Appleが開発中と噂されるスマートホーム用デバイス「HomePad」に関する手がかりが、iOS 18.4ベータ版の複数の新機能やUI設計に見られる。特にApple Newsアプリの「Food」セクションでは、壁掛けやキッチン設置を前提としたUIや調理中の操作性に優れた設計が確認された。

さらに、iOS・tvOSにおける新たなフレームワーク「CookingKit」や「ChatKit」の導入、製品カテゴリへの「Home」追加など、システム全体にHomePad登場の伏線が広がっている。Siriの強化も並行して進められており、秋以降の正式発表が現実味を帯びつつある。

「Food」セクションに込められたUI設計 調理空間を前提とする新たなデバイス像

iOS 18.4ベータ版で導入されたApple Newsアプリの「Food」セクションは、調理時の利便性を最優先に設計されたUIが目を引く。巨大なボタン、広いタッチターゲット、部屋の反対側からでも視認できる大フォントによるレシピ表示など、従来のiPadアプリとは一線を画す構造である。

材料や手順に素早くアクセスでき、調理工程中にスクロール不要な表示設計は、明らかに据え置き型デバイスの利用環境を想定したものといえる。特筆すべきは、レシピ内の時間表示をタップするだけで即座にタイマーが起動する機能である。従来の時計アプリやSiriを経由する必要がなく、調理中の操作を大幅に簡素化する仕組みとなっている。

加えて、手が濡れている状態でも肘や鼻などで画面操作できるUIは、キッチンでの実用性を最大限に考慮している証左である。これらの設計思想は、手に持つモバイル端末ではなく、壁面設置やカウンター常設を前提とする「HomePad」の存在を想起させるに十分なものである。

フレームワークとカテゴリ構成に見るHomePad登場の布石

iOS、iPadOS、tvOSの18.4ベータ版では、「CookingKit」や「ChatKit」といった新たなフレームワークが導入されている。「CookingKit」はレシピ検索や食材管理などを可能にする土台となり、「ChatKit」はtvOSに未搭載だったiMessage機能の統合を示唆する動きである。

Apple TVでは提供されていない機能である以上、これらはtvOSベースの新型デバイス、すなわちHomePadのために設計されたものとみられる。また、製品ラインに「Home」という新たなカテゴリが追加された点も注視すべき変化である。

これまでHomePodやApple TVは「Home」の明確な括りに属していなかったが、今回の分類は、ホームデバイスとしての位置付けを再定義する動きとも解釈できる。さらに、iOSの内部コードにおける食関連機能の拡張は、Foodセクションを一過性の施策としてではなく、今後の中核的サービスとして展開する意志の現れともとれる。

AppleがUI・フレームワーク・カテゴリの三層構造でHomePadの布石を打っている状況が浮かび上がる。

Siriの進化とリリース時期に滲む発表スケジュールの読み筋

iOS 18.4ベータ版では、Shortcutsアプリに新アクションが多数追加されており、今後のSiri強化に向けた下地が着実に整備されている。将来的にSiriが「App Intents」に対応すれば、ユーザーは音声のみでアプリの細部にわたる操作が可能となり、キッチンのような両手が塞がる場面で真価を発揮する。

その実現には現行のSiriを超える精度と応答性が不可欠であり、Appleがこの領域に注力していることが見て取れる。ただし、Siriの刷新が当初予定されていた春から延期される見通しであることは、HomePadの発表スケジュールにも直接的な影響を及ぼすと考えられる。

Appleは秋にiOS 19およびmacOS 16の発表を控えており、そのUI刷新と連動する形でHomePadが披露される可能性も否定できない。6月のWWDC、9月のiPhoneイベント、10月のMacイベントといった既存の発表機会に加え、スマートホーム領域に特化した別枠のイベント開催の可能性も残されている。

Siriの登場時期とUI刷新のタイミングを鑑みるに、HomePadのリリースは年内でも後半の発表が濃厚とみられる。

Source:Macworld