テスラ(NASDAQ: TSLA)の株価は、年初来41.81%の下落を記録し、直近では234.98ドルで推移している。RBCキャピタルのアナリスト、トム・ナラヤン氏は「買い」評価を維持しつつ、目標株価を従来の440ドルから320ドルへと引き下げた。
その背景には、テスラの完全自動運転(FSD)やロボタクシーの進展が期待を下回ったことがある。自動運転技術の競争が激化し、テスラの独自性が薄れる中、2024年には同社の販売台数が初めて減少。特にドイツ市場では70%以上の出荷減少が報告されており、成長鈍化への懸念が強まっている。
一方、イーロン・マスク氏は政治的活動を活発化させており、トランプ前大統領の支持を得る動きも見られる。これが株価に与える影響について、強気・弱気双方の投資家が注視している。テスラが今後、成長軌道を維持できるのか、技術革新を再加速できるのかが焦点となる。
RBCキャピタルが目標株価を320ドルへ引き下げた理由

RBCキャピタルのアナリスト、トム・ナラヤン氏は3月18日、テスラ(NASDAQ: TSLA)の目標株価を従来の440ドルから320ドルに引き下げた。しかし、「アウトパフォーム(買い)」の評価は維持されており、依然として36.18%の上昇余地があると見られている。目標株価の引き下げの背景には、完全自動運転(FSD)やロボタクシー事業の進展が市場の期待を下回っていることがある。
特に、自動運転技術をめぐる競争が激化し、他の自動車メーカーも独自の技術開発を進める中、テスラの優位性が低下している点が指摘されている。イーロン・マスク氏は以前からFSDの実用化を強調してきたが、現在の技術レベルは完全な自律走行には達していない。これにより、テスラの将来の収益源として期待されていたロボタクシー事業の成長性に疑問が生じている。
また、テスラの販売台数の減少も、投資家の懸念材料となっている。2024年には、同社の年間販売台数が初めて減少に転じる可能性が指摘されており、特にドイツ市場では出荷が70%以上落ち込んでいる。さらに、ドイツ国内の調査では90%以上の消費者が「テスラを購入しない」と回答しており、ブランドの市場受容性にも陰りが見えている。
こうした状況を踏まえ、ナラヤン氏はテスラの成長性に慎重な見方を示している。ただし、同氏は依然として同社の中長期的な競争力を認めており、「買い」評価を維持している点が特徴的だ。テスラが今後、技術革新や市場戦略の面でどのような対応を取るのかが、投資家の関心を集めている。
テスラの技術競争力と市場の変化
テスラは長年にわたり、自動運転技術の分野で他の自動車メーカーをリードしてきた。しかし、近年では競争が激化し、フォードやゼネラル・モーターズ(GM)、中国のBYDなども自律走行技術を加速させている。これにより、テスラが持つ技術的な優位性が相対的に薄れつつある。
特に、完全自動運転(FSD)に関しては、実用化の遅れが市場の失望を招いている。イーロン・マスク氏はかねてより「近い将来、完全自動運転が可能になる」と発言していたが、現在のFSDは依然としてドライバーの監視が必要なレベルにとどまっている。他のメーカーも同様の技術を開発しており、テスラ独自の競争力が損なわれるリスクが浮上している。
また、EV市場全体の成長鈍化も、テスラの収益に影響を与えている。欧州市場ではEVの普及が進んでいるものの、政府の補助金縮小やインフラ整備の遅れにより、成長のペースが鈍化している。ドイツ市場での販売不振は、その兆候のひとつといえる。こうした市場の変化に適応できなければ、テスラの成長戦略は再考を迫られる可能性がある。
それでも、テスラの強みは依然として存在する。同社は電池技術の開発に注力しており、今後の新技術次第では競争力を再び高める可能性がある。また、スーパーチャージャーネットワークの拡充など、他社にはないインフラ面での強みも依然として有効だ。今後、どのような新たな技術や戦略を打ち出せるかが、市場での競争力を左右することになる。
イーロン・マスク氏の政治的影響と投資家の懸念
最近のテスラ株の動きにおいて、イーロン・マスク氏の政治的活動も注目を集めている。同氏はドナルド・トランプ前大統領との関係を深めており、報道によればトランプ関連の団体に1億ドルの寄付を検討しているとされる。この動きが、TSLA株の評価にどのような影響を及ぼすのかが議論の的となっている。
マスク氏はこれまでも自由な発言を続けており、SNSを通じて政治的見解を表明することが多い。その影響力は大きく、特定の発言が市場に直接的な影響を与えることも少なくない。しかし、政治的な立場を明確にすることが、企業のブランド価値や消費者の支持にどのような影響を及ぼすかは未知数である。
ウェドブッシュのアナリスト、ダン・アイブス氏は、マスク氏の政治的活動がテスラの企業価値に及ぼす影響を懸念している。特に、政治的な対立が深まるアメリカにおいて、企業のスタンスが消費者の購買行動に影響を与えることは十分に考えられる。例えば、トランプ氏の支持層がテスラを支持する一方で、民主党寄りの消費者が同社から距離を置く可能性もある。
また、マスク氏の政治的関与が、政府の政策決定にどのような影響を与えるのかも注視されている。EV業界にとって補助金や規制の動向は重要な要素であり、政治的な動きが業界全体に波及する可能性もある。こうした不確実性が、投資家の心理に影響を及ぼし、TSLA株の評価に影響を与えていることは間違いない。
Source: Finbold