Appleが米国特許商標庁に提出した「拡張可能なディスプレイを備えたウェアラブル電子機器」に関する出願が注目を集めている。特許図面には、ヒンジ構造やスライド式パネルを採用した、画面を自由に拡張・折りたたみ可能なApple Watchの構想が描かれている。
最大1.92インチの現行モデルを超える画面サイズに加え、デュアルカメラや各種センサーの搭載も検討されており、腕上での通話や撮影といった従来にない体験の可能性も示唆された。
可変ディスプレイとカメラ搭載が示すApple Watchの新たな方向性

Appleが提出した特許には、折りたたみや拡張が可能な構造に加え、ディスプレイ部分にセンサーやライト、さらにはデュアルカメラを組み込む設計が含まれている。これにより、従来のスマートウォッチとは一線を画す多機能性が実現される可能性がある。現行のApple Watch Ultra 2の1.92インチを超える大型ディスプレイによって、通話やFaceTime、ウェブ閲覧など、これまでスマートフォンに頼っていた操作を腕元で完結させる未来も見えてくる。
また、カメラ機能が実装されれば、腕時計からの写真撮影やビデオチャットも現実味を帯びる。LiDARスキャナーや心拍センサーなど、高密度な技術を小型デバイスに収めてきたAppleの実績からすれば、これらの構想も技術的に突飛とは言い切れない。ただし、あくまでも現段階では特許出願であり、製品化が保証されているわけではない点には注意が必要である。
一方で、ウェアラブルの携帯性を犠牲にせず機能を増やす方向性は、スマートウォッチに「第二の進化」をもたらす可能性を秘めている。画面の小ささに不満を感じていた層にとっては、視認性の向上や操作の幅が広がることに大きな魅力を感じるはずだ。
折りたたみ構造がスマートウォッチに適している理由
スマートフォンの折りたたみモデルは既にSamsungやHuaweiなどが手がけているが、画面の折り目や重量、価格といった課題が完全に解消されたとは言いがたい。一方、Appleが特許出願した折りたたみ式Apple Watchは、デバイスの小型性や装着時間の短さを活かし、そうした懸念を軽減できる可能性がある。加えて、ヒンジやスライドといった可動部の設計も、スマホほどの頻繁な開閉を想定しないスマートウォッチでは、より実用的に機能しうる。
Appleはこれまで、他社よりも遅れて市場に参入しながらも、完成度の高いプロダクトで独自の立ち位置を築いてきた。今回の特許に関しても、折りたたみスマホという競争の激しい領域ではなく、比較的成熟していないスマートウォッチの分野に照準を合わせる戦略が垣間見える。これにより、実験的な新構造を導入しやすくなる上、iPhoneとの役割分担も明確になるだろう。
とはいえ、特許の存在が製品化の確実性を示すものではなく、2016年にも類似した出願があったことを踏まえれば、Appleが長年かけて構想を温めている段階とも取れる。だが、2024年第4四半期にウェアラブル部門の売上が83億ドルに達するなど、タイミングとしては充分に熟していると言えそうだ。
Source:AppleMagazine