インド政府の生産連動型奨励策(PLI)を背景に、「Made in India」スマートフォン市場が2024年に6%成長する中、サムスンがシェア20%でトップを維持した。前年から7%の成長を遂げ、輸出量も13%増加したことで、現地生産体制の強化が市場での優位性に直結した形となっている。
一方、Oppoは契約製造の課題や競争激化により、シェアを19%から12%に大幅に落とし後退が顕著。対照的に、Tata ElectronicsはiPhoneの製造を通じて急成長し、半導体分野への展開も進行中である。
現地製造の拡大が加速する中で、サムスンのノイダ工場ではGalaxy S25を含む複数シリーズの組立が行われており、供給網の再編と価格帯の多様化が鍵となっている。
サムスンがノイダ製Galaxyで築いた信頼と供給の強み

サムスンは、インド・ノイダ工場で製造されたGalaxy S25シリーズをはじめとする多数の機種を現地向けに展開しており、プレミアムからミッドレンジまで幅広い価格帯に対応する体制を整えている。2024年にはインド国内のスマートフォン製造で20%のシェアを握り、前年比7%の成長を記録。Galaxy A、F、Mシリーズもインドでの生産を拡大し、安定した供給網が築かれている点が特徴だ。
この成長を支える一因となったのが、2020年代初頭から始まったインド政府の生産連動型奨励策(PLI)である。低コストの労働力と現地製造への優遇政策により、製造コストの最適化と納期短縮の両立が可能になった。結果として、特にミドルレンジモデルにおいて価格と性能のバランスが取れた端末が、現地ユーザーの支持を集めやすくなっている。
また、ノイダ工場で製造されたスマートフォンが輸出面でも前年比13%の成長を見せたことで、インド発のサムスン製品に対する信頼が他国でも広がりを見せている。今後も現地製造がグローバル展開の軸の一つとなる可能性は高く、サムスンの供給体制は今後さらに注目を集めることが予想される。
Oppoが直面した急失速の背景に見える競争環境の変化
2023年に「Made in India」スマートフォン市場で19%のシェアを持っていたOppoは、2024年には12%まで大幅に後退した。この急激なシェア低下の背景には、競合の台頭と契約製造における課題があるとされる。特に、同価格帯の中でより魅力的な選択肢が増えたことにより、製品の差別化が難しくなったことは大きな要因である。
さらに、現地での組立体制やパートナー選定においても不安定な部分があったとされ、市場に対して一貫性のある供給が行えなかったことがブランドの信頼低下を招いた可能性がある。FoxconnやDBGなど他社が安定した製造能力を確保している中、Oppoはその波に乗りきれなかった格好だ。
競合他社が製造基盤と価格戦略を巧みに使い分けて市場浸透を進める一方で、Oppoは一時的に優位に立っていたポジションを失ったことになる。インド市場は単なる価格競争ではなく、製品供給の安定性やブランド認知の継続的な維持が重要であり、それを見誤ると市場からの退場を余儀なくされる厳しさが際立っている。
iPhoneを支えるTata Electronicsの台頭と製造分野での急拡大
インド企業Tata Electronicsは、iPhone 15およびiPhone 16の組立を通じて注目度を急上昇させている。Foxconnに続くiPhoneの現地製造パートナーとしての地位を確立し、インド製スマートフォン市場における存在感を一気に高めた。特に、Appleとサムスンで輸出全体の94%を占めるというデータが示す通り、Tataの成長は単なる国内生産にとどまらない影響を持つ。
同社はスマートフォンの組立だけでなく、グジャラート州で半導体製造事業にも着手しており、インドのエレクトロニクス産業全体を支える存在へと変貌しつつある。この動きにより、インドは今後ハードウェア製造拠点としての地位をさらに強化していく可能性があるとみられる。
ただし、Tata Electronicsの成長はAppleの安定供給に依存している面もあるため、長期的には自社ブランドや他のOEMとの提携拡大が成否を分けるカギとなる。半導体製造への参入も技術・品質面でのハードルが高く、継続的な投資と人材育成が不可欠である。とはいえ、現時点での成長速度と影響力の広がりは他の製造企業とは一線を画している。
Source:SamMobile