NVIDIAのGTC 2025が開幕する中、音声AIのリーダーであるSoundHound AI(SOUN)が投資家の関心を集めている。同社の株価は年初来で50%以上下落する一方、過去12か月では15%以上上昇。NVIDIAが投資撤退を決めたことが市場の警戒感を高めたが、GTCでは自動車向け音声AI技術の最新成果を発表し、NVIDIAのプラットフォームとの連携強化を打ち出す予定だ。
事業面では、AIカスタマーサービスや音声コマースエコシステムの拡大により成長を遂げており、2024年第4四半期の売上は前年比101%増と過去最高を記録。負債ゼロの財務基盤を持ち、2025年末には調整後EBITDAの黒字化を見込む。アナリストは目標株価を14.67ドルと設定し、現在の水準から50%以上の上昇余地を示唆。GTCを機に、SoundHoundの技術と市場戦略が再評価される可能性がある。
SoundHound AIの成長戦略 GTCで示される自動車向け音声AIの可能性

SoundHound AIは、2025年のGTCにおいて、自動車業界向けの音声AI技術を披露する。特に、NVIDIAのDRIVE AGXプラットフォームとの統合が注目されており、車載音声アシスタントの性能向上が期待されている。同社はこれまでに20の自動車ブランドと提携し、車内の音声コマースエコシステムの構築を進めてきたが、その影響力をさらに拡大する狙いだ。
この技術の核となるのは、大規模言語モデル(LLM)を活用した自然な対話機能である。従来の音声認識システムと異なり、SoundHoundの「スピーチ・トゥ・ミーニング」は音声を即座に意味として解釈し、より自然な会話を実現する。この精度の向上により、ドライバーの負担を軽減し、車載インフォテインメントの利便性が大幅に向上する可能性がある。
一方で、SoundHoundの自動車向け事業は、依然として顧客の生産台数の3~5%程度にとどまっている。今後、40~45%のシェア拡大を目指しているが、自動車メーカーとの長期的な契約が必要となる。GTCを通じて、同社がどのように市場拡大を進めるのか、その戦略が問われることになる。
AIカスタマーサービス市場の拡大 SoundHoundの新たな収益の柱
SoundHoundはAIカスタマーサービス分野において急成長を遂げている。現在、同社の売上の約3分の2をこの分野が占めており、レストラン業界では10,000以上の店舗がSoundHoundの技術を導入している。ドライブスルーや電話注文の効率化を実現し、人件費削減とオペレーションの最適化に貢献している点が支持される理由だ。
また、最近ではAmelia社を買収し、ヘルスケア、金融、政府、エネルギー分野へと事業を拡大している。これにより、既存のレストラン業界に依存しない収益基盤を築き、長期的な安定成長を図る戦略が鮮明になった。実際に、7桁規模の契約を新たに締結するなど、大手企業の導入が進んでいる。
この分野の競争は激化しており、AmazonやGoogleなどのテック大手が同様のソリューションを提供している。しかし、SoundHoundは独自の音声処理技術を武器に差別化を図り、より精度の高いサービスを提供することで市場競争を勝ち抜く構えだ。今後の展開によっては、AIカスタマーサービスが同社の最大の成長ドライバーとなる可能性がある。
株価のボラティリティと市場評価 投資家が注視すべきポイント
SoundHoundの株価は年初来で50%以上下落しているが、過去12か月で見ると15%以上の上昇を記録している。この乱高下の要因として、NVIDIAの投資撤退が挙げられる。市場はこの動きをネガティブに捉え、株価に大きな影響を与えた。一方で、同社の成長指標は好調であり、2024年第4四半期には前年同期比101%増の3,450万ドルという過去最高の売上を達成した。
財務面では、SoundHoundは1億9,800万ドルの現金を保有し、負債ゼロの状態を維持している。これにより、2025年末までの調整後EBITDAの黒字転換を目指す。さらに、2025年の売上見通しは1億5,700万〜1億7,700万ドルと強気の予測が示されており、投資家の期待を高めている。
アナリストの評価は分かれているものの、目標株価は14.67ドルとされ、現在の水準から50%以上の上昇余地がある。短期的にはボラティリティの高さが懸念されるが、長期的な成長ポテンシャルを考慮すると、SoundHoundはAI市場の中で重要なポジションを築いていく可能性が高い。GTCでの発表が市場の評価をどう変えるか、今後の動向が注目される。
Source:Barchart