半導体大手のAMDは2024年、過去最高の売上高258億ドルを記録し、特にデータセンター部門の成長が94%増と著しかった。AI市場の拡大を背景に、AmazonやGoogleなどの主要クラウド企業が同社のEPYCプロセッサーを採用し、データセンター事業が売上の約半分を占めるまでに成長した。一方で、ゲーム部門や組み込み部門は大幅な減少を見せ、課題も浮き彫りとなった。

株価は2025年の予想利益に対しPER22倍と、過去5年平均の75.8倍と比較して大きく割安な水準にある。ウォール街のアナリストは強気の見解を示し、目標株価147.10ドルと現在価格から約36%の上昇余地を見込む。ZT Systemsの買収や次世代GPU「MI350」「MI400」の展開が今後の成長を後押しすると予想されるが、市場の注目はデータセンター分野の拡大が続くかに集まる。


データセンター市場の拡大がAMDの成長を牽引

AMDは2024年、データセンター事業が前年比94%増の126億ドルに達し、全体の売上構成比49%を占めるまでに成長した。特に第5世代EPYC「Turin」や第4世代EPYCチップの高い需要が市場を牽引し、Amazon、Google、Microsoft、Alibabaといった主要クラウド事業者が同社のプロセッサーを採用した。現在、AMDのEPYCをベースとしたクラウドインスタンスは1,000を超え、業界の主要プレイヤーにとって不可欠な存在となっている。

この成長の背景には、AIや高性能コンピューティング(HPC)分野の拡大がある。AIモデルの規模拡大に伴い、高速演算を支えるプロセッサーの需要が高まっており、AMDはこの潮流を確実に捉えた。競争相手であるNVIDIAがGPU市場で優位に立つ一方、AMDはCPUとアクセラレーターの統合による最適化を進め、データセンター市場における影響力を強めている。ZT Systemsの買収を通じて、この分野でのさらなる成長が期待されており、データセンター事業の比重が今後も高まる可能性がある。

ゲームと組み込み部門の不振が成長の足かせに

一方で、AMDの2024年の業績には課題も見られた。ゲーム部門は前年比58%減少し、大きな落ち込みを記録した。これは主にMicrosoftやSonyのゲーム機販売の低迷によるものであり、コンソール向けの半導体需要が鈍化したことが影響している。しかし、2025年には在庫調整が進むとされ、次世代GPU「Radeon 9000」シリーズの投入が市場回復の契機となる可能性がある。

また、組み込み部門も33%の減収を記録し、特に消費者向けの需要減少が影響した。ただし、航空宇宙や防衛関連の分野では依然として堅調な成長が見られ、特定市場向けの展開が今後の回復のカギを握ると考えられる。AMDは、クライアント部門とゲーム部門を2025年度から統合し、新たな戦略の下で事業の立て直しを図る見通しだが、市場全体の需要動向が依然として不透明な要素となっている。

株価は割安水準も成長シナリオは明確

AMDの株価は現在、2025年の予想利益に対してPER22倍で取引されており、過去5年間の平均PER75.8倍と比較すると大幅に割安な水準にある。ウォール街のアナリストのうち28人が「強い買い」と評価し、目標株価の中央値は147.10ドルと現在価格から約36%の上昇余地がある。また、一部の強気なアナリストは、225ドルという高い目標株価を提示しており、最大108%の上昇可能性を見込んでいる。

この評価の背景には、データセンター事業の成長やZT Systemsの買収、次世代GPU「MI350」「MI400」の投入などがある。特にAI市場の拡大により、AMDの高性能プロセッサーに対する需要は今後も続くと考えられている。一方で、ゲーム部門や組み込み部門の回復が遅れた場合、株価の上昇ペースが鈍化する可能性も否定できない。市場の注目は、AMDがどのようにして成長領域を拡大し、不振部門を立て直すかに集まる。

Source: Barchart