Intelが2025年の半導体市場で劇的な成長を遂げた。前年にはフィラデルフィア半導体指数で最低の成績を記録し、株価も60%下落するなど苦境にあったが、今年は年初来で30%の上昇を果たし、NvidiaやBroadcomを上回るパフォーマンスを示している。

この復活の要因として、新たな経営陣の就任や戦略的な事業再編が挙げられる。特に、元取締役のLip-Bu Tan氏がCEOに就任したことは、業務効率の改善に向けた大きな転換点となった。投資家はAIと半導体製造に焦点を当てた同社の新戦略に期待を寄せているが、同時に依然として大幅な赤字を抱えている点には懸念が残る。

市場のアナリスト評価は「ホールド(中立)」が多数を占める。Intelの株価は過去最安値から回復傾向にあるものの、競争の激化や財務上の課題が今後の成長を左右することになりそうだ。短期的なリスクを伴う一方で、長期的な視点では投資妙味のある銘柄として注目される。


Intelの急成長の背景 経営改革と市場環境の変化

Intelは2024年、フィラデルフィア半導体指数で最も低い成績を記録し、株価は60%もの下落に見舞われた。しかし、2025年に入り、経営改革と市場環境の変化を背景に、株価は年初来で約30%上昇し、半導体業界の中で最も好調な銘柄の一つとなっている。特に、NvidiaやBroadcomといった競合を上回る成長率を記録した点が注目に値する。

Intelの復活を支えた大きな要因の一つが、経営体制の転換である。2024年後半、同社は元取締役のLip-Bu Tan氏をCEOに迎えた。彼のリーダーシップのもと、業務の効率化やコスト削減が加速し、投資家の信頼を回復した。さらに、AI向けチップの開発や米国内での半導体製造強化といった戦略が、成長への期待を高めた。

市場環境の変化もIntelに追い風となった。米国政府は、半導体産業の国内回帰を推進し、大規模な補助金を投入している。これにより、台湾セミコンダクター(TSMC)やAMDといった競合企業に対抗するための資本が確保されつつある。ただし、Intelが長期的に競争力を維持できるかは不透明であり、投資家の慎重な判断が求められる状況は変わらない。

財務状況と株価評価 赤字を抱えた成長戦略のリスク

Intelの成長が注目される一方で、財務状況には依然として課題が多い。2024年第4四半期の決算では、1株当たり0.03ドルの損失を計上したが、市場予想の-0.04ドルを上回る結果となった。年間では188億ドルの赤字を記録しており、依然として収益回復には時間を要するとみられる。2024年の四半期決算でも、株価が低迷する要因となる大幅な赤字が続いた。

株価指標を見ても、Intelの評価は依然として慎重なものとなっている。売上高に対する株価比率(P/S)は1.96倍と、同業他社と比較して割安感があるが、これは市場が同社の収益性に懸念を抱いている証拠でもある。株価純資産倍率(P/B)は0.98倍と、成長株としては低水準にとどまり、株主資本利益率(ROE)も-3.27%と赤字が続く企業としてのリスクを示している。

ただし、Intelの長期的な成長を見込む投資家も一定数存在する。AI向け半導体市場が拡大する中で、Intelの技術力や生産能力が評価されれば、企業価値の回復につながる可能性がある。特に、国内製造の強化が進めば、台湾や中国への依存度を下げることができるため、地政学リスクの軽減というメリットも考えられる。とはいえ、短期的な収益改善が進まなければ、株価の上昇が一時的なものに終わるリスクは否定できない。

投資家の評価 Intel株は今買うべきか

Intel株に対する市場の評価は分かれている。アナリストのコンセンサス評価は「ホールド(中立)」となっており、慎重な姿勢が続いている。直近3カ月での評価スコアはわずかに上昇したものの、「強い買い」とするアナリストは1人のみで、「強い売り」とする評価も5人いることから、市場全体の見方は依然として慎重である。

目標株価のコンセンサスは24.43ドルと、現在の株価と比較して下落リスクを示唆するものとなっている。ただし、一部のアナリストはIntelの成長余地を評価しており、最高目標株価として62ドルを提示している。これは現在の株価から138%の上昇を意味するが、その達成には半導体市場の成長とIntelの再建計画の成功が不可欠となる。

Intelは2025年、半導体市場で劇的な成長を遂げたが、その裏には継続的な赤字や競争環境の激化といったリスクが横たわる。投資判断を下す上では、同社の事業戦略の進展や、AI向け半導体の市場動向、さらには米国政府の半導体政策の影響を慎重に見極める必要がある。長期的な成長の可能性を秘めた銘柄であることは間違いないが、短期的には高いリスクを伴う投資対象となる点を考慮すべきである。

Source: Barchart.com