Appleが開発した初の自社製5Gモデム「C1」を搭載するiPhone 16eが、通信性能で上位機種iPhone 16を上回るデータを示した。Ooklaによる米国内の実測値では、ダウンロード速度の中央値でiPhone 16eが217.64Mbpsと、iPhone 16の210.55Mbpsを凌駕。さらに最低速度帯でも優位に立ち、アップロード速度においても3大キャリアでiPhone 16を上回った。

唯一の課題はmmWave 5G非対応であり、最大速度帯ではiPhone 16に劣る結果となったが、これは今後のモデム改良によって克服可能とされている。低価格帯ながらも高性能を実現したこの結果は、AppleがiPhone全機種への自社モデム導入を本格化させる布石となる可能性を示唆する。

Apple初のC1モデムが示した通信性能の優位性

iPhone 16eに搭載されたC1モデムは、Appleが独自に開発した初の5Gモデムとして注目を集めている。Ooklaが米国ユーザーの通信実績をもとに集計したデータでは、iPhone 16eは10パーセンタイルのダウンロード速度で27.35Mbps、中央値では217.64Mbpsを記録し、iPhone 16をいずれも上回った。

加えて、アップロード速度においても、T-Mobile、Verizon、AT&Tの3大キャリアすべてでiPhone 16よりも高い値を示した。一方、最大速度帯における劣勢は明確であり、90パーセンタイルではiPhone 16が756.13Mbpsを記録し、iPhone 16eの560.4Mbpsを大きく引き離している。

これはmmWave(ミリ波)への非対応が影響しているとされ、今後のモデム世代での対応が期待される。C1モデムは、通信性能のみならず電力効率にも優れ、バッテリー持続時間への悪影響が少ない点でも優位性が示されている。通信速度と省電力性を両立させた設計思想が、Appleによる自社モデム戦略の本格化を後押しする可能性がある。

iPhone下位モデルが上位機種を超えた構図の意味

iPhone 16eはシリーズ内で最も価格を抑えたモデルであるが、搭載されているC1モデムの性能が、上位機種であるiPhone 16のQualcomm製モデムを上回る結果となった点は極めて異例である。従来、下位モデルにおける通信性能はコスト削減の影響を受けると考えられていたが、今回の測定結果はその常識を覆す内容である。

特に日常的な通信環境においては、中央値や最低速度帯の数値が実使用感に直結することから、iPhone 16eの実力がユーザー体験に大きな影響を与えると考えられる。この構図が意味するのは、Appleが自社製モデムを用いた新たな製品設計の可能性を模索していることであり、高価格帯=高性能という単純な図式に再考を迫るものである。

また、mmWave対応の欠如という弱点が次世代モデルで解消された場合、C1モデムの全方位的な優位性が確立される余地がある。Appleの今後のモデム戦略は、単なる性能競争ではなく、エコシステム全体の最適化という観点から再評価される局面に入ったといえる。

Source:TechRadar