2024年12月に過去最高の1トンあたり12,931ドルを記録したココア先物価格は、その後下落に転じ、2025年3月には7,770ドルまで下落。かつての高値を大きく上回る価格水準が一時的に実現したが、供給回復の兆しと市場心理の変化が価格の反転をもたらした。
一方、長期的なテクニカルサポートとして注目されるのは、1977年の高値5,104ドルであり、現行価格との乖離はなお大きい。供給動向や西アフリカの天候・病害状況、さらには米国の通商政策などが今後の価格形成に影響を与える可能性がある。
短期的には弱気局面が継続しており、5月限先物は8,200ドル付近で推移。だが、高ボラティリティ市場であることを踏まえると、反発局面でのトレード機会も視野に入る展開といえる。
高値から急落するココア先物 過去最高値とサポート水準の攻防

2024年12月に記録した1トンあたり12,931ドルの高値をピークに、ココア先物価格は2025年3月には7,770ドルまで下落した。過去1年で2倍以上に急騰した局面を経て、チャート上では明確な下降トレンドに転じている。5月限の価格も8,200ドル前後と、かつての勢いはすでに失われつつある。
価格急騰の要因となったのは、西アフリカ地域における異常気象や作物病害による供給逼迫であり、これは一次的かつ外的要因によるショックに近い。供給懸念が緩和されれば、価格は自然とバランスを回復し、投機的なポジションは整理される傾向にある。加えて、チョコレート需要の急拡大といった需給の恒常的な変化は見られておらず、価格の反落には一定の合理性がある。
一方で、重要なテクニカル水準として1977年の過去最高値である5,104ドルが意識されている。2024年の急騰でこの水準を突破したことで、現在の価格下落局面においては同水準が中長期のサポートラインとして機能する可能性がある。これにより、さらなる下落リスクの下限が限定されるかどうかが注目される。
政策・気象・需給が絡み合う価格形成 ボラティリティが生む投資機会
ココア市場は、単純な供給と需要のバランスだけでは語れない複雑な構造を持つ。特に西アフリカにおける天候や作物の病害、さらに各国の通商政策が相場に強い影響を及ぼしている。たとえば、2024年の供給不足を引き起こした異常気象や害虫被害は、単年で終息するとは限らず、生産者の予測可能性を大きく低下させた。
また、米国がトランプ政権下で導入を掲げる関税政策も無視できない。ココアのような一次産品は輸出入に敏感であり、貿易障壁が価格に与える影響は直接的である。こうした要因が同時に作用する現在の市場では、予測が困難である一方、価格の急変動が頻繁に発生している。これは、適切な戦略を持つ投資家にとって、短期的なリターンを狙う機会ともなりうる。
実際、ICEで取引されるココア先物は高いレバレッジ比率を持ち、価格変動によって資産効率を大きく左右する。直近の価格水準では1契約あたり8万ドル超の価値があり、証拠金比率は18.5%と高く、一定の資金力とリスク管理能力が求められる市場構造である。そのため、単なる価格の上げ下げ以上に、背景となる構造要因を見極める力が問われている。
Source: Barchart.com