テスラ(NASDAQ: TSLA)の株価は2024年12月のピーク以降、50%以上下落し、時価総額は7,000億ドル(約105兆円)減少した。この急落により、CEOのイーロン・マスクの資産も1,000億ドル以上減少するなど、大きな影響が出ている。一方、この暴落を利用した空売り投資家は、160億ドル(約2.4兆円)の利益を上げたとFinancial Timesのデータが示している。

テスラ株の下落要因は多岐にわたる。マスクの政治的発言への反発が広がり、特にヨーロッパ市場で販売減少の懸念が強まっている。また、中国のBYDを筆頭にEV市場の競争が激化し、テスラのシェアが脅かされている。さらに、トランプ政権の関税政策が影響し、カナダではテスラ車に100%の関税が課される可能性が指摘されている。

このような背景の中、空売り残高は過去1か月で16.3%増加し、約7,150万株が空売りされている。3月18日の市場開始前にはテスラ株はさらに3.6%下落し、229ドルに到達。RBCキャピタルは目標株価を440ドルから320ドルへ引き下げたものの、依然として上昇余地があると見ている。一方で、テスラのAI・自動運転技術の成長余地を評価する声もあり、市場の見方は分かれている。


テスラの株価急落がもたらした市場への影響

テスラ(NASDAQ: TSLA)の株価は2024年12月のピーク以降、50%以上下落し、時価総額が7,000億ドル(約105兆円)減少した。この急落は投資家のセンチメントを大きく揺るがし、特に長期保有者にとっては深刻な打撃となっている。同時に、CEOのイーロン・マスクの資産も1,000億ドル以上減少しており、その影響は個人の資産動向にも及んでいる。

この株価の下落は、単なる一時的な市場変動ではなく、複数の要因が絡み合った結果である。まず、マスクの政治的発言が市場に影響を与え、特にヨーロッパ市場におけるテスラ車の販売減少が懸念されている。また、EV市場における競争の激化も無視できない要素だ。中国のBYDを筆頭に、新興勢力が次々と市場に参入し、価格競争が激しさを増している。

さらに、米国の貿易政策がテスラに逆風となっている。トランプ政権の関税政策の影響により、カナダがテスラ車に100%の関税を課す可能性が浮上しており、これが北米市場の販売に打撃を与えるとみられている。このように、政治的、経済的な要因が複雑に絡み合う中で、テスラの株価が今後どのように推移するかは依然として不透明である。

空売り投資家の巨額利益とテスラ株の今後

テスラの急落により、空売り投資家は160億ドル(約2.4兆円)の利益を得た。空売りとは、株価の下落を見越して株を借りて売却し、後に安値で買い戻すことで利益を上げる投資戦略である。特に2024年12月以降、テスラ株の空売り残高は16.3%増加し、現在7,150万株(発行済み株式の2.6%)が空売りされている。このデータからも、市場全体の弱気姿勢が明確に表れている。

このような状況を受け、ウォール街の投資機関もテスラ株の見通しを慎重に見極めている。RBCキャピタルのアナリスト、トム・ナラヤン氏は3月18日、テスラ株の目標株価を440ドルから320ドルに引き下げた。ただし、現在の株価229ドルと比較すれば、依然として36%の上昇余地があると指摘している。一方で、市場の弱気ムードが続けば、この予測通りの回復が実現するかどうかは不透明である。

一方、テスラの将来性については、異なる見方も存在する。投資ストラテジストのシェイ・バルール氏は、テスラが単なるEVメーカーではなく、AIと自動運転技術のリーダーとしての可能性を秘めていると指摘している。彼は2026年までにテスラの本当の価値が明らかになると見ており、短期的な株価の下落が長期的な成長を妨げるとは限らないと述べている。

テスラは危機か、それとも新たな成長の契機か

テスラ株の急落は多くの投資家にとって警鐘を鳴らす事態となったが、それが長期的な停滞を意味するのか、新たな成長の前兆なのかは意見が分かれている。現在、テスラはEV市場の競争激化や政治的な逆風にさらされているが、一方で、技術革新の面では依然として強みを持っている。

AIと自動運転技術の分野では、テスラは依然として業界の最前線を走っている。特に、自動運転ソフトウェア「FSD(Full Self-Driving)」の進化は、市場の評価を大きく左右する要素となり得る。また、エネルギー貯蔵事業やロボティクス事業など、新たな成長分野への進出も進めており、これらが将来的に業績を支える可能性がある。

ただし、短期的には市場環境の不安定さが続くと考えられる。投資家の心理は慎重な姿勢に傾いており、株価の回復には時間を要する可能性がある。特に、今後の決算発表や市場の動向が、テスラ株の行方を決定づける重要なポイントとなる。今後の市場動向を見極めながら、慎重に対応する必要があるだろう。

Source:Finbold