米半導体大手Broadcom(NASDAQ:AVGO)が、NvidiaやAMDを上回る評価を受けている。背景には、AI半導体事業の力強い成長と明確な業績ガイダンスがある。最新の四半期決算では、AI向けASICチップの売上が前年比42%増となり、ソフトウェア事業の利益率も90%に達した。
特に注目されるのは、大手テクノロジー企業との協業によるASICチップ開発だ。AlphabetやMetaとの3nm AI ASIC契約を含め、カスタムチップ市場での優位性を確立しつつある。加えて、FundstratのTom Leeは4月2日からの米国市場回復を予測しており、Broadcomの株価にも追い風となる可能性がある。
一方、NvidiaやAMDは市場予測を上回る成長を示せず、株価は停滞傾向にある。Broadcomの戦略的な事業展開が、今後のAI半導体市場でどこまで競争力を発揮するのか注目される。
Broadcomの成長を支えるAI半導体事業の強み

Broadcom(NASDAQ:AVGO)は、AI半導体市場において独自の優位性を確立しつつある。特に、ASIC(特定用途向け集積回路)チップの開発力が競争力の源泉となっている。ASICは、特定の用途に最適化された半導体であり、汎用GPUと比較してコスト効率が高く、消費電力の削減にも寄与する。この分野でのBroadcomの実績は、NvidiaやAMDとの差別化要因となっている。
同社は、Alphabet(Google)やMetaといったテクノロジー大手と協力し、3nmプロセス技術を活用した最新のAI ASICチップを開発している。これにより、クラウド事業者向けの高性能・高効率なAI処理が可能となり、AIインフラの発展を支えている。また、BroadcomのAI半導体事業は急成長しており、2025年度第2四半期のAI関連売上は44億ドルに達する見込みで、前年比42%増という高い成長率を示している。
このような成長の背景には、ASIC市場が今後のAI半導体競争の中心になる可能性があることが挙げられる。NvidiaのGPU市場独占が続く中、カスタムチップを求める企業が増えており、BroadcomのようなASICメーカーへの需要が高まっている。特に、大手クラウドプロバイダーが独自のチップ開発を加速させる動きが進む中、Broadcomの技術力と実績は、今後の市場シェア拡大を後押しする要因となりそうだ。
Nvidia・AMDと異なるBroadcomの市場戦略
BroadcomはNvidiaやAMDとは異なる市場戦略を展開し、競争優位性を確立している。NvidiaやAMDは主に汎用GPUを強みとし、AI向けの計算処理能力の向上に注力してきた。一方、Broadcomは特定用途向けのASIC開発に重点を置き、企業ごとにカスタマイズされたAIチップの提供を強化している。これにより、顧客のニーズに合わせた高効率な半導体ソリューションを提供できる点が強みとなっている。
市場の評価もBroadcomの戦略を支持している。CNBCの番組でMoor InsightsのPatrick Moorheadは、「Broadcomは、NvidiaやAMDとは異なり、明確な業績ガイダンスを発表し、投資家の期待を大きく超えた」と指摘している。実際、同社の最新決算では、AI関連売上が急拡大し、フリーキャッシュフローは60億ドルに達するなど、安定した財務基盤を築いている。この堅実な成長は、NvidiaやAMDの株価が市場予測を超えられず停滞する中でも、Broadcomの評価を押し上げる要因となった。
加えて、Broadcomの強みはソフトウェア事業にも及ぶ。ソフトウェア部門の利益率は90%に達し、高収益体質を維持している。半導体とソフトウェアを組み合わせた統合戦略により、ハードウェア依存から脱却し、より安定した収益基盤を築いている点も特筆すべきだろう。こうしたBroadcomの独自戦略が、今後のAI半導体市場においてどのような影響を与えるのか注視される。
米国市場の回復とBroadcom株の行方
米国株式市場は、最近の関税政策の不透明感やAI関連銘柄の調整により乱高下している。しかし、FundstratのTom Leeは、4月2日以降の市場回復を予測しており、Broadcomの株価にも影響を与える可能性がある。
同氏は、「市場が52週高値から急落した際には、危機の織り込みが進んでいる証拠だ。現在、市場は景気後退を50%程度織り込んでいるが、FRBが金利を引き下げる環境にあるため、下落リスクは限定的だ」と述べている。さらに、中国や欧州、カナダ、メキシコといった地域の株式市場が米国市場を上回るパフォーマンスを示しており、関税交渉の進展が市場の追い風になるとの見方もある。
この流れの中で、Broadcomは市場全体の回復を受けてさらなる株価上昇の可能性を秘めている。同社のAI半導体事業の成長と、確固たる業績ガイダンスが市場の信頼を集めており、リスク回避の流れが弱まれば、再び資金が流入する可能性がある。AI関連銘柄の中で最も安定した成長を示しているBroadcomの動向は、今後の市場全体の方向性を示唆する指標にもなり得る。
Source:yahoo finance