NVIDIAのジェンスン・フアンCEOは、GTC基調講演で次世代製品のロードマップを発表し、ロボティクスや量子コンピューティング分野への進出を強調した。しかし、株価は講演後に3.4%下落。投資家は即時的な収益拡大を期待していたが、新たな収益源のサプライズはなく、市場の反応は冷ややかだった。

発表されたVera Rubinプラットフォームは2026年後半に登場予定で、既存のGrace Blackwell比で3.3倍の性能を誇るが、革新的な飛躍は2027年のVera Rubin Ultraまで待たねばならない。さらに2028年にはFeynmanが控えるが、いずれも短期的な売上拡大には結びつかないと分析されている。

技術革新のスピードを維持するNVIDIAは競争優位を確保しているが、市場は即時的な利益につながる新戦略を求めている。今回のGTCは将来性を示したものの、短期的な成長期待に応える内容ではなかった。

GTCでの発表内容と市場の反応

NVIDIAのジェンスン・フアンCEOは、GTC基調講演で次世代の技術ロードマップを示し、人工知能(AI)やロボティクス、量子コンピューティングへの取り組みを強調した。特に、2026年後半に登場予定の「Vera Rubin」は、従来のGrace Blackwellと比較して3.3倍の性能を持ち、続く2027年の「Vera Rubin Ultra」は14.4倍の計算能力を誇る。しかし、これらの技術は即時的な収益には直結しないと市場は判断した。

投資家が期待していたのは、NVIDIAの既存の収益基盤であるデータセンターやGPU事業の拡大に加え、新たな収益源の発表だった。しかし、GTCで示されたのは中長期的な技術ビジョンであり、短期的な利益成長を示すサプライズはなかった。このため、講演後にNVIDIAの株価は3.4%下落し、市場の期待との乖離が浮き彫りとなった。

また、Jefferiesのアナリスト、ブレイン・カーティスは「Rubinは2026年に段階的なアップデートに留まり、本格的な進化は2027年以降」と指摘。加えて、量子コンピューティングやロボティクス分野は将来的に重要だが、短期間での売上貢献は見込めないという見方が強い。GTCの発表はNVIDIAの技術力を示す場とはなったが、投資家の即時的な関心を引くには至らなかった。

NVIDIAの成長戦略と課題

NVIDIAはAIやHPC(高性能コンピューティング)分野において圧倒的な競争力を持ち、継続的な技術革新で市場をリードしている。今回のGTCで発表されたロードマップも、12~18カ月ごとの新製品投入という戦略に沿ったものだ。特に、今後登場予定のVera Rubinシリーズや、2028年に計画されている「Feynman」は、長期的な技術基盤を築くものとして注目される。しかし、この成長モデルにはいくつかの課題もある。

まず、AIやHPCの分野では競争が激化しており、AMDやIntelといった競合企業だけでなく、新興企業も市場に参入している。また、企業が求めるのは性能だけでなく、コスト削減や消費電力の最適化といった要素である。今回のGTCでは、NVIDIAの技術的な優位性は示されたものの、それが実際のコストメリットとしてどこまで反映されるかについては具体的な言及が少なかった。

さらに、投資家が注目するのは、NVIDIAがAI市場の拡大に伴いどこまで成長できるかという点である。AI向け半導体市場は今後も拡大すると予測されるが、規制や市場の成熟による成長鈍化の可能性も無視できない。今回の発表は将来の可能性を示すものではあったが、直近の収益や市場拡大に直結する情報が乏しく、市場の期待とのギャップを生んだと考えられる。

短期的な市場評価と長期的な展望

GTC後の株価下落は、市場が短期的な収益成長に対する明確な指針を求めていたことを反映している。NVIDIAはAI・ロボティクス・量子コンピューティングなど、長期的な成長分野への投資を進めているが、それらが収益に結びつくまでには時間がかかる。特に、量子コンピューティングは研究開発の段階にあり、実用化までには長期的な視点が必要だ。

一方で、NVIDIAの技術革新のスピードは競争力の要因となっている。Lopez Researchのマリベル・ロペス氏も「NVIDIAはたとえ開発の遅れがあっても、迅速に軌道修正し競争をリードしている」と指摘するように、同社の製品開発サイクルは業界内でも異例の速さを誇る。GTCで発表された製品群が市場に浸透すれば、中長期的にはNVIDIAの収益拡大につながる可能性がある。

結局のところ、短期的な株価の変動は投資家の期待と発表内容のズレによるものだが、長期的にはNVIDIAの技術戦略が評価されるかどうかにかかっている。今後、実際の市場で新技術がどのように展開されるかが、同社の成長を左右する重要な要素となる。

Source:marketwatch