テスラの株価が2024年12月のピークから55%以上下落し、市場では割高感と業績不安が交錯する中、テクニカル指標のRSIが32を記録し「極めて売られ過ぎ」との見方が浮上している。
営業利益が前年同期比23%減、車両納車数も年間で初の減少となるなど、業績面での逆風が続く一方、自動運転やロボティクス分野への注力、エネルギー貯蔵事業の拡大など、将来成長への布石も明確だ。
一部のアナリストは、既に悪材料が株価に織り込まれているとし、投資判断の分岐点を迎えたと指摘するが、内部関係者による1億ドル超の株式売却も市場心理に影を落としている。
財務実績に表れた構造的な脆弱性と市場の反応

テスラの2024年第4四半期決算は、売上高が前年同期比わずか2%増の257億1,000万ドルにとどまり、アナリスト予想の272億6,000万ドルを下回る結果となった。自動車部門では、車両価格の引き下げの影響により売上が8%減少し、198億ドルに縮小。営業利益も前年から23%減少し16億ドルに落ち込み、純利益は一時的な税制優遇の反動もあって71%減の23億2,000万ドルという厳しい内容となった。
さらに、2024年は年間納車台数が180万台を割り込み、初めて前年比で減少に転じた。中国メーカーの攻勢や納車遅延の影響が数字に如実に現れており、市場シェアの維持にも陰りが見える。株価は年初来で40%下落しており、こうした業績悪化が投資家のセンチメントに直結していることは明らかである。
とはいえ、株価下落が業績のみに起因するのではなく、イーロン・マスクCEOの政治的発言や、DOGE(政府効率省)への関与といった周辺要因も無視できない。これらは市場の不透明感を助長し、株式価値に対する信頼を揺るがす一因となっている。
RSIが示す異常値と反発への可能性
Evercore ISIのリッチ・ロス氏が指摘するように、テスラの株価はテクニカル分析上「極めて売られ過ぎ」の水準に達している。RSI(相対力指数)が32に低下しており、かつてのピーク時である72から大きく乖離している点は、過度な売り圧力がかかっていることを示す。ロス氏は、時価総額1兆ドル規模の企業が55%もの時価総額減少とRSI32という条件を満たすことは極めて稀であり、この水準はリスクとリターンのバランスが際立って魅力的になる局面であると評価している。
この分析は、すでに多くの悪材料が株価に織り込まれており、短期的な反発の余地があることを意味する。ただし、この反発の可能性が持続的な上昇に結びつくかは不確実であり、事業構造や競争環境における変化を伴わなければ、株価の戻りは限定的となるリスクがある。
したがって、RSIなどのテクニカル指標が一時的な転機を示唆しているとしても、それが中長期的な成長期待の回復を意味するかは見極めが必要であり、数値の異常さだけで判断するのは危うい。
自動運転とロボティクスに見るテスラの次なる賭け
イーロン・マスクCEOが従業員向けの会合で語った通り、テスラは次世代の成長を見据え、自動運転技術とロボティクスに戦略的資源を投入している。2025年6月にはオースティンで監督なしの自動運転車両を走行開始させる計画であり、年末までには米国内の複数地域に展開する構えだ。また、量産体制に入る「サイバーキャブ」と、開発を加速させるヒューマノイドロボット「オプティマス」は、既存の自動車事業の枠を超えた成長ドライバーとなり得る。
さらに、テスラはエネルギー貯蔵事業でも成果を上げており、2024年第4四半期には11.0GWhという過去最高の導入実績を達成している。これにより、EV依存から脱却し、持続可能エネルギー分野の需要を取り込む動きが加速している。
もっとも、こうしたプロジェクトは実用化までの不確実性を抱えており、投資家にとっては将来の期待値と現実のギャップを慎重に見極める局面が続く。成長の芽は確かに存在するが、それが株価に反映されるには時間と成果の証明が求められる。
Source:Barchart