ドナルド・トランプ前大統領が「アメリカ経済の解放の日」として4月2日に報復関税を発動する方針を示す中、テスラ株が年初来40%下落し市場の注目を集めている。2024年末に過去最高値を記録した同銘柄は、現在ではS&P500内でワースト2位の成績に転落。

背景には、イーロン・マスク氏の政権内での役割と政治的関与が影響し、販売台数やブランド価値の低下、中国市場での競争激化、サイバートラックの大規模リコールなど複合的な要因がある。テスラは今、関税戦争の象徴的な犠牲者となりつつある。

専門家からは「テスラブランドがブラックスワン化する可能性がある」との警告も上がっており、短期的には投資家にとって警戒すべき局面が続く。


テスラ急落の背景にある複合的リスク要因

テスラの株価は2025年に入り急落し、年初来で40%の下落を記録した。背景には、トランプ前大統領による4月2日の報復関税発動方針がある。この政策は「アメリカ経済の解放の日」として打ち出されたが、市場には不透明感と混乱をもたらしている。とりわけ、グローバル展開を前提とする輸出依存型の企業にとっては直接的な打撃となりうる。テスラはその最たる例であり、選挙後のトランプ相場で一時は高騰したが、いまや逆風の象徴的存在となっている。

また、テスラは販売台数の鈍化に加え、サイバートラックの大規模リコール、中国市場での競争激化など、複数の経営課題を同時に抱える。特に中国ではBYDが急成長し、充電技術と価格競争力の両面でテスラを圧倒しつつある。加えて、無料で自動運転機能を標準装備する中国メーカーの台頭により、有料のFSD(完全自動運転)モデルに対する消費者の支持も揺らいでいる。外的政策リスクと内的経営リスクが交錯するなか、投資家の警戒は強まる一方である。

マスク氏の二重の役割がもたらす市場の揺らぎ

現在、イーロン・マスク氏はテスラのCEOであると同時に、トランプ陣営の政府効率局(DOGE)のトップとしての関与が報じられている。この二重の立場が市場に与える影響は小さくない。政治と企業経営の境界が曖昧になることで、マスク氏の発言や行動がテスラの評価に直接的に波及する構造が生まれている。実際、トランプ政権の経済政策に対してマスク氏が象徴的存在とされることにより、テスラは支持と制裁の両方を受けるという異例の状況にある。

また、政治的な立場がテスラのブランド価値にも影響を与え始めている。かつて熱狂的な支持を示していた顧客層の一部が、抗議活動や車両の下取り増加という形で離反している点は看過できない。専門家の間でも懸念が広がっており、ウェドブッシュのダン・アイブス氏は「今、テスラは危機に直面している」と明言。マスク氏がDOGEとテスラ双方の責任を適切に区別できなければ、中長期的にブランドのブラックスワン化も避けられないとの見方が出ている。政治と経営の交錯が、かつての成長企業に新たなリスク構造をもたらしている。

Source:Barchart.com