Samsungが新たに発表した「HW-Q930F」は、プレミアムサウンドバー市場に向けた最新モデルだ。フラッグシップモデル「HW-Q990F」の次に位置付けられるこのモデルは、再設計されたサブウーファーと上向きのリアスピーカーを搭載し、より没入感のあるサラウンドサウンドを提供する。

対応フォーマットはDolby Atmos、DTS-Xなど幅広く、独自の「SpaceFit Sound Pro」による音場最適化も継承。さらに「Active Voice Amplifier Pro」が搭載され、環境音を分析しながら音声の明瞭度を自動調整する。

新機能「Moderate Bass」では、夜間でもサブウーファーをオフにして低音を抑えつつ、サウンドバーが補完する仕組みを採用。ただし、HDMI 2.0が1基のみで4K/60Hz対応にとどまるため、ゲーマーにはやや物足りないかもしれない。米国では1,399ドルで発売予定だが、他地域の詳細は未発表となっている。

再設計されたサブウーファーと上向きリアスピーカーが生み出す新次元のサウンド

Samsungの新モデル「HW-Q930F」は、従来のQシリーズと比べ、サブウーファーの設計が大幅に見直された点が特徴だ。従来のモデルでは低音の迫力を重視した仕様が多かったが、本機ではバランスを意識したチューニングが施されている。これにより、映画や音楽を楽しむ際に、不要な振動を抑えつつも臨場感のある低音を再現する。さらに、上向きのリアスピーカーが搭載されたことで、Dolby AtmosやDTS:Xといった立体音響フォーマットを最大限に活かせる設計となった。

このリアスピーカーは天井に音を反射させることで、従来の平面的な音響とは一線を画す没入感を生み出す。部屋の環境に合わせて音場を自動調整する「SpaceFit Sound Pro」も引き続き搭載され、部屋の大きさや家具の配置に応じて最適な音響バランスを実現する。これにより、設置場所を選ばず、どの部屋でも一貫したサウンド体験が得られるのが強みだ。

しかし、すべての環境で完全に理想的な音質が得られるわけではない。天井の高さや部屋の形状によって反射音の効果が異なるため、環境次第で満足度に差が出る可能性がある。それでも、特別なセットアップなしに立体的なサウンドを楽しめる点は、多くのユーザーにとって魅力的だろう。

「Active Voice Amplifier Pro」がもたらすクリアな音声体験

HW-Q930Fには、新たに「Active Voice Amplifier Pro(AVA Pro)」が搭載された。これは、周囲の騒音レベルをリアルタイムで分析し、映画やドラマのセリフを聞き取りやすくする機能だ。たとえば、エアコンの稼働音や食洗機の動作音など、生活環境のノイズを検出し、それに応じて音声のボリュームや明瞭度を自動で調整する。これにより、静かな場面でもセリフが埋もれることなく、安定したリスニング環境が得られる。

従来のモデルでも音声を強調する機能は搭載されていたが、AVA Proでは分析の精度が向上し、より繊細な調整が可能になった点が大きな違いだ。特に、アクション映画やミステリードラマでは、BGMや効果音が重なる場面でも、会話の明瞭さが損なわれにくい。これにより、音量を上げずともセリフを正確に聞き取ることができるため、家族と一緒に視聴する際の利便性も向上する。

ただし、AVA Proがどの程度の環境ノイズをカバーできるのかは使用状況によって異なる。たとえば、工事現場のような極端に騒がしい環境では、完全にノイズを打ち消すことは難しいかもしれない。それでも、日常生活で発生する一般的なノイズに対しては、確かな効果が期待できるだろう。

ゲーマーには物足りないHDMI仕様 4K/120Hz未対応の影響

HW-Q930Fは、映像出力の観点では前モデルと大きな違いはなく、HDMI 2.0が1基のみ搭載されている。これにより、最大解像度は4K/60Hzまでとなっており、最新のゲーム機を最大限に活用したいユーザーにとっては物足りない仕様だ。近年のハイエンドテレビやゲーム機では、4K/120HzやVRR(可変リフレッシュレート)に対応する機種が増えており、より滑らかな映像体験を求めるゲーマーには、この制約がデメリットとなる可能性がある。

HDMI 2.1を搭載していないことで、PS5やXbox Series Xといった最新コンソールでのパフォーマンスを最大化できない点は明らかだ。特に、シューティングゲームやレースゲームなど、動きの激しいタイトルでは120Hz対応の恩恵が大きいため、そうした用途を重視するユーザーにとっては選択肢から外れる可能性もある。一方で、映画やドラマの視聴が主な用途であれば、この制約は大きな影響を及ぼさない。

とはいえ、サウンド面では立体音響やAI補正機能などが充実しており、映画や音楽を重視するユーザーには十分な魅力がある。ゲーム用としてはやや妥協が必要だが、ホームシアター用途として考えれば、十分に高性能なサウンドバーといえるだろう。

Source:NotebookCheck