ビットコインは2024年の米大統領選以降、2倍以上の上昇を見せたが、1月20日の過去最高値10万9,358ドルから既に22%下落している。市場では、トランプ政権の仮想通貨政策の緩和が追い風になるとの期待がある一方、景気後退のリスクも無視できない。

J.P.モルガンは2025年の景気後退確率を40%と予測し、関税政策や消費低迷が懸念材料となる。過去の経済危機時には仮想通貨市場が急落した例もあり、景気悪化が投資意欲に影響を与える可能性がある。

短期的にはボラティリティが高まるが、規制の明確化が機関投資家の参入を促す可能性も指摘されている。投資家は慎重に市場を見極める必要があり、長期戦略が求められる局面にある。


ビットコイン急落の背景 過去最高値からの下落要因

ビットコインは2024年の米大統領選後に急騰し、2025年1月20日には過去最高値の10万9,358ドルを記録した。しかし、その後22%の下落を見せ、市場のボラティリティの高さを改めて浮き彫りにした。この下落の要因には、利益確定売りの増加、規制の行方に対する警戒感、そして景気後退の可能性がある。

特に「トランプ・トレード」と呼ばれる市場の動きが影響を与えた。トランプ政権は仮想通貨業界に対して従来よりも柔軟な姿勢を見せたが、短期的には市場が過熱したことで調整局面に入った。SECが仮想通貨規制の緩和に動く一方、機関投資家は依然として市場の安定性に疑問を持っている。

加えて、金融市場全体が金利動向や景気後退のリスクを注視している。J.P.モルガンは2025年の景気後退の確率を40%と予測し、米国内の経済不透明感が仮想通貨市場にも影響を与えている。過去には景気後退局面で仮想通貨の価格が急落した例があり、投資家心理の冷え込みがさらなる売りを引き起こす可能性がある。

景気後退と仮想通貨 投資環境に与える影響

J.P.モルガンの予測によれば、2025年の景気後退確率は40%に達している。特に懸念されているのは、トランプ政権の関税政策による貿易摩擦の激化である。貿易戦争が再燃すれば、企業のコスト負担が増加し、消費者心理の悪化を招く恐れがある。Dollar GeneralやWalmartといった小売業者は、すでに消費低迷の兆候を指摘している。

景気後退が発生した場合、投資家のリスク許容度が低下し、安全資産への資金移動が進む可能性がある。仮想通貨はリスク資産と見なされており、2020年のCOVID-19危機の際には市場全体が急落した。過去の事例を考慮すると、景気後退時にはビットコインも売り圧力を受けやすい。

一方で、景気後退が進む中で仮想通貨がデジタル・ゴールドとしての側面を強める可能性もある。実際に、米ドルや株式市場が不安定な時期には、ビットコインの価値が避難資産として見直される場面もあった。しかし、歴史的に見れば、短期的な混乱期にはまず価格が下落することが多く、長期的な安定性を見極める必要がある。

機関投資家の参入と市場安定化の可能性

ビットコイン市場の将来において、機関投資家の動向は大きな影響を及ぼすと考えられている。現在、SECは規制の明確化を進めており、「クリプト・タスクフォース」の設立や仮想通貨取引所への訴訟取り下げがその一環である。この動きによって、ミューチュアルファンドや年金基金などの機関投資家が仮想通貨市場に参入しやすくなる可能性がある。

機関投資家が本格的に市場に参入すれば、ビットコインの正当性が高まり、価格の安定化につながるとの見方もある。これらの投資家は長期的な視点で資金を投入するため、短期的な投機的取引とは異なる影響をもたらす。また、大規模な資金流入は、これまで市場を牽引してきた個人投資家の影響力を相対的に低下させ、過度なボラティリティの抑制につながる可能性がある。

ただし、機関投資家の参入が必ずしも価格上昇につながるわけではない。彼らはリスク管理を重視するため、市場環境が不安定である限り、大規模な投資をためらう可能性もある。現時点では、仮想通貨市場が機関投資家にとって十分な信頼を得るには、さらなる規制整備と市場の成熟が求められるだろう。

Source:The Motley Fool