ドナルド・トランプ前大統領が次世代制空権(NGAD)戦闘機の製造にボーイングを選定したと報じられたことで、同社株は上昇し、対するロッキード・マーティン株は6%超下落した。契約総額は200億ドル規模と見られ、F-22に代わる第6世代戦闘機の主契約者が交代する構図である。
一方で、ロッキードは依然として防衛事業に特化したピュアプレイ銘柄であり、民間部門の影響を受けやすいボーイングと比べ、収益性・株価評価ともに優位との指摘がある。2025年には476ドル、さらには546ドルへの株価上昇余地が示されており、依然として有力な防衛関連銘柄としての地位を維持する見通しだ。
投資判断は両社とも「Moderate Buy」とされているが、ロッキード株の平均目標株価は現水準から25%の上昇を示唆しており、評価の差が今後の市場選好に影響を及ぼす可能性が高い。
トランプ発言がもたらした防衛契約の地殻変動と市場反応

ドナルド・トランプ前大統領が次世代戦闘機「NGAD」の製造企業としてボーイングを推す意向を示したことが、米国防衛産業に大きな影響を及ぼしている。これにより、ボーイングがF-22ラプターの後継となる第6世代戦闘機の開発を担う可能性が現実味を帯び、契約総額は200億ドル規模と見込まれる。一方で、これまで制空戦闘機分野で支配的立場にあったロッキード・マーティンは株価を6%以上下げ、市場からの信任に一部陰りが生じた形となった。
ロッキード株の下落は一時的な反応と見る向きもあるが、ボーイングの株価上昇は政策的後押しを背景にしたものといえる。ボーイングは過去数年にわたって納期遅延や品質問題に直面し、財務体質の不安が取り沙汰されてきたにもかかわらず、今回のトランプの発言により投資家の期待が再燃した格好である。ただし、NGADの正式な契約決定は現時点で確定しておらず、実際の受注確保には今後の政権動向と議会の承認も影響を及ぼすと考えられる。
政策による企業選定の影響が株式市場に即座に反映された今回の事例は、地政学リスクの高まる現代において防衛関連銘柄がいかに政権と直結した存在であるかを改めて印象づけた。業績だけでなく、政治的発言が今後の企業評価に与える影響を見逃すことはできない。
ロッキード・マーティンの事業構造と財務基盤が示す安定性
ボーイングと比較した際、ロッキード・マーティンの防衛関連事業における集中度は際立っている。同社は民間航空の依存度が低く、軍用機、ミサイル、防衛システム、宇宙開発といった政府支出主導の分野に事業を特化している点が特徴的である。これにより、景気変動や民間航空需要の不安定性に左右されにくく、より安定的なキャッシュフローが期待される構造を持つ。
株価指標においても、ロッキードのフォワードP/E(予想株価収益率)は約17倍と堅調であり、ボーイングの45倍超という水準と比較して割安感がある。財務面でも堅調で、2023年末には純利益5億2700万ドルを計上し、2024年末時点の受注残高は過去最高の1,760億ドルに達した。これらの数値は、同社の将来的な収益の見通しを裏付ける材料として市場からも評価されている。
さらに、ウェルズ・ファーゴのマシュー・エイカーズ氏は、地政学的緊張の高まりを背景にロッキードの業績が今後も堅調に推移するとし、目標株価を476ドルへ引き上げた。また、ウォール街の平均目標株価は546ドルとされており、現在の水準から25%の上昇余地が見込まれる。仮に今後も防衛予算が拡大基調を維持するならば、こうした予測は現実味を帯びる可能性がある。
ロッキードが持つ財務の健全性、事業の一貫性、そしてマーケットからの期待は、短期的な契約の有無に左右される一過性の評価とは一線を画す。中長期の視点で見る限り、LMT株は依然として防衛産業の中核銘柄としての位置を確保している。
Source:Barchart