ジブラルタルを拠点とするXapo Bankが、ビットコインを担保にしたローンサービスを開始した。この新たな金融商品により、会員は最大100万ドルの融資を受けることが可能となる。ただし、英国およびオーストラリアの居住者は対象外となる。
本サービスの目的は、ビットコインの長期保有者が資産を売却することなく流動性を確保できるようにする点にある。従来、暗号資産を担保とした融資はDeFiを中心に展開されてきたが、Xapo Bankは中央集権型銀行として安定したサービスを提供することを強調している。
ビットコイン担保ローン市場は今後も成長が見込まれており、2030年には450億ドル規模に達すると推計されている。Xapoの新サービスは、既存の銀行システムと暗号資産の融合を加速させる可能性がある。
Xapo Bankのビットコイン担保ローンの仕組みと条件

Xapo Bankが導入したビットコイン担保ローンは、会員向けの限定サービスであり、最大100万ドルの融資を受けることができる。ただし、英国とオーストラリアの居住者は対象外となる。この融資は、ビットコインを担保として預け入れることで提供され、借り手は審査を受けた上で承認を得る必要がある。担保となるビットコインは、ローンが完済されるまで「金庫」に保管され、返済期間は最大1年間と定められている。
この仕組みの特徴は、ビットコインの長期保有者が売却せずに資産を活用できる点にある。ビットコインの価値が上昇すれば、ローンを返済しつつ、資産価値の増加も享受できる。一方、価格が下落した場合には、担保の清算リスクが伴う。従来の暗号資産担保ローンと異なり、Xapo Bankのサービスは中央集権型の銀行が提供する点が大きな違いとなる。このため、規制の枠組みの中で安定した運用が期待される。
また、同様のビットコイン担保ローンは、CoinbaseやMorpho Labsも提供していたが、2023年に一度終了している。その後、Coinbaseは分散型金融(DeFi)を活用した新たな形態の融資サービスを開始しており、Xapo Bankとの大きな違いは、中央集権型か分散型かという点にある。Xapo Bankのサービスは、従来の金融機関の枠組みに則りつつも、暗号資産市場のニーズに応えた形となっている。
ビットコイン担保ローン市場の成長と金融業界の変化
暗号資産担保ローン市場は、今後大きく成長すると見込まれている。HFT Market Intelligenceの調査によれば、2024年の市場規模は約85億ドルだが、2030年には450億ドルに達する可能性がある。この背景には、暗号資産の保有者が増加していることに加え、伝統的な金融機関がビットコインを資産として認識し始めたことがある。ウォール街ではCantor Fitzgeraldがビットコイン融資事業を開始し、Anchorage DigitalやCopper.coと提携するなど、機関投資家の参入が進んでいる。
従来、ビットコインは投機的な資産と見なされることが多かったが、近年では長期的な資産運用の選択肢として認識されるようになった。特に、法定通貨を基盤とする金融システムに対する不信感が高まる中で、ビットコインの利用が広がっている。こうした環境の変化が、Xapo Bankのような中央集権型の金融機関に暗号資産を取り入れる動きを促している。
一方で、ビットコイン担保ローンにはリスクも存在する。特に価格変動の大きさは、担保価値の急激な減少を招き、清算の可能性を高める。分散型金融(DeFi)を活用した融資プラットフォームでは、借り手が担保管理を自己責任で行う必要があるため、信用リスクが低い。しかし、Xapo Bankのような中央集権型機関では、規制の影響や貸し倒れリスクへの対策が求められる。こうした点を踏まえ、今後の市場の成長には、金融機関の対応が重要な要素となるだろう。
Xapo Bankの戦略と暗号資産金融の未来
Xapo Bankは、これまでも暗号資産を活用した金融サービスを展開してきた。昨年には英国で規制当局の承認を取得し、利息付きのビットコイン口座を提供することで注目を集めた。ジブラルタルに本社を構え、欧州市場を中心に暗号資産と伝統的金融の融合を進める戦略をとっている。同様の取り組みは、他の金融機関でも増加しており、暗号資産の主流化を後押しする要因となっている。
Xapo BankのCEOであるシーマス・ロッカ氏は、暗号資産担保ローンの分野における過去の失敗例を挙げ、慎重な運営を行う方針を示している。特に、詐欺的な貸付や透明性の低い金融商品が市場に影響を与えたことを踏まえ、信頼性を重視したローンサービスを展開するとしている。
暗号資産金融の未来は、規制の動向と金融機関の対応によって大きく左右される。今後、中央集権型の銀行と分散型金融のどちらが市場の主流となるのかが注目される。Xapo Bankのような伝統的な金融機関の参入は、ビットコインの金融資産としての地位を確立する一方で、既存の銀行システムとの融合が求められる。今後の市場動向次第では、暗号資産を活用した新たな金融商品が登場し、より広範な投資家層に受け入れられる可能性がある。
Source:Cryptopolitan