リゲッティ・コンピューティング(RGTI)の株価は、Nvidia(NVDA)が3月20日に開催した初の「Quantum Day」にもかかわらず約10%の急落を記録した。Nvidiaのジェンスン・フアンCEOによる過去の発言が量子コンピューティング関連株の急落を誘発した経緯があり、市場では依然として警戒感が強い。
また、リゲッティの直近の決算は期待を大きく下回り、純損失は前年同期比で急拡大し1億5,300万ドルに達した。売上高も前年比32%以上減少し、市場予想を下回る2.3百万ドルにとどまった。このため、量子コンピューティング市場の将来性を期待する一方で、企業価値と実態の乖離を指摘する声もある。
ウォール街のアナリストはRGTI株に対して「強い買い(Strong Buy)」の評価を維持し、目標株価を14.80ドルと見積もっている。しかし、本格的な商業化には依然として時間がかかるとみられ、短期的な値動きには慎重な判断が求められる。
Nvidiaの「Quantum Day」が市場に与えた影響とは

Nvidia(NVDA)は3月20日に初の「Quantum Day」を開催し、量子コンピューティング分野における戦略を発表した。CEOのジェンスン・フアンは、量子技術が今後のコンピューティングにおいて重要な役割を果たすと述べたものの、市場の反応は必ずしも好意的ではなかった。
特に、リゲッティ・コンピューティング(RGTI)の株価はイベント当日に約10%下落した。この背景には、フアンが過去に量子コンピューティングの商業化に懐疑的な見方を示していたことが影響している可能性がある。市場は依然として実用化の時期や収益化の見通しに対し慎重であり、期待感のみでは株価を押し上げる要因にはならなかった。
一方で、ウォール街のアナリストは依然としてRGTI株に対して強気な見方を維持している。目標株価は14.80ドルと設定されており、現在の水準から60%以上の上昇余地があるとされる。しかし、量子コンピューティング市場の成長は長期的なものであり、短期的な株価変動に過度に期待するのはリスクが伴う。
リゲッティ・コンピューティングの財務状況と成長性
リゲッティ・コンピューティングの直近の決算は市場予想を下回り、財務状況に対する懸念を強める内容となった。2023年第4四半期の純損失は1億5,300万ドルに拡大し、前年同期の1,260万ドルから大幅に悪化した。売上高も前年比32%以上減少し、2.3百万ドルにとどまった。
この数字は、同社の事業モデルが依然として大きな収益を生み出していないことを示している。量子コンピューティングは技術的な進展が求められる分野であり、研究開発費用がかさむため、短期的な黒字化は容易ではない。リゲッティの財務状況を鑑みると、投資家は今後の資金調達計画にも注視する必要がある。
また、同社の企業価値にも議論の余地がある。2025年の売上予測はわずか1,400万ドルである一方、時価総額は28億ドルに達している。この乖離は、市場が量子技術の将来性を強く織り込んでいることを示すが、現在の収益構造を考慮すると、過大評価の可能性も否定できない。
競争環境と量子超越性の実現への道
量子コンピューティング業界では、リゲッティ・コンピューティング以外にも複数の企業が開発を進めている。その中でも、D-Wave(QBTS)は「量子超越性(Quantum Supremacy)」の実現においてリードしているとされ、リゲッティは競争上の課題に直面している。
「量子超越性」とは、従来のコンピューターでは不可能な計算を量子コンピューターが実行できる段階を指す。Googleが2019年にこの領域での成功を発表したが、商業化には依然として時間がかかるとされる。リゲッティは独自の技術開発を進めているものの、現時点で決定的な技術的優位性を確立できているとは言い難い。
また、Nvidiaをはじめとする大手テクノロジー企業も量子技術への投資を加速しており、市場競争は激化している。リゲッティが長期的に競争力を維持するには、技術革新のスピードを上げるとともに、実用化に向けた明確な戦略を示す必要がある。投資家にとっては、同社の研究開発の進捗と収益モデルの確立が重要な判断材料となるだろう。
Source: Barchart.com