Qualcommは2025年のゲーム開発者会議(GDC 2025)において、ハンドヘルドゲーム機向けの最新チップ「Snapdragon Gシリーズ」を発表した。最上位モデルのSnapdragon G3 Gen 3は、リアルタイムのレイトレーシングやWi-Fi 7に対応し、前世代比でCPU性能30%、GPU性能28%向上。Unreal Engine 5のLumenライティングシステムもサポートし、モバイルゲームのグラフィック品質を飛躍的に向上させる。

また、クラウドゲーム市場をターゲットとしたSnapdragon G2 Gen 2とエントリーモデルのSnapdragon G1 Gen 2も発表。G2 Gen 2は前世代比でCPU性能2.3倍、GPU性能3.8倍に強化され、Wi-Fi 7にも対応。一方、G1 Gen 2はFHD+解像度と144Hzリフレッシュレートに対応し、クラウドゲーム専用機向けに最適化されている。

これらの最新チップを搭載したハンドヘルドゲーム機は2025年第1四半期末までに登場予定であり、Ayaneo、Onexsugar、Retroid Pocketなどのメーカーが採用を発表している。新たなSnapdragon Gシリーズが、携帯型ゲーム機市場にどのような変革をもたらすのか、今後の展開が注目される。

Snapdragon G3 Gen 3がもたらすグラフィックの進化

Qualcommが発表したSnapdragon G3 Gen 3は、モバイルゲームのビジュアル品質を大きく向上させる技術を搭載している。最も注目すべきは、リアルタイムのレイトレーシング機能とUnreal Engine 5のLumenライティングシステムへの対応だ。これにより、従来のモバイルゲームでは難しかったリアルな光の表現や反射、影の精細さが向上し、より没入感のあるゲーム体験が可能となる。さらに、QHD+解像度と144Hzリフレッシュレートをサポートすることで、高精細かつ滑らかな映像描写を実現する。

また、Snapdragon G3 Gen 3は、前世代のG3x Gen 2と比較してCPU性能が30%、GPU性能が28%向上している。これにより、グラフィックの処理速度が速くなり、複雑なシーンでもフレームレートが安定する。加えて、Wi-Fi 7の対応により、オンラインマルチプレイ時の遅延が低減され、ストリーミングプレイの快適性が向上することも期待される。

モバイルゲーム市場において、これまでPCや家庭用ゲーム機でしか実現できなかった高度なグラフィック技術が、携帯型デバイスにも搭載される流れが加速している。Snapdragon G3 Gen 3は、このトレンドを牽引する重要なチップであり、特にハイエンドゲーム機向け市場の競争を激化させる可能性がある。

クラウドゲーム市場を見据えたSnapdragon G2 Gen 2とG1 Gen 2の戦略

Snapdragon G3 Gen 3がハイエンドユーザー向けのゲーム体験を強化する一方で、Qualcommはクラウドゲーム市場を強く意識したチップセットとしてSnapdragon G2 Gen 2とG1 Gen 2を発表した。G2 Gen 2は、前世代比でCPU性能が2.3倍、GPU性能が3.8倍に向上しており、QHD+解像度と144Hzリフレッシュレートに対応することで、クラウドゲーム向けデバイスの性能を大幅に強化している。また、Wi-Fi 7とBluetooth 5.3に対応しており、ストリーミングプレイの安定性が向上する。

一方、G1 Gen 2はエントリーモデルとして設計されており、FHD+解像度と144Hzリフレッシュレートをサポート。クラウドゲーム向けデバイスに特化しており、処理能力を抑えながらも安定した動作環境を提供する。Wi-Fi 6/6EとBluetooth 5に対応することで、ストリーミング時の通信品質を確保し、コストパフォーマンスに優れた選択肢となる。

クラウドゲームは、デバイスの性能に依存せず、安定した通信環境さえあれば高品質なゲーム体験を提供できる点が強みである。QualcommがSnapdragon G2 Gen 2とG1 Gen 2を発表した背景には、今後のクラウドゲーム市場の成長を見据え、低コストで快適にゲームを楽しめる環境を整備する狙いがあると考えられる。これにより、ハードウェアスペックの違いを超えた新たなゲーム市場の拡大が期待される。

Snapdragon Gシリーズがもたらす携帯型ゲーム機市場の変革

Snapdragon Gシリーズの最新チップセットを搭載したデバイスは、2025年第1四半期末までに市場に投入される予定だ。すでにAyaneo、Onexsugar、Retroid Pocketといったメーカーが採用を発表しており、これまでPCや据え置き型ゲーム機が主流だった高性能ゲーム市場に、新たな競争環境が生まれる可能性がある。特に、Snapdragon G3 Gen 3の登場により、携帯型ゲーム機で家庭用ゲーム機並みのグラフィック体験が実現できることが市場に与える影響は大きい。

また、Snapdragon G2 Gen 2とG1 Gen 2がクラウドゲームを強く意識した設計となっていることから、5GやWi-Fi 7の普及とともに、クラウドゲーム専用デバイスの需要も高まることが予測される。これにより、ハードウェアの性能に依存しないゲーム体験が一般化し、コンソール型ゲーム機市場との境界線が曖昧になっていく可能性がある。

モバイルゲーム市場は近年、スマートフォンの性能向上やクラウドゲームの台頭により、急速に進化を遂げている。QualcommのSnapdragon Gシリーズは、この変革をさらに加速させ、携帯型ゲーム機市場の在り方を大きく変える契機となるかもしれない。メーカー各社がどのような製品を投入し、どのようなゲーム体験を提供するのか、今後の動向が注目される。

Source:TechSpot