Nvidiaのジェンスン・フアンCEOは、米国政府による中国製電子機器への関税引き上げについて、「短期的には大きな影響はない」との認識を示した。CNBCのインタビューにおいて、同氏は米国内での大規模な製造体制構築に意欲を表明し、TSMCやFoxconnとの協業を通じた自社の対応力を強調した。

関税率が25%に達する可能性が指摘される中、GPU市場では在庫不足と価格高騰が続いているが、同氏はAI需要の拡大を背景に、Nvidiaの成長には揺るぎがないとの姿勢を見せた。特にデータセンター向け製品の堅調な展開が影響緩和につながるとの見方もある。

ただし、コンシューマー向けGPU市場においてはMSRPを大幅に上回る価格が常態化しており、関税の実質的な影響は依然として不透明な状況である。

米中関係下での関税政策とGPU価格への限定的影響

NvidiaのCEOジェンスン・フアン氏は、米政府が中国からの電子製品に課す関税について、「短期的には大きな影響を及ぼさない」と発言した。これは、今年2月に発動された10%の関税引き上げ、さらにその後の20%への増税措置がグラフィックカード市場に直接作用する中での見解である。同氏は、今後25%まで関税が引き上げられた場合でも、同社の成長には直結しないとの立場を示した。

その根拠として、フアン氏はTSMCやFoxconn、Wistronといったパートナー企業との連携に基づく米国内製造体制の強化を挙げる。実際に、AI向けのGPUを含む高性能チップの製造をアメリカ国内に移行する動きは、関税回避の戦略的手段として注目されている。また、Nvidiaの主力事業がコンシューマーではなくデータセンターやAI用途にシフトしている点も、短期的な価格変動への耐性を支えている。

ただし、Nvidiaの主張とは別に、GPU市場全体の混乱は依然として続いており、在庫不足や転売価格の高騰が顕著である。特にRTX 50シリーズやAMDのRX 9000シリーズといった新製品は、メーカー希望価格を大幅に上回る水準で流通しており、消費者の価格負担は高止まりしている。

関税が直接的な価格引き上げ要因とならない場合でも、市場の構造的問題が価格抑制を妨げている構図は変わっていない。

米国内製造体制の強化がもたらす供給網の再編と今後の課題

フアン氏の発言は、単なる楽観論ではなく、米国主導の半導体サプライチェーン再構築を背景とした中長期戦略に根ざしている。同氏は「我々は米国での製造に対して誰にも負けない熱意を持っている」と語り、TSMCとの連携により米国内でのGPU製造体制を確立しつつあることを強調した。これは、外的要因による価格変動リスクを抑え、安定供給を目指す布石といえる。

こうした動きは、NvidiaがAIチップ市場で主導権を握りつつある現状において極めて重要な意味を持つ。Grokのような大規模AIモデルのトレーニング需要に対応する同社のGPU群は、今やクラウド基盤や研究機関に不可欠な存在となっており、従来のゲーミング市場から大きく軸足を移している。

米国内における製造基盤の整備は、こうしたハイエンド需要への対応能力を高める一方、地政学的リスクへの備えとしても機能する。

ただし、現段階での米国内製造の比率は限定的であり、本格稼働には時間を要するとの見方もある。加えて、部品調達や組立工程でのコスト上昇が価格に跳ね返る可能性も否定できず、サプライチェーン再編の恩恵が短期間で消費者に届くかは不透明である。国内製造が関税の影響を緩和するとしても、根本的な価格安定化には市場構造の是正が不可欠である。

Source:PC Guide