米DocuSign(DOCU)は、電子署名とAI駆動の契約管理プラットフォームを展開し、不況懸念が高まる中でも安定した業績と市場評価を維持している。2025年度第4四半期決算では、売上高とEPSが市場予想を上回り、株価は決算発表翌日に14%超上昇。同社の主力製品「eSignature」に加え、14言語対応のIAMプラットフォームやAI契約レビュー機能によって国際展開も加速している。
過去1年間でDOCU株は45%上昇しながらも、調整後利益倍率や売上倍率は過去平均を大幅に下回っており、長期的な成長余地を見込む投資家にとって割安感が意識されている。CitigroupやWilliam Blairをはじめとする複数のアナリストは、同社を「買い」もしくは「アウトパフォーム」と評価しており、今後の成長を見据えた注目銘柄とされている。
AI契約テクノロジーが支えるDocuSignの成長基盤

DocuSignは、電子署名分野のパイオニアであるだけでなく、近年はAIを活用した契約管理プラットフォーム「IAM(インテリジェント契約管理)」の拡張に注力している。主力の「eSignature」は、安全性と効率性の両立により企業の業務プロセスを大幅に簡素化し、グローバル市場での支持を獲得してきた。2025年度第4四半期の売上高は前年比9%増の7億7630万ドルに達し、コンセンサス予想を上回った点は、製品の市場浸透力と契約テクノロジーへの信頼性を裏づけている。
DocuSignは、AIによる契約文書のレビュー機能を含む開発者向けサービス「DocuSign for Developers」なども展開し、技術プラットフォームとしての完成度を高めている。14言語への対応によって国際収益は28%増加し、API連携を通じた柔軟な導入環境は企業間での採用を促進した。こうした多面的な事業展開は、電子署名に留まらず契約管理全体をカバーする事業体制への移行を示している。AI活用を軸に据えたサービス強化が、今後の業績安定と市場での競争優位を左右する核となっている。
割安水準に注目集まるDOCU株とアナリストの評価動向
過去52週でDOCU株は45%上昇し、S&P500指数の9.6%増を大きく凌駕した。第4四半期決算発表翌日には株価が14%超の急伸を記録し、投資家心理の好転を印象付けた。しかしながら、調整後予想利益倍率は23.82倍、売上倍率は5.73倍と、過去5年間の平均である106.86倍および13.76倍を大きく下回っており、依然として割安感が意識される水準にある。これにより、長期投資を志向する市場参加者にとっては依然として参入余地が残されていると考えられる。
アナリスト評価もおおむね好意的である。William Blairは成長加速を理由に「アウトパフォーム」に格上げし、Citigroupは目標株価を113ドルから115ドルへ引き上げたうえで「買い」を維持している。平均目標株価は現在水準から11.5%の上昇余地があるとされ、JMP Securitiesは最大124ドルまでの上昇を見込む。契約管理市場における技術革新の進展と顧客基盤の拡大を背景に、短期的な調整を経た中長期での上昇期待は高まりつつある。ただし、評価が分かれる点も残っており、今後の市場環境次第で再評価の可能性も否定できない。
Source: Barchart.com