの高性能チップや自動車向け半導体の分野では、技術革新が急速に進んでおり、投資を減らすことが長期的な成長の足かせになる可能性がある。
また、Samsungのファウンドリー事業は、同社の半導体ビジネス全体の中でも重要な位置を占めており、ここでの戦略変更はメモリ事業など他の部門にも影響を及ぼす可能性がある。もし1.4nmノードの開発が本当に延期されるなら、Samsungがどのようにリソースを再配分し、どの市場で戦っていくのかが今後の焦点となるだろう。
Source:SamMobile