米金融大手ウェルズ・ファーゴは、テスラ(TSLA)の1年後の目標株価を135ドルから130ドルに引き下げた。これは現在の水準から約45%の下落を示唆しており、すでに50%以上の下落を記録している同社株にさらなる圧力をかける可能性がある。

その背景には、欧州、中国、米国の主要市場における販売不振がある。欧州では1月の販売台数が前年比45%減、2月も41%の減少を記録。中国市場でも14%の落ち込みを見せ、S&Pモビリティのデータによると、米国内の登録台数は11%減少した。この業績低迷を受け、JPモルガンやUBSを含む複数の金融機関が目標株価を引き下げている。

また、テスラのPERは依然として100倍を超えており、成長鈍化と利益率の低下が進めば、さらなる株価調整が避けられないとみられる。イーロン・マスクの経営への関与不足や、トランプ前大統領がEV補助金削減を公約したことも不透明感を増す要因となっている。こうした中、市場ではテスラ株の下落リスクに注視する動きが強まっている。


テスラの販売不振が示す構造的課題 欧米市場での急減速

テスラは2024年に入り、欧州市場での販売台数が急減している。1月の販売台数は前年同月比で45%減少し、2月も主要9市場で41%の落ち込みを見せた。中国市場でも14%の減少を記録し、米国内でも登録台数が11%減少するなど、主要市場全体で需要の鈍化が顕著になっている。この販売不振は一時的な要因ではなく、テスラの事業構造そのものに起因している可能性がある。

背景には、競争環境の激化がある。欧州市場では、フォルクスワーゲンやBMWといった従来の自動車メーカーがEV市場に本格参入し、価格競争が激化している。さらに、中国市場ではBYDをはじめとする地元メーカーが政府の支援を受け、より低価格帯のEVを投入し、シェアを拡大している。この結果、テスラの強みであった先行者優位は薄れつつあり、ブランドの差別化が難しくなっている。

また、価格戦略も販売低迷の要因となっている。テスラは2023年から積極的な値下げを行い、需要の喚起を図ったが、利幅の低下という副作用も生じた。市場では「テスラの値下げが常態化した」との認識が広がり、消費者がさらなる価格下落を待つ傾向が強まっている。短期的な販売促進策が中長期的にはブランド価値の低下を招き、販売減少につながっていると考えられる。

株価目標引き下げが示す投資家心理 成長期待の後退とリスク評価

ウェルズ・ファーゴをはじめとする大手金融機関がテスラの目標株価を相次いで引き下げている。ウェルズ・ファーゴは135ドルから130ドルへと下方修正し、JPモルガンは135ドルから120ドルに引き下げた。みずほ、UBS、グッゲンハイムなども同様に目標株価を下げており、市場のセンチメントが急速に悪化していることが浮き彫りとなった。

この背景には、テスラの成長期待が後退していることがある。テスラは過去10年間でEV市場のリーダーとして急成長を遂げたが、足元では販売の減速と利益率の低下が目立つ。2024年第4四半期の売上成長率はわずか2.15%にとどまり、市場予想を大きく下回った。PER(株価収益率)は依然として100倍を超えており、成長鈍化が進む中でこの水準を維持するのは困難とみられる。

また、マクロ経済環境の変化もテスラの株価に影響を与えている。米国では金利高止まりが続き、消費者のローン負担が増加。EVのような高額商品の購入を控える傾向が強まっている。さらに、ドナルド・トランプ前大統領がEV補助金の削減を公約に掲げており、政策の変更が実施されればテスラにとって逆風となる可能性がある。こうしたリスクを考慮し、市場はテスラの株価を従来より慎重に評価するようになっている。

イーロン・マスクの経営姿勢と市場の不信感 テスラへの影響は避けられない

テスラの株価低迷には、イーロン・マスクの経営姿勢が影響しているとの見方もある。マスクは最近、「政府効率局(Department of Government Efficiency, DOGE)」の設立に注力しており、テスラやスペースXの経営に割く時間が減っていると指摘されている。実際、マスク自身も企業経営との両立に「大きな困難」を感じていると発言しており、経営への関与度が低下している可能性がある。

さらに、マスクの発言や行動は市場の不信感を招く要因にもなっている。彼は政治的な発言を繰り返しており、テスラのブランドが不必要に政治色を帯びているとの批判もある。例えば、マスクがドナルド・トランプ前大統領に対する支持を示唆する発言をしたことで、一部の顧客層がテスラから距離を置く可能性が指摘されている。また、ソーシャルメディア上での過激な発言や、経営方針の突然の変更も投資家の不安を助長している。

このような状況が続けば、テスラの企業価値にも影響を及ぼすことは避けられない。ブランドイメージの低下は販売のさらなる減少を引き起こし、業績悪化につながる可能性がある。短期的には株価の変動要因として、長期的には企業の成長戦略そのものに影響を及ぼすリスクがあると考えられる。

Source:Barchart.com