NVIDIAの株価が上昇した背景には、同社CEOジェンスン・フアン氏の発言がある。フアン氏はトランプ前大統領のAI政策を「素晴らしい追い風」と評し、特に規制緩和や巨額の資金投入がNVIDIAにとって有利に働く可能性を指摘した。

トランプ氏の政策の中心には、5000億ドル規模の「スターゲート」プロジェクトや、TSMCによる1000億ドルの米国内投資が含まれる。これにより、NVIDIAはAI半導体の大規模生産を加速し、地政学リスクの低減や利益率の向上が期待される。さらに、アナリストの間でもNVIDIA株に対する評価は依然として高く、ウォール街のコンセンサスは「強い買い」のままであり、目標株価も現在の水準から50%以上の上昇が見込まれている。

こうした要因を踏まえ、2025年には「アメリカ重視」の投資家の関心が一層高まり、NVIDIA株のさらなる上昇につながる可能性がある。


トランプ前大統領のAI政策がNVIDIAに与える具体的な影響

トランプ前大統領は、AI分野の成長を加速させるための政策を打ち出しており、その中核に「スターゲート(Stargate)」プロジェクトがある。これは5000億ドル規模の投資を含み、アメリカがAI技術の覇権を維持するための戦略的取り組みとされている。NVIDIAのジェンスン・フアンCEOは、こうした政策が同社にとって「強い追い風」になると述べ、特に政府の資金提供や規制緩和がAI半導体市場における競争力を高めると期待している。

また、台湾セミコンダクター(TSMC)の1000億ドル規模の対米投資も、NVIDIAにとって大きな追い風となる可能性がある。TSMCがアメリカ国内での生産能力を拡大すれば、半導体の供給網が強化され、NVIDIAはより安定したチップ供給を受けることができる。これは、サプライチェーンの地政学的リスクを低減し、長期的な成長基盤の強化につながると考えられる。

これらの要素が相まって、NVIDIAの市場ポジションは一層強固なものになる可能性がある。特に、トランプ氏が再び政権を握る場合、AI産業全体に対する政府の支援が継続され、NVIDIAの成長をさらに促進することが予想される。ただし、こうした投資政策が実際にどこまで機能するかは、今後の政治情勢や市場環境によって左右される点には留意が必要である。

NVIDIA株の評価と市場の期待

NVIDIAの株価は、ジェンスン・フアンCEOの発言を受けて一時的に上昇したものの、年初来高値から約20%下落している。この背景には、短期的な利益確定売りや市場全体の調整が影響しているとみられる。一方で、バーンスタインのアナリスト、ステイシー・ラスゴン氏は、NVIDIA株の将来性を依然として高く評価しており、目標株価を185ドルとし、現在の水準から50%以上の上昇余地があると予測している。

市場全体の評価としても、ウォール街のコンセンサスは「強い買い(Strong Buy)」のままであり、平均的な目標株価は177.43ドルとされている。これは、データセンターやAI向け半導体への需要が引き続き拡大するとの見方に基づいている。フアン氏はGTC(GPU Technology Conference)の基調講演で、今後4年間でデータセンター向けの投資が1兆ドル規模に達すると予測し、これがNVIDIAの成長を後押しすると強調した。

ただし、株価の上昇を確実視することはできない。半導体市場は競争が激しく、特に米中間の貿易摩擦や規制の動向が業績に影響を与える可能性がある。また、TSMCの対米投資が進むことで、NVIDIAの製造コストが増加する懸念も残る。今後の市場動向を慎重に見極めることが、投資家にとって重要となるだろう。

AI半導体市場におけるNVIDIAの戦略と課題

NVIDIAは、AI半導体市場において圧倒的なシェアを誇るが、競争の激化に直面している。AMDやインテルなどの競合他社は、独自のAIプロセッサを開発し、NVIDIAの市場独占を脅かす動きを見せている。特に、AMDの「MI300」シリーズやインテルの「Gaudi」プロセッサは、クラウド事業者向けに提供されており、一部の顧客がNVIDIA製品からの切り替えを検討する動きもある。

この競争環境の中で、NVIDIAはハードウェアだけでなく、ソフトウェアの優位性を活かした戦略を強化している。同社のCUDA(Compute Unified Device Architecture)プラットフォームは、AI開発者に広く利用されており、他社製品との差別化要因となっている。これにより、ハードウェア単体ではなく、エコシステム全体を提供することで、顧客の囲い込みを図っている。

しかし、課題もある。NVIDIAの製品価格は高騰しており、企業のコスト負担が増している点は懸念材料となる。また、米政府の対中輸出規制により、中国市場での売上が制約される可能性もある。今後の成長戦略として、価格競争力の強化や新市場の開拓が求められることは間違いないだろう。

Source: Barchart.com