テスラの株価が再び急落した。19日の取引で5%以上の下落を記録し、過去最高値からの下落幅は53%を超えた。中国市場での競争激化が背景にある。特にBYDが発表した「Super e-Platform」は、最大1,000kWの充電速度を実現し、わずか5分で約400kmの走行が可能となる技術だ。テスラの最速スーパーチャージャー(250kW)の4倍に相当し、充電時間の短縮でEV市場のゲームチェンジャーとなる可能性がある。

さらにXiaomiは、初のEV「SU7」の生産目標を35万台へ引き上げ、中国市場での影響力を拡大。Xpengも好調な業績を発表し、1~3月の売上高は前年同期比で300%以上の増加を見込む。競争環境が急速に変化する中、テスラの成長戦略は新たな局面を迎えている。

BYDの新充電技術がもたらすEV業界の転換点

BYDが発表した「Super e-Platform」は、EV市場における充電技術の新たな基準となる可能性がある。1,000kWの超高速充電により、わずか5分で約400kmの走行が可能となる。この充電速度はテスラのスーパーチャージャー(最大250kW)を大幅に上回り、従来のEVが抱えていた充電時間の長さという課題を克服する突破口となる。BYDはこの技術を搭載したEVの販売を来月から開始し、中国国内に4,000か所の超高出力充電ステーションを設置する計画だ。

この動きはEVの利便性を飛躍的に向上させるだけでなく、自動車業界全体に波及する影響も無視できない。充電時間の短縮はガソリン車との競争力を高め、EVの普及速度を加速させる要因となる。また、BYDの技術革新は他のEVメーカーにも大きな圧力を与えることになり、今後、充電インフラの拡充や技術開発競争が一層激化すると考えられる。

テスラにとって、この進展は競争環境のさらなる厳格化を意味する。これまで充電インフラの優位性を強調してきたが、BYDがそれを凌駕する技術を発表したことで、新たな差別化戦略が求められる。今後、テスラがBYDの技術にどう対応するのかが市場の注目点となる。

XiaomiとXPengの攻勢が中国EV市場を再編

XiaomiはEV事業の拡大を加速させている。スマートフォンで培った技術を生かし、独自のソフトウェア「HyperOS」を搭載したEV「SU7」を投入。このモデルはデザイン面でも注目されており、ポルシェ・タイカンとマクラーレンの要素を取り入れたスタイリングが特徴だ。さらに、Xiaomiは当初の30万台の生産計画を35万台に引き上げ、旺盛な需要に対応しようとしている。同社は今後、YU7という新たなSUVモデルの投入も予定しており、テスラの「モデルY」と直接競合する展開が見込まれる。

一方、XPengは2025年第1四半期の業績予測を発表し、売上高は最大15.7億元(約2.17億ドル)、販売台数は9万3,000台に達する見通しを示した。前年同期比で300%以上の成長を遂げるこの業績は、中国EV市場の成長の象徴といえる。また、フォルクスワーゲンとの提携を通じ、2026年にはVWブランドのEVを中国市場に投入する計画も進行中だ。

中国EV市場は、新興勢力の台頭によって急速に再編が進んでいる。かつてはテスラが圧倒的な存在感を示していたが、XiaomiやXPengといった企業が独自の技術と戦略でシェアを奪い取ろうとしている。今後は、各社の技術革新だけでなく、生産能力やサプライチェーンの確立が競争のカギを握ることになる。

テスラの戦略転換が不可避な状況

今回のBYD、Xiaomi、XPengの攻勢を受け、テスラは中国市場における競争戦略の見直しを迫られている。特に、BYDの新技術はテスラの充電インフラ戦略に大きな影響を与える可能性が高い。現在、テスラのスーパーチャージャーネットワークは広がっているが、充電速度においてBYDの技術に劣る点は否めない。テスラは既存のインフラをどう強化し、新たな技術革新を進めるかが課題となる。

また、中国市場における価格競争も激しさを増している。BYDやXiaomiは競争力のある価格設定で市場を拡大しており、テスラも価格引き下げや新モデルの投入といった施策を講じる必要がある。さらに、XPengがVWと提携するなど、競争の軸は技術開発だけでなく、国際的な提携や市場戦略にも広がっている。

テスラはこれまで、中国市場で強いブランド力を築いてきたが、それだけでは持続的な成長は保証されない。競争環境が変化する中、テスラがどのような戦略を打ち出すのかが、今後のEV市場全体の方向性を左右する重要な要素となる。

Source:yahoo finance