AIスタートアップAnthropicが、独自のチャットボット「Claude」に初のウェブ検索機能を追加した。対象は米国内の有料ユーザーで、最新モデル「Claude 3.7 Sonnet」でのみ対応する。ユーザーがWebアプリの設定から機能を有効化すれば、ClaudeはXやReutersなどの信頼情報源を検索し、引用付きで応答を生成する。

これにより、ClaudeはChatGPTやGeminiなど他の主要チャットボットと肩を並べる機能を獲得した形だ。これまで「自己完結型」にこだわってきたAnthropicの方針転換には、激化する競争環境の影響が色濃い。ただし、AIによる誤情報や幻覚の生成リスクは依然として課題として残る。


Claude 3.7 Sonnetに限定された検索機能の実装とその仕組み

Anthropicが発表したウェブ検索機能は、同社の最新モデル「Claude 3.7 Sonnet」に限定されており、対象は米国内の有料ユーザーに限られている。ユーザーはClaudeのWebアプリ上で設定を切り替えることで検索機能を有効化でき、Claudeは必要に応じてリアルタイムで外部の情報源を参照しながら応答を構成する。参照元としては、X(旧Twitter)、NPR、Reutersといった信頼性の高いメディアが明記されており、回答内には情報源のインライン引用が含まれる設計だ。

この仕組みにより、従来の固定的な知識ベースから脱し、Claudeは最新情報を取り入れた対話が可能となった。情報の信ぴょう性を裏付ける引用の提示により、ユーザーは内容を即座に検証できる点も大きい。一方で、検索のトリガーが常に作動するわけではなく、質問の性質や文脈によって検索が実行されない場合があるとの報告もある。つまり、機能は導入初期段階であり、精度や応答の一貫性については今後の改善が前提とされる。

自己完結型から検索型へ方針を転換したAnthropicの背景

Anthropicはこれまで「Claudeは自己完結型であるべき」との設計思想を貫き、ウェブ検索機能に否定的な姿勢を取ってきた。大量の学習データをもとに、あくまでも内部的な推論で応答を行うことが優位性とされていたが、今回の機能追加はこの立場を大きく転換するものである。他の主要チャットボット、たとえばOpenAIのChatGPTやGoogleのGemini、MistralのLe Chatなどがリアルタイム検索機能を標準装備する中、Anthropicも競争環境に対応せざるを得なかったと見られる。

競合との差異を維持するための設計哲学と、市場の即応性や利用者の実用ニーズの間でのバランスが課題となった形である。今回のアップデートは、競争圧力とユーザーの期待に直面する中で、静的な知識のみでは応用範囲に限界があるとの判断に基づくものと考えられる。ただし、設計思想の転換は一時的対応か中長期的戦略かは明言されておらず、今後の拡張範囲や他モデルへの展開が注視される。

リアルタイム情報の取得と誤情報生成のリスクの両立課題

Claudeの検索機能は、外部ソースの引用に基づく応答生成によって透明性を確保しようとしているが、根本的な課題としてAIが誤った情報を提示するリスクは払拭されていない。The Guardianの報告によれば、ChatGPTの検索特化モード「ChatGPT Search」でさえ、要約が誤解を招くよう誘導されることがあるという。また、コロンビア大学Tow Center for Digital Journalismの調査では、主要チャットボットが60%以上の質問に誤った回答をしたという結果も出ている。

Claudeもこの例外ではなく、ウェブ上の情報の信頼性や文脈理解の難しさから、誤情報や「幻覚」が生じる可能性を依然として内包している。引用が明示されているとはいえ、情報の正確な読み取りや文脈の適切な判断には限界がある。ユーザー側にファクトチェックの習慣や、AIの限界を認識するリテラシーが求められる中で、今後は機能拡張と並行して、誤情報を抑制するアルゴリズムの精緻化が避けて通れない。

Source:TechCrunch